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効果テキメン!

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オルフェウス大神官の推挙も然ることながら、娘にあまあまな父親だったことが決め手となった。
ティナは心の中で満塁ホームランを打った打者のように両手を挙げて駆け回った。

『第一関門突破というところかしら!さすがワタシ!』

『いや・・・お前は何もしてないだろう・・・っていうかここからが出番だぞ?』

『侯爵邸に行ったほうがいいかしら・・・それとも来てもらう?』

『当面は教会に来させたほうが都合がいいな。啓示を与えやすい』

『御意!』

満面の笑みをたたえながらティナはハロッズ侯爵に向かって話しかけた。

「ハロッズ侯爵様・・・お嬢様のレッスン場所はどのようにお考えでしょうか?」

「できればティナさんに我が屋敷にご足労いただきたいのだがどうだろうか。屋敷にも音楽室がありピアノもあるから問題なかろうと思うのだが」

「なるほど・・・あ・・・すみません・・・少しお待ちを・・・はい・・・はい・・・しかし保護者の許可が・・・はい・・・はい・・・」

挙動不審なティナを見てハロッズ侯爵が眉間に皺を寄せた。
するとティナに呼応する様にオルフェウスまでもが同じ行動を見せ始める。

「おお・・・かしこまりました・・・はい・・・はい・・・」

跪き祭壇に祈りをささげつつ見えない何かと会話をする二人を見る侯爵は一歩後ずさった。
ティナの方は神の声が聞こえる演技だったが、それを見ていた神がオルフェウスに声を聞かせたのだった。
もちろんオルフェウスに聞こえる神の声はティナにも聞こえている。

『ナイスフォロー!』

『あざとい手を使いやがって・・・まあ大神官の言葉なら従うだろうしな』

より一層深く屈みこんで祈りを捧げたオルフェウスはティナの顔を見た。
ティナも見つめ返し、二人は小さく頷いた。

「ティナ・・・聞こえたか?」

「はい。鮮明に聞こえました」

「うん。やはりそうか・・・フェルナンドは?」

少し離れた場所で跪き祈っていたフェルナンド神官が涙を流しながら返事をした。

「聞こえました・・・大神官様・・・私にも聞こえました!」

その返事に頷いたオルフェウス大神官は立ち上がり、ハロッズ侯爵に向かって言い放った。

「神よりのお言葉です。ナサーリアお嬢様を教会に通わせてピアノの修練をさせなさい」

ハロッズ侯爵は驚いて言い返す。

「な・・・なんと言われましたか?神の?神の声ですと?・・・まさか・・・」

オルフェウスの後ろにティナとフェルナンドが並んだ。

「私にも聞こえました。神がお望みです」

「はい。私にも同じように聞こえました。神はナサーリアお嬢様に特別な力をお与えのようです」

心の中でものすごく悪い顔をしながら、ティナが厳かに同意した。

「なんと!神がナサーリアに・・・大神官様、ということはナサーリアは聖女に?」

オルフェウスは慎重に答えた。

「それはまだなんとも言えません。今の段階ではその可能性があるということです。この後はナサーリアお嬢様の努力次第というところでしょうか」

「なるほど・・・こちらの方、ティナロア様でしたか?この方はすでに聖女として神にお仕えなのですね?」

ティナは慌てて否定した。

「いえ、私は聖女として神に仕えているわけではありません。たまたま神の御声が耳に届くことがあり・・・なんというか・・・う~ん・・・便利使いされてるというか・・・」

ハロッズ侯爵は不思議な表情で聞き返す。

「便利使い・・・ですか?」

「ええ、まあそのようなものというか・・・へへへ。難しい立場なのですよ。実は」

ティナは笑ってごまかした。

「それでナサーリアお嬢様が教会に来られることはご許可いただけますか?」

ハロッズ侯爵はにっこりと笑って頷いた。

「神のご意志とあれば否はありません。しかし私も妻もなかなかに忙しく・・・侍従長を同伴させたいのですが問題は?」

「もちろんありません。送迎の安全確保は侯爵様のお気のすむようになさってください。教会内での安全にはできる限りのことをしますが、侯爵家からの護衛騎士も受け入れますので」

「そう言っていただけると安心できます。それではそのように取り計らいます。いつから来させましょうか」

「早いほうが神のご意志に沿うでしょう。ご準備が整い次第でいかがですか?」

「わかりました。追ってご連絡いたします」

教会に通えることになったナサーリアはご機嫌な笑顔で、神官たちに可愛らしいカーテシーを披露して帰っていった。
ハロッズ侯爵も病弱だった娘が嬉しそうにする様子を見て満足そうだった。
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