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まさに神業
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深い眠りの中でティナは眩しいほどの光を感じた。
(夢?わたし夢を見てるの?)
『ティナ・・・起きろ。まあ、なんだ。ご苦労だったな。おかげで番も見つかったし』
ティナはゆっくりと目を開けた。
『あれ?私って眠ったのじゃなく?ここは?』
『時空の門だ。出産後の疲れを癒す意味も含めてあっちに少しの間戻るのもいいかと思ってな』
『ああ、そういうこと・・・でも赤ちゃんを置いては行けないわ』
『お?母性が目覚めたか?でもそこは任せておけ。俺が面倒を見てやるから』
『あれ?あんたこそ父性に目覚めたんじゃないの?』
『う・・・否定はしない。だってめちゃかわいいんだもん。俺の子』
『俺の子って・・・』
『みんなそう思ってるぞ?もうそれでいいじゃん』
『良くないわよ!私に聖母になれっての?冗談じゃないわ』
『聖母ティナ・・・ぷっ!すまん・・・笑いが・・・ぷはははは』
『笑いすぎ!でもまあパパが面倒見てくれるのなら少し帰ってこようかな。体も心配だし』
『ああ、そうしろよ。あっちの時間で一週間くらいなら問題ないし、それにあっちの体は産後じゃないから楽だろう』
『ああ・・・そうね。そうさせてもらうわ』
ティナは立ち上がりゆっくりと門に向かって歩いた。
『それと聖母になる件なんだけどさぁ、ちょっと真面目に・・・って、おい!待てよ!』
ティナは神の声を完全に無視しながら門の向こうに消えた。
ゆっくりと目を開けたティナは見慣れない景色に少し戸惑った。
出来上がった翌日にはあちらの世界に行ったのだから当然とも言える。
ベッドに横になったまま暫しの間きょろきょろと目だけで周りを確認した。
「なかなか居心地のいい部屋だわ」
ぴっちりと締め切ったカーテンからは光さえも差し込まず、今が夜なのか昼なのかさえ判らない。
「いたたたたた・・・さすがに関節が凝り固まってるわ」
ゆっくりと体を起こしベッドから降りたティナは軽く屈伸運動をした。
「ほったらかしにしては状態が素晴らしいわね。もしかしたら歳もとらないとか?」
一人で冗談を言いふっと笑ったティナの前に神が姿を現した。
『おう!お早いお帰りで』
『あら、大魔神じゃないの。赤ちゃんは?』
『俺の子供は人気者でさぁ~シスターたちが取り合うようにして抱っこしてるよ。まあ俺は抱っこはできないし、怪我をしないように見てるだけだから』
『どうせあんたのことだからずっと近くに張り付いてたんでしょう?それでちょっと飽きたとか』
『飽きてはいない!飽きるはずがない!めちゃめちゃかわいいぞ~。まさに天使にごとく美しいしな』
『天使ってやっぱり美しいの?』
『ああ、見た目だけで言うなら最高傑作揃いだな。性格はまあなかなかエグイ奴が多いけど』
『え~天使って性悪なの?・・・まあ大魔神の下じゃあそうなるわな』
『・・・・・・そういう意味じゃお前も天使のような奴だ』
『あらうれしい!で?どうしたのよ。さっき会ったばかりじゃない』
『お前が俺の話を聞かずにずんずん行くから・・・』
『そうだった?気がつかなかったわ』
『まあ言いかけた話はまた今度でいいよ。時間はたっぷりあるしな。それよりお前さあ、今回は何を準備するつもりなんだ?』
『ああ持ち出し品のことね?考えたんだけど薬学の本にしようかと思ってる。特に漢方薬』
『なるほど・・・いいな、それ。うん!いいプランだ』
『でしょ?だからこれからお出かけしようと思うんだけど、一緒に行かない?』
『いいのか?ふふふ・・・初デートだな』
『・・・まあいいわ・・・ジャンクフードをたらふく食べて、体に悪いこといっぱいしようっと!体に悪いことって心の栄養になるのよね~』
『ははは~なるほどな!では行こうか』
そういうと神はハーベストそっくりの顔と体で現身となった。
『おぉぉ~まさに神業!それにしてもハーベストはGパン姿もサマになってるわ~うん。かっこいい!超好み!』
『喜んでいただけたなら何よりだ』
二人は腕を組んで家を出た。
遠くから子供たちに囲まれた神官と老母が二人を見つけて手を振った。
二人も手を振り返す。
明るい午後の日差しに包まれた幸せそうなカップルは、真っ赤な車に乗り込んだ。
『ねえ、張り切って運転席に座ってるけど?運転できるの?』
『そうだなぁ。神のみぞ知るってとこか?』
『座布団一枚!』
『なんだそれ?じゃあ行くぞ!』
神はハンドルを握った。
しかしエンジンも掛けなければアクセルも踏まない。
でも車はスムーズに動き出した。
『オーマイガッ!』
『どうだ、惚れなおしたか?』
ティナは上機嫌な神の横顔を半笑いでにらんだ。
神は少し伸びた黄金色の髪をなびかせティナを横目で見ていた。
『さあお姫様、まずはどこに向かいましょうか?』
『お腹空いた!ハンバーガーショップに直行よ!』
『仰せのままに』
車は勢いよく加速して田舎道を駆け抜けた。
(夢?わたし夢を見てるの?)
『ティナ・・・起きろ。まあ、なんだ。ご苦労だったな。おかげで番も見つかったし』
ティナはゆっくりと目を開けた。
『あれ?私って眠ったのじゃなく?ここは?』
『時空の門だ。出産後の疲れを癒す意味も含めてあっちに少しの間戻るのもいいかと思ってな』
『ああ、そういうこと・・・でも赤ちゃんを置いては行けないわ』
『お?母性が目覚めたか?でもそこは任せておけ。俺が面倒を見てやるから』
『あれ?あんたこそ父性に目覚めたんじゃないの?』
『う・・・否定はしない。だってめちゃかわいいんだもん。俺の子』
『俺の子って・・・』
『みんなそう思ってるぞ?もうそれでいいじゃん』
『良くないわよ!私に聖母になれっての?冗談じゃないわ』
『聖母ティナ・・・ぷっ!すまん・・・笑いが・・・ぷはははは』
『笑いすぎ!でもまあパパが面倒見てくれるのなら少し帰ってこようかな。体も心配だし』
『ああ、そうしろよ。あっちの時間で一週間くらいなら問題ないし、それにあっちの体は産後じゃないから楽だろう』
『ああ・・・そうね。そうさせてもらうわ』
ティナは立ち上がりゆっくりと門に向かって歩いた。
『それと聖母になる件なんだけどさぁ、ちょっと真面目に・・・って、おい!待てよ!』
ティナは神の声を完全に無視しながら門の向こうに消えた。
ゆっくりと目を開けたティナは見慣れない景色に少し戸惑った。
出来上がった翌日にはあちらの世界に行ったのだから当然とも言える。
ベッドに横になったまま暫しの間きょろきょろと目だけで周りを確認した。
「なかなか居心地のいい部屋だわ」
ぴっちりと締め切ったカーテンからは光さえも差し込まず、今が夜なのか昼なのかさえ判らない。
「いたたたたた・・・さすがに関節が凝り固まってるわ」
ゆっくりと体を起こしベッドから降りたティナは軽く屈伸運動をした。
「ほったらかしにしては状態が素晴らしいわね。もしかしたら歳もとらないとか?」
一人で冗談を言いふっと笑ったティナの前に神が姿を現した。
『おう!お早いお帰りで』
『あら、大魔神じゃないの。赤ちゃんは?』
『俺の子供は人気者でさぁ~シスターたちが取り合うようにして抱っこしてるよ。まあ俺は抱っこはできないし、怪我をしないように見てるだけだから』
『どうせあんたのことだからずっと近くに張り付いてたんでしょう?それでちょっと飽きたとか』
『飽きてはいない!飽きるはずがない!めちゃめちゃかわいいぞ~。まさに天使にごとく美しいしな』
『天使ってやっぱり美しいの?』
『ああ、見た目だけで言うなら最高傑作揃いだな。性格はまあなかなかエグイ奴が多いけど』
『え~天使って性悪なの?・・・まあ大魔神の下じゃあそうなるわな』
『・・・・・・そういう意味じゃお前も天使のような奴だ』
『あらうれしい!で?どうしたのよ。さっき会ったばかりじゃない』
『お前が俺の話を聞かずにずんずん行くから・・・』
『そうだった?気がつかなかったわ』
『まあ言いかけた話はまた今度でいいよ。時間はたっぷりあるしな。それよりお前さあ、今回は何を準備するつもりなんだ?』
『ああ持ち出し品のことね?考えたんだけど薬学の本にしようかと思ってる。特に漢方薬』
『なるほど・・・いいな、それ。うん!いいプランだ』
『でしょ?だからこれからお出かけしようと思うんだけど、一緒に行かない?』
『いいのか?ふふふ・・・初デートだな』
『・・・まあいいわ・・・ジャンクフードをたらふく食べて、体に悪いこといっぱいしようっと!体に悪いことって心の栄養になるのよね~』
『ははは~なるほどな!では行こうか』
そういうと神はハーベストそっくりの顔と体で現身となった。
『おぉぉ~まさに神業!それにしてもハーベストはGパン姿もサマになってるわ~うん。かっこいい!超好み!』
『喜んでいただけたなら何よりだ』
二人は腕を組んで家を出た。
遠くから子供たちに囲まれた神官と老母が二人を見つけて手を振った。
二人も手を振り返す。
明るい午後の日差しに包まれた幸せそうなカップルは、真っ赤な車に乗り込んだ。
『ねえ、張り切って運転席に座ってるけど?運転できるの?』
『そうだなぁ。神のみぞ知るってとこか?』
『座布団一枚!』
『なんだそれ?じゃあ行くぞ!』
神はハンドルを握った。
しかしエンジンも掛けなければアクセルも踏まない。
でも車はスムーズに動き出した。
『オーマイガッ!』
『どうだ、惚れなおしたか?』
ティナは上機嫌な神の横顔を半笑いでにらんだ。
神は少し伸びた黄金色の髪をなびかせティナを横目で見ていた。
『さあお姫様、まずはどこに向かいましょうか?』
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