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聖母への勧誘
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二人が待ち合わせのカフェに着いたとき、すでにケヴィンは待っていた。
にこやかに手を振って出迎える。
「ティナさん、お久しぶりです。旅からお帰りになったのですね?具合はどうですか?」
「ケヴィンさん。いつも無理なお願いばかりして・・・体の具合は問題ありません」
「それは良かった。ところでこちらの素敵な男性は紹介していただけるのですか?」
「もちろんです。こちらはアルです。お仕事は・・・聖職者です」
「神官様ですか。それはそれは・・・私はケヴィン・アバンセと申します。こちらは私の会社で薬事部門の責任者をしているリーベント・リンクスです」
「ティナからお話は聞いています。アルフレッド・バチカーナです。よろしく」
四人は互いに握手を交わした。
「早速ですがティナさん。今度は漢方薬ですか?」
「ええ、無医村で医療の知識も器具も無いような場所で役立つ資料がほしいのです」
ティナと神は熱心に必要な資料を説明した。
黙って聞いているリーベントの横でケヴィンはせっせとお茶やケーキの注文に気を配っていた。
「了解しました。要するに現代医学に関わる全てを排除した・・・いわゆる中世の頃の材料だけで何とかしたいということですね?」
「そうです。それと予防医学的な知識も・・・」
「はい。それはもちろんご用意できます。それにしてもずいぶん未開の地に行かれる予定なのですね」
リーベントが不思議そうにティナを見た。
「ええ、この際ですから地の果てまで経験しようと思って。ほほほほ」
ティナはうっすらと目を開けてこちらを見る神の視線を無視した。
「アルフレッドさんも同行されるのですか?」
神は慌てて答えた。
「あっ・・・そうですね。行くにはいきますが別行動かもしれません」
「別行動?」
ティナが助け舟を出した。
「彼は・・・ええっと・・・そうだ!布教活動?に忙しくて」
「そうですか」
「・・・・・・」
暫しの沈黙の後、ケヴィンが言った。
「いつまでに必要ですか?」
「できれば一週間うちには」
ケヴィンがリーベントの顔を見る。
リーベントはしっかりと頷いて言った。
「では5日後の3時にここで」
「助かります。本当にいつもありがとうございます」
「いいえ、私はティナさんのためならなんでもすると神に誓っているのです。それに楽しいですよ?ティナさんは素敵な方ですから」
「ありがとうございます。でも・・・神に誓ってもあまり良いこと無いかもしれないですよ?」
黙って会話を聞いていたアルが紅茶を噴き出した。
ティナが慌てて紅茶で汚れたシャツを拭いてやっている。
その様子を見ていたケヴィンが独り言のように言った。
「なんだかお似合いですね。ティナさんもアルフレッドさんも幸せそうだ」
ティナには聞こえていなかったが、神はケヴィンの方を向いてウィンクをした。
カフェを出た四人はもう一度握手をして別れた。
神がティナの手を取りながら話しかけた。
「このまま行くか?」
「そうね・・・着替えとかどうするの?この際だから買っちゃおうか」
「着替えか。俺には無い概念だな。面白そうだから着替えてみるか」
「そうかぁ。アルはイメージするだけでどんな姿にもなれるんだもんね。便利よね」
「お前も聖母になればできるようになるぞ」
「そうなの?」
「ああ、だから前向きに検討してくれよ」
「うぅぅぅぅ・・・前向きにね・・・」
俯いたティナに慌てた神が気を取り直すように言った。
「どこで買い物ってやつをするんだ?」
「デパートに行こう!久しぶりに買い物しまくるの!楽しそう」
「楽しみだな」
明るく笑ったティナを見て神は嬉しそうに微笑み返した。
にこやかに手を振って出迎える。
「ティナさん、お久しぶりです。旅からお帰りになったのですね?具合はどうですか?」
「ケヴィンさん。いつも無理なお願いばかりして・・・体の具合は問題ありません」
「それは良かった。ところでこちらの素敵な男性は紹介していただけるのですか?」
「もちろんです。こちらはアルです。お仕事は・・・聖職者です」
「神官様ですか。それはそれは・・・私はケヴィン・アバンセと申します。こちらは私の会社で薬事部門の責任者をしているリーベント・リンクスです」
「ティナからお話は聞いています。アルフレッド・バチカーナです。よろしく」
四人は互いに握手を交わした。
「早速ですがティナさん。今度は漢方薬ですか?」
「ええ、無医村で医療の知識も器具も無いような場所で役立つ資料がほしいのです」
ティナと神は熱心に必要な資料を説明した。
黙って聞いているリーベントの横でケヴィンはせっせとお茶やケーキの注文に気を配っていた。
「了解しました。要するに現代医学に関わる全てを排除した・・・いわゆる中世の頃の材料だけで何とかしたいということですね?」
「そうです。それと予防医学的な知識も・・・」
「はい。それはもちろんご用意できます。それにしてもずいぶん未開の地に行かれる予定なのですね」
リーベントが不思議そうにティナを見た。
「ええ、この際ですから地の果てまで経験しようと思って。ほほほほ」
ティナはうっすらと目を開けてこちらを見る神の視線を無視した。
「アルフレッドさんも同行されるのですか?」
神は慌てて答えた。
「あっ・・・そうですね。行くにはいきますが別行動かもしれません」
「別行動?」
ティナが助け舟を出した。
「彼は・・・ええっと・・・そうだ!布教活動?に忙しくて」
「そうですか」
「・・・・・・」
暫しの沈黙の後、ケヴィンが言った。
「いつまでに必要ですか?」
「できれば一週間うちには」
ケヴィンがリーベントの顔を見る。
リーベントはしっかりと頷いて言った。
「では5日後の3時にここで」
「助かります。本当にいつもありがとうございます」
「いいえ、私はティナさんのためならなんでもすると神に誓っているのです。それに楽しいですよ?ティナさんは素敵な方ですから」
「ありがとうございます。でも・・・神に誓ってもあまり良いこと無いかもしれないですよ?」
黙って会話を聞いていたアルが紅茶を噴き出した。
ティナが慌てて紅茶で汚れたシャツを拭いてやっている。
その様子を見ていたケヴィンが独り言のように言った。
「なんだかお似合いですね。ティナさんもアルフレッドさんも幸せそうだ」
ティナには聞こえていなかったが、神はケヴィンの方を向いてウィンクをした。
カフェを出た四人はもう一度握手をして別れた。
神がティナの手を取りながら話しかけた。
「このまま行くか?」
「そうね・・・着替えとかどうするの?この際だから買っちゃおうか」
「着替えか。俺には無い概念だな。面白そうだから着替えてみるか」
「そうかぁ。アルはイメージするだけでどんな姿にもなれるんだもんね。便利よね」
「お前も聖母になればできるようになるぞ」
「そうなの?」
「ああ、だから前向きに検討してくれよ」
「うぅぅぅぅ・・・前向きにね・・・」
俯いたティナに慌てた神が気を取り直すように言った。
「どこで買い物ってやつをするんだ?」
「デパートに行こう!久しぶりに買い物しまくるの!楽しそう」
「楽しみだな」
明るく笑ったティナを見て神は嬉しそうに微笑み返した。
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