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大神官の登場
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美しいティナの礼に微笑んで目を細めたオルフェウスが言った。
「ああ、あなたが。ロージーから良く話しを聞いていました。ご立派になられて・・・ロージーもさぞ満足していることでしょう。それで?あなた様がロージーの看病を?」
「はい。赤ん坊の頃のことで記憶には無いのですが・・・お世話になったロージー様に少しだけでも恩返しをしとうございます」
「大変素晴らしい心がけです。しかしご子息とはいえこちらの男性をお泊めする訳にはいかないのです。ご理解いただけないでしょうか」
アランが慌てて言う。
「勿論です。私は近くに宿をとって看病に通います。18時の鐘と共に退出いたしますので」
「それはもちろん構いません。それではそちらのお嬢様と交代で看病されるのですね?夜間は私共で見守りましょう」
ティナが慌てて言った。
「夜間は私が、昼間はアラン様が看るというのは如何でしょうか。ロージー様はきっと皆様に迷惑をお掛けすることを気に病まれると思うのです。女性の私なら夜間にいても構いませんでしょう?」
「それは勿論・・・でも大丈夫ですか?」
「はい。無理はしません。ねえアラン、それで良いよね?」
「それはロア殿・・・いやティナロアお嬢様さえ良ければ・・・」
「では決まりです。朝6時からの12時間交代にしましょう」
フェルナンドとオルフェウスがもう一度顔を見合わせた。
おもむろにオルフェウスがティナに向かって言った。
「ティナロア様・・・あなたからは不思議な力を感じます」
そう言ってティナの方に手を差し出した。
ティナが差し出された手に触れた途端、眩い光が指先から弾けた。
驚いた顔でオルフェウスが言った。
「フェルナンド・・・間違いないようですね・・・この方こそお前が授かった啓示の方です」
「おお!オルフェウス様・・・私も本当に授かることができたのですね・・・神よ・・・感謝します」
いきなり跪き祈りを捧げ始めるフェルナンド。
その姿を驚いた表情でみるティナとアラン。
ニマニマと笑いながらオルフェウスが口を開いた。
「先ほどフェルナンドが神の声を聞いたと言って来たのです。確かにフェルナンドは熱心な神官ではありますが、神の啓示を受けるにはまだ修業が足りないと思っていたのですが間違い無いようです」
「それはどういう?」
ティナが首を傾げ乍らオルフェウスに聞いた。
「フェルナンドの頭の中に神の声が響いたのです。一番初めに看病を申し出た者こそ神の使いであると」
「私が?神の?使い?」
「ええ、そういう事です。それにあなたには不思議な加護が与えられています。それは間違いありません。もしかしたら聖女かも・・・」
慌ててティナは否定した。
「聖女ではありません!それは絶対に違います!絶対絶対に聖女ではありませんから!」
ティナの慌てぶりに神官たちが驚いている。
「しかし・・・その加護の力は・・・」
「これは・・・えっと・・・なぜかつい最近手に入ったというか・・・」
「それではあなたは・・・神にとってどういうお立場になられるのでしょうか」
「う~ん・・・便利な使い魔?」
「「「使い魔!」」」
「あっ!言葉を間違えました。神の使者・・・そう!仕事が丁寧な便利なお使い担当です!」
「「「???」」」
「まあ、そういう事で・・・よろしくお願いします」
焦るティナの頭の中で神の声が響く。
『お前・・・言うに事欠いて使い魔とは・・・マジでおもろい奴!』
『煩いわね!あんたのせいでしょうに!番探してやらないよ?』
『いや!待て!俺が悪かった・・・というか・・・神を脅すとは・・・』
ティナの頭から神の気配が消えた。
ふとティナは思った。
(今の会話って・・・こんな感じなわけ?神の啓示って・・・なんか俗っぽいわね・・・それにしてもフェルナンド神官・・・良い男・・・好みだわ・・・)
頭の中で大きな音が響き神の声が聞こえた。
『神官に手を出したらダメだぞ!』
『わかってるわよ!人を見境ない女にように言わないで!』
『・・・ホントにダメだからな!』
目まぐるしく動くティナの表情をじっと見詰めていたオルフェウスが言った。
「ティナロア様?もしかして・・・神と会話をされていましたか?」
「えっ!いや・・・そんなわけ・・・ありませんよ・・・ははは」
「そうですか・・・」
部屋に二人の乾いた笑いが空しく響く。
アランに手を握られたロージーは静かに眠り続けていた。
「ああ、あなたが。ロージーから良く話しを聞いていました。ご立派になられて・・・ロージーもさぞ満足していることでしょう。それで?あなた様がロージーの看病を?」
「はい。赤ん坊の頃のことで記憶には無いのですが・・・お世話になったロージー様に少しだけでも恩返しをしとうございます」
「大変素晴らしい心がけです。しかしご子息とはいえこちらの男性をお泊めする訳にはいかないのです。ご理解いただけないでしょうか」
アランが慌てて言う。
「勿論です。私は近くに宿をとって看病に通います。18時の鐘と共に退出いたしますので」
「それはもちろん構いません。それではそちらのお嬢様と交代で看病されるのですね?夜間は私共で見守りましょう」
ティナが慌てて言った。
「夜間は私が、昼間はアラン様が看るというのは如何でしょうか。ロージー様はきっと皆様に迷惑をお掛けすることを気に病まれると思うのです。女性の私なら夜間にいても構いませんでしょう?」
「それは勿論・・・でも大丈夫ですか?」
「はい。無理はしません。ねえアラン、それで良いよね?」
「それはロア殿・・・いやティナロアお嬢様さえ良ければ・・・」
「では決まりです。朝6時からの12時間交代にしましょう」
フェルナンドとオルフェウスがもう一度顔を見合わせた。
おもむろにオルフェウスがティナに向かって言った。
「ティナロア様・・・あなたからは不思議な力を感じます」
そう言ってティナの方に手を差し出した。
ティナが差し出された手に触れた途端、眩い光が指先から弾けた。
驚いた顔でオルフェウスが言った。
「フェルナンド・・・間違いないようですね・・・この方こそお前が授かった啓示の方です」
「おお!オルフェウス様・・・私も本当に授かることができたのですね・・・神よ・・・感謝します」
いきなり跪き祈りを捧げ始めるフェルナンド。
その姿を驚いた表情でみるティナとアラン。
ニマニマと笑いながらオルフェウスが口を開いた。
「先ほどフェルナンドが神の声を聞いたと言って来たのです。確かにフェルナンドは熱心な神官ではありますが、神の啓示を受けるにはまだ修業が足りないと思っていたのですが間違い無いようです」
「それはどういう?」
ティナが首を傾げ乍らオルフェウスに聞いた。
「フェルナンドの頭の中に神の声が響いたのです。一番初めに看病を申し出た者こそ神の使いであると」
「私が?神の?使い?」
「ええ、そういう事です。それにあなたには不思議な加護が与えられています。それは間違いありません。もしかしたら聖女かも・・・」
慌ててティナは否定した。
「聖女ではありません!それは絶対に違います!絶対絶対に聖女ではありませんから!」
ティナの慌てぶりに神官たちが驚いている。
「しかし・・・その加護の力は・・・」
「これは・・・えっと・・・なぜかつい最近手に入ったというか・・・」
「それではあなたは・・・神にとってどういうお立場になられるのでしょうか」
「う~ん・・・便利な使い魔?」
「「「使い魔!」」」
「あっ!言葉を間違えました。神の使者・・・そう!仕事が丁寧な便利なお使い担当です!」
「「「???」」」
「まあ、そういう事で・・・よろしくお願いします」
焦るティナの頭の中で神の声が響く。
『お前・・・言うに事欠いて使い魔とは・・・マジでおもろい奴!』
『煩いわね!あんたのせいでしょうに!番探してやらないよ?』
『いや!待て!俺が悪かった・・・というか・・・神を脅すとは・・・』
ティナの頭から神の気配が消えた。
ふとティナは思った。
(今の会話って・・・こんな感じなわけ?神の啓示って・・・なんか俗っぽいわね・・・それにしてもフェルナンド神官・・・良い男・・・好みだわ・・・)
頭の中で大きな音が響き神の声が聞こえた。
『神官に手を出したらダメだぞ!』
『わかってるわよ!人を見境ない女にように言わないで!』
『・・・ホントにダメだからな!』
目まぐるしく動くティナの表情をじっと見詰めていたオルフェウスが言った。
「ティナロア様?もしかして・・・神と会話をされていましたか?」
「えっ!いや・・・そんなわけ・・・ありませんよ・・・ははは」
「そうですか・・・」
部屋に二人の乾いた笑いが空しく響く。
アランに手を握られたロージーは静かに眠り続けていた。
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