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久しぶりに帰ってみた
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アランと12時間交代でロージーを看病する日々が続き、流石のティナも少し疲労を覚えていた。
ロージーはまだ意識も戻らず、このところ夜中になると熱が出るのが常態化していた。
夜中の発熱に対応するのはティナなので必然的に負担が増えているという常態が続いていた。
当然アランはティナにだけ負担が掛かることを心苦しく思っていたが、こればかりはどうしようもない。
「ロア殿、母は昨夜も熱が出たのでしょうか」
「そうですね、1時か2時くらいだったと思います。一昨日もその前も同じ時間帯でしたが何が原因なのでしょうね」
「ええ、お医者様にもお話ししたのですが理由はわからないということでした。今のままではロア殿ばかりに苦労をかけることになるので・・・」
胸の前で手を握り苦しそうに詫びるアランを見てティナは言った。
「アラン。私は恩返しができて嬉しいのです。命を賭けて私を守ってくれたロージー様のご苦労はこの程度では無かったはずです。だからアラン、そんな顔をしないでください」
握られたアランの拳を両手で包みティナが言った。
アランも手を握り返す。
ふとアランが言った。
「ロア殿?手が・・・熱すぎませんか?熱があるのでは無いですか?」
アランがすかさずティナの額に手を当てた。
「ロア!大変だ!凄い熱ですよ!お医者様を・・・ロア?ロア・・・」
アランの声を遠くに聞きながらティナは意識を手放した。
『おい!ティナ!ティナ!起きろ!』
『煩いわね・・・って!えっ!どこなのここ!』
『時空の間(はざま)と呼んでいる場所だ。要するにあっちとこっちの渡り廊下?』
『分かりやすそうでわかり難いわね・・・って大魔神!その恰好・・・素敵じゃないのぉぉぉ~』
『お前・・・だんだん節操無くなってないか?』
『そんなことないわよ。リトルハーベストもなかなか良かったけど、今のあんたってまさに神って感じで素敵だわ。今度からこれで現れてちょうだい』
『へいへい・・・それよりお前、うまい事やったな。で、ちょっと説明しといてやろうと思ってここに寄ってもらったんだ』
真っ白というより半透明に見えるほどの薄い衣を纏い、金髪を長く靡かせた長身の美丈夫がティナに向かって微笑んでいる。
『何?注意事項?痛いのは嫌よ』
『痛いというほどではないが、あっちの世界とこっちの世界を行き来するっていのはかなりイレギュラーな行為だからな・・・突入する時少しだけ衝撃を感じると思う』
『衝撃?』
『うん。なんというか・・・大気圏突入的な?』
『まあ多少は頑張るわ。で?あっちに戻っても動けないのよね?私って』
『そう。動けても病院内くらいかな。相変わらず加害者の男が毎日来てるからそいつを動かせば良いだろう』
『動いてくれるの?』
『ああ、大丈夫だ。まあ、そういう事だから、頑張れよ。それとできればあっちの時間で12日が滞在時間マックスだと思った方が良い』
『という事はこっちで4日位ってことね・・・まあ妥当かな・・・』
『じゃあ頑張ってこい!何かあったらすぐ呼べよ?』
『分かった。頼りにしてまっせ~』
神に手を振って前を向いた瞬間、体がかなりの衝撃を受けた。
誰かが手を握っている。
ティナは大きく息を吐いてうっすらと目を開けた。
バタバタと人が動く気配がする。
「ティナさん!ああ・・・良かった・・・今ドクターが来ますから!寝ちゃだめでよす!気をしっかり持って!」
大きな声で自分に呼びかける男の方に目を向けた。
男は涙ぐんでティナの手を強く握っている。
(痛いんですけど・・・手が・・・)
どうもまだ声は出せないらしい。
何かが頬を濡らす感覚があった。
(ん?なんだ?私・・・泣いてるの?)
「ああ・・・ティナさん・・・泣かないで・・・良かった・・・本当に良かった」
手を握っている男も泣いている。
(こいつが加害者か?・・・あら・・・良い男・・・ふふふツイてるわ、私。お金持ちって大魔神も言ってたし。こいつを手駒にして準備を進めればいいのね?なんか・・・チョロそう・・・)
バタバタと押し音が響きドクターが覆いかぶさるようにティナの顔を覗き込んだ。
(あら・・・こっちの良い男・・・)
まだしゃべることもできないのに、ティナの口角が少し上がった。
ロージーはまだ意識も戻らず、このところ夜中になると熱が出るのが常態化していた。
夜中の発熱に対応するのはティナなので必然的に負担が増えているという常態が続いていた。
当然アランはティナにだけ負担が掛かることを心苦しく思っていたが、こればかりはどうしようもない。
「ロア殿、母は昨夜も熱が出たのでしょうか」
「そうですね、1時か2時くらいだったと思います。一昨日もその前も同じ時間帯でしたが何が原因なのでしょうね」
「ええ、お医者様にもお話ししたのですが理由はわからないということでした。今のままではロア殿ばかりに苦労をかけることになるので・・・」
胸の前で手を握り苦しそうに詫びるアランを見てティナは言った。
「アラン。私は恩返しができて嬉しいのです。命を賭けて私を守ってくれたロージー様のご苦労はこの程度では無かったはずです。だからアラン、そんな顔をしないでください」
握られたアランの拳を両手で包みティナが言った。
アランも手を握り返す。
ふとアランが言った。
「ロア殿?手が・・・熱すぎませんか?熱があるのでは無いですか?」
アランがすかさずティナの額に手を当てた。
「ロア!大変だ!凄い熱ですよ!お医者様を・・・ロア?ロア・・・」
アランの声を遠くに聞きながらティナは意識を手放した。
『おい!ティナ!ティナ!起きろ!』
『煩いわね・・・って!えっ!どこなのここ!』
『時空の間(はざま)と呼んでいる場所だ。要するにあっちとこっちの渡り廊下?』
『分かりやすそうでわかり難いわね・・・って大魔神!その恰好・・・素敵じゃないのぉぉぉ~』
『お前・・・だんだん節操無くなってないか?』
『そんなことないわよ。リトルハーベストもなかなか良かったけど、今のあんたってまさに神って感じで素敵だわ。今度からこれで現れてちょうだい』
『へいへい・・・それよりお前、うまい事やったな。で、ちょっと説明しといてやろうと思ってここに寄ってもらったんだ』
真っ白というより半透明に見えるほどの薄い衣を纏い、金髪を長く靡かせた長身の美丈夫がティナに向かって微笑んでいる。
『何?注意事項?痛いのは嫌よ』
『痛いというほどではないが、あっちの世界とこっちの世界を行き来するっていのはかなりイレギュラーな行為だからな・・・突入する時少しだけ衝撃を感じると思う』
『衝撃?』
『うん。なんというか・・・大気圏突入的な?』
『まあ多少は頑張るわ。で?あっちに戻っても動けないのよね?私って』
『そう。動けても病院内くらいかな。相変わらず加害者の男が毎日来てるからそいつを動かせば良いだろう』
『動いてくれるの?』
『ああ、大丈夫だ。まあ、そういう事だから、頑張れよ。それとできればあっちの時間で12日が滞在時間マックスだと思った方が良い』
『という事はこっちで4日位ってことね・・・まあ妥当かな・・・』
『じゃあ頑張ってこい!何かあったらすぐ呼べよ?』
『分かった。頼りにしてまっせ~』
神に手を振って前を向いた瞬間、体がかなりの衝撃を受けた。
誰かが手を握っている。
ティナは大きく息を吐いてうっすらと目を開けた。
バタバタと人が動く気配がする。
「ティナさん!ああ・・・良かった・・・今ドクターが来ますから!寝ちゃだめでよす!気をしっかり持って!」
大きな声で自分に呼びかける男の方に目を向けた。
男は涙ぐんでティナの手を強く握っている。
(痛いんですけど・・・手が・・・)
どうもまだ声は出せないらしい。
何かが頬を濡らす感覚があった。
(ん?なんだ?私・・・泣いてるの?)
「ああ・・・ティナさん・・・泣かないで・・・良かった・・・本当に良かった」
手を握っている男も泣いている。
(こいつが加害者か?・・・あら・・・良い男・・・ふふふツイてるわ、私。お金持ちって大魔神も言ってたし。こいつを手駒にして準備を進めればいいのね?なんか・・・チョロそう・・・)
バタバタと押し音が響きドクターが覆いかぶさるようにティナの顔を覗き込んだ。
(あら・・・こっちの良い男・・・)
まだしゃべることもできないのに、ティナの口角が少し上がった。
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