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ティナ家を探す
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「ティナさん、専門家を連れてきましたよ。きっとご希望の物件がみつかると思います」
リハビリの痛みに顔をゆがめているティナに向かってケヴィンがにこやかに近づいてきた。
「あ・・・うぅぅぅ・・・ケ・・・ケヴィンさん・・・ちょっと・・・あ~~~~痛いです。限界!」
「大丈夫ですか?ティナさん」
「大丈夫に見えますか?」
「いえ・・・とてもお辛そうです。私のせいで・・・申し訳ありません」
理学療法士がやっとティナの足を開放してくれた。
大きく息を吐きティナがマットの上で体を起こした。
「ケヴィンさん。もうそういうの止めましょう。確かにあなたは加害者で私は被害者だけど、そこに故意は存在しなかったのですから。あなたも私も運が悪かった・・・それだけです」
「そう言っていただけると・・・でも私は痛くないのにあなたはずっと痛い目に遭ってるわけで・・・」
「もう止しましょうよ。で?そちらの方は?専門家と仰いましたが」
「わが社の不動産部門の責任者です。イーサン・ブレイドといいます」
ケヴィンの横で中年の男性がにこやかにお辞儀をした。
(あらナイスミドルね・・・ふふふ・・・眼福だわ)
「早々に動いて下さったのですね。いつも本当に素早い対応で、感謝していますケヴィンさん」
「リハビリが一段落したら物件情報をご覧になりませんか?」
「ええ、もちろん。もう今日は終わりですから部屋でお話しを伺っても良いですか?」
ケヴィンは宝物を扱うような丁寧さでティナを車いすに乗せるとゆっくりと押し始めた。
ティナの個室は今日も花がたくさん飾られている。
少し開けた窓からは爽やかな風が吹き込み、薄いブルーのカーテンを優しく揺らしていた。
「それでは拝見しますね」
ソファーに移動させてもらったティナの前にケヴィンとイーサンが並んで座った。
(・・・・・・ババ専・・・)
ティナは笑いをかみ殺しながらまっすぐ前を向いた。
「ティナさん。この度はいろいろと大変でしたね。早速ですがティナさんのご希望を聞かせていただけますか?」
イーサンはテキパキとビジネスライクに話し始めた。
「そうですね・・・一番は安全が確保できる所が良いです。空気がきれいで周りに建物があまりなく、庭が広くて見晴らしが良いのが理想ですね」
「なるほど・・・そうなるとかなり都心から離れることになりますが問題無いですか?」
「ええ、その方が良いですね。でもまあ・・・仕事のことを考えると都心の方が良いのかもしれませんが・・・まだ当分復帰はできないと思うので」
「そうですね。仕事に復帰される時に都心のマンションを検討されても良いですね。ですが今は療養を第一に考えるという事ですね?」
「はい。そう考えています」
「失礼ですがご予算は?」
ケヴィンが慌てて口を挿む。
「イーサン、お金のことは置いといてくれていい」
イーサンがケヴィンの顔を見て数秒黙ったあと小さく頷いた。
「そういう事でしたらお勧めの物件がございますよ。敷地がかなり広く少々お値段的に問題かと思ったのですが」
ティナが慌てて口を開いた。
「いいえ、ケヴィンさん。ケヴィンさんからはきちんと慰謝料をお支払いいただいていますし、私も少し当てがあるのでこれ以上ご負担を掛けるわけにはいきませんから」
ケヴィンが優しい笑顔でティナに言った。
「まあまあティナさん。お金の話は物件が決まってからにしましょう」
ティナは困った顔をして黙った。
イーサンが素早く話を進める。
ティナの希望に沿ったものがいくつか紹介されたが、神の言うヘインズのゼロアの教会のものは無かった。
「あの・・・友人から聞いたのですが、ヘインズに教会が所有する丘に素敵な一軒家があるらしいのですが・・・その情報は無いですか?」
「ヘインズですか。国境沿いですから移民が多いところですね・・・少々お待ちください。すぐに調べます」
そう言うとイーサンは部屋を出て行った。
イーサンを見送り少し冷めたコーヒーをひと口飲んでティナがケヴィンに話しかける。
「ケヴィンさん、ベッドサイドの棚に小さい箱があるのですが取っていただけませんか?」
頷いてケヴィンが立ち上がる。
「これですか?」
「はい、それです」
ケヴィンが小箱をティナに渡した。
お礼を言って受け取ったティナが小箱の中から大きなルビーのついたブローチを取り出した。
「ケヴィンさん。これは私の家系で保存してきた古いものです。これ・・・売れないでしょうか」
ケヴィンがブローチを受け取り鑑定するように光に透かして見た。
「これは・・・素晴らしいルビーですね。これほどの物は今では手に入りませんよ?手放されるのですか?」
「ええ、このほかにもっとあるのですが・・・売れそうですか?」
「かなりの高値が期待できると思いますよ?というか・・・博物館にあってもおかしくないほどの逸品だと思います。本当に手放されるのでしたら明日にでも鑑定士を連れて来ましょう」
「ありがとうございます。ぜひよろしくお願いします」
ケヴィンはうっとりした眼差しでルビーを見ている。
(良かった・・・生活費も確保出来そうだわ)
ティナがほっと胸を撫でおろしたいるとイーサンが戻ってきた。
リハビリの痛みに顔をゆがめているティナに向かってケヴィンがにこやかに近づいてきた。
「あ・・・うぅぅぅ・・・ケ・・・ケヴィンさん・・・ちょっと・・・あ~~~~痛いです。限界!」
「大丈夫ですか?ティナさん」
「大丈夫に見えますか?」
「いえ・・・とてもお辛そうです。私のせいで・・・申し訳ありません」
理学療法士がやっとティナの足を開放してくれた。
大きく息を吐きティナがマットの上で体を起こした。
「ケヴィンさん。もうそういうの止めましょう。確かにあなたは加害者で私は被害者だけど、そこに故意は存在しなかったのですから。あなたも私も運が悪かった・・・それだけです」
「そう言っていただけると・・・でも私は痛くないのにあなたはずっと痛い目に遭ってるわけで・・・」
「もう止しましょうよ。で?そちらの方は?専門家と仰いましたが」
「わが社の不動産部門の責任者です。イーサン・ブレイドといいます」
ケヴィンの横で中年の男性がにこやかにお辞儀をした。
(あらナイスミドルね・・・ふふふ・・・眼福だわ)
「早々に動いて下さったのですね。いつも本当に素早い対応で、感謝していますケヴィンさん」
「リハビリが一段落したら物件情報をご覧になりませんか?」
「ええ、もちろん。もう今日は終わりですから部屋でお話しを伺っても良いですか?」
ケヴィンは宝物を扱うような丁寧さでティナを車いすに乗せるとゆっくりと押し始めた。
ティナの個室は今日も花がたくさん飾られている。
少し開けた窓からは爽やかな風が吹き込み、薄いブルーのカーテンを優しく揺らしていた。
「それでは拝見しますね」
ソファーに移動させてもらったティナの前にケヴィンとイーサンが並んで座った。
(・・・・・・ババ専・・・)
ティナは笑いをかみ殺しながらまっすぐ前を向いた。
「ティナさん。この度はいろいろと大変でしたね。早速ですがティナさんのご希望を聞かせていただけますか?」
イーサンはテキパキとビジネスライクに話し始めた。
「そうですね・・・一番は安全が確保できる所が良いです。空気がきれいで周りに建物があまりなく、庭が広くて見晴らしが良いのが理想ですね」
「なるほど・・・そうなるとかなり都心から離れることになりますが問題無いですか?」
「ええ、その方が良いですね。でもまあ・・・仕事のことを考えると都心の方が良いのかもしれませんが・・・まだ当分復帰はできないと思うので」
「そうですね。仕事に復帰される時に都心のマンションを検討されても良いですね。ですが今は療養を第一に考えるという事ですね?」
「はい。そう考えています」
「失礼ですがご予算は?」
ケヴィンが慌てて口を挿む。
「イーサン、お金のことは置いといてくれていい」
イーサンがケヴィンの顔を見て数秒黙ったあと小さく頷いた。
「そういう事でしたらお勧めの物件がございますよ。敷地がかなり広く少々お値段的に問題かと思ったのですが」
ティナが慌てて口を開いた。
「いいえ、ケヴィンさん。ケヴィンさんからはきちんと慰謝料をお支払いいただいていますし、私も少し当てがあるのでこれ以上ご負担を掛けるわけにはいきませんから」
ケヴィンが優しい笑顔でティナに言った。
「まあまあティナさん。お金の話は物件が決まってからにしましょう」
ティナは困った顔をして黙った。
イーサンが素早く話を進める。
ティナの希望に沿ったものがいくつか紹介されたが、神の言うヘインズのゼロアの教会のものは無かった。
「あの・・・友人から聞いたのですが、ヘインズに教会が所有する丘に素敵な一軒家があるらしいのですが・・・その情報は無いですか?」
「ヘインズですか。国境沿いですから移民が多いところですね・・・少々お待ちください。すぐに調べます」
そう言うとイーサンは部屋を出て行った。
イーサンを見送り少し冷めたコーヒーをひと口飲んでティナがケヴィンに話しかける。
「ケヴィンさん、ベッドサイドの棚に小さい箱があるのですが取っていただけませんか?」
頷いてケヴィンが立ち上がる。
「これですか?」
「はい、それです」
ケヴィンが小箱をティナに渡した。
お礼を言って受け取ったティナが小箱の中から大きなルビーのついたブローチを取り出した。
「ケヴィンさん。これは私の家系で保存してきた古いものです。これ・・・売れないでしょうか」
ケヴィンがブローチを受け取り鑑定するように光に透かして見た。
「これは・・・素晴らしいルビーですね。これほどの物は今では手に入りませんよ?手放されるのですか?」
「ええ、このほかにもっとあるのですが・・・売れそうですか?」
「かなりの高値が期待できると思いますよ?というか・・・博物館にあってもおかしくないほどの逸品だと思います。本当に手放されるのでしたら明日にでも鑑定士を連れて来ましょう」
「ありがとうございます。ぜひよろしくお願いします」
ケヴィンはうっとりした眼差しでルビーを見ている。
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