【完結】歴史が変わりますが神の願いなのでどうぞご了承ください

志波 連

文字の大きさ
上 下
67 / 184

久しぶりに帰ってみた

しおりを挟む
アランと12時間交代でロージーを看病する日々が続き、流石のティナも少し疲労を覚えていた。
ロージーはまだ意識も戻らず、このところ夜中になると熱が出るのが常態化していた。
夜中の発熱に対応するのはティナなので必然的に負担が増えているという常態が続いていた。
当然アランはティナにだけ負担が掛かることを心苦しく思っていたが、こればかりはどうしようもない。

「ロア殿、母は昨夜も熱が出たのでしょうか」

「そうですね、1時か2時くらいだったと思います。一昨日もその前も同じ時間帯でしたが何が原因なのでしょうね」

「ええ、お医者様にもお話ししたのですが理由はわからないということでした。今のままではロア殿ばかりに苦労をかけることになるので・・・」

胸の前で手を握り苦しそうに詫びるアランを見てティナは言った。

「アラン。私は恩返しができて嬉しいのです。命を賭けて私を守ってくれたロージー様のご苦労はこの程度では無かったはずです。だからアラン、そんな顔をしないでください」

握られたアランの拳を両手で包みティナが言った。
アランも手を握り返す。
ふとアランが言った。

「ロア殿?手が・・・熱すぎませんか?熱があるのでは無いですか?」

アランがすかさずティナの額に手を当てた。

「ロア!大変だ!凄い熱ですよ!お医者様を・・・ロア?ロア・・・」

アランの声を遠くに聞きながらティナは意識を手放した。

『おい!ティナ!ティナ!起きろ!』

『煩いわね・・・って!えっ!どこなのここ!』

『時空の間(はざま)と呼んでいる場所だ。要するにあっちとこっちの渡り廊下?』

『分かりやすそうでわかり難いわね・・・って大魔神!その恰好・・・素敵じゃないのぉぉぉ~』

『お前・・・だんだん節操無くなってないか?』

『そんなことないわよ。リトルハーベストもなかなか良かったけど、今のあんたってまさに神って感じで素敵だわ。今度からこれで現れてちょうだい』

『へいへい・・・それよりお前、うまい事やったな。で、ちょっと説明しといてやろうと思ってここに寄ってもらったんだ』

真っ白というより半透明に見えるほどの薄い衣を纏い、金髪を長く靡かせた長身の美丈夫がティナに向かって微笑んでいる。

『何?注意事項?痛いのは嫌よ』

『痛いというほどではないが、あっちの世界とこっちの世界を行き来するっていのはかなりイレギュラーな行為だからな・・・突入する時少しだけ衝撃を感じると思う』

『衝撃?』

『うん。なんというか・・・大気圏突入的な?』

『まあ多少は頑張るわ。で?あっちに戻っても動けないのよね?私って』

『そう。動けても病院内くらいかな。相変わらず加害者の男が毎日来てるからそいつを動かせば良いだろう』

『動いてくれるの?』

『ああ、大丈夫だ。まあ、そういう事だから、頑張れよ。それとできればあっちの時間で12日が滞在時間マックスだと思った方が良い』

『という事はこっちで4日位ってことね・・・まあ妥当かな・・・』

『じゃあ頑張ってこい!何かあったらすぐ呼べよ?』

『分かった。頼りにしてまっせ~』

神に手を振って前を向いた瞬間、体がかなりの衝撃を受けた。
誰かが手を握っている。
ティナは大きく息を吐いてうっすらと目を開けた。
バタバタと人が動く気配がする。

「ティナさん!ああ・・・良かった・・・今ドクターが来ますから!寝ちゃだめでよす!気をしっかり持って!」

大きな声で自分に呼びかける男の方に目を向けた。
男は涙ぐんでティナの手を強く握っている。

(痛いんですけど・・・手が・・・)

どうもまだ声は出せないらしい。
何かが頬を濡らす感覚があった。

(ん?なんだ?私・・・泣いてるの?)

「ああ・・・ティナさん・・・泣かないで・・・良かった・・・本当に良かった」

手を握っている男も泣いている。

(こいつが加害者か?・・・あら・・・良い男・・・ふふふツイてるわ、私。お金持ちって大魔神も言ってたし。こいつを手駒にして準備を進めればいいのね?なんか・・・チョロそう・・・)

バタバタと押し音が響きドクターが覆いかぶさるようにティナの顔を覗き込んだ。

(あら・・・こっちの良い男・・・)

まだしゃべることもできないのに、ティナの口角が少し上がった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...