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アルベッシュ王国
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国王崩御によって動き出したアルベッシュ国のお話しが何話か続きます。
物語りは皇太后の子である第二王子ハーベンと前皇后の子で皇太子であるハーベストの覇権争いが中心に進みます。
「すぐに現状を報告せよ」
僅かな休憩を取っただけでほぼ二昼夜走り通したハーベスト達がアルベッシュの王宮門に到着した。
迎え入れる衛兵に指示を飛ばしながら執務室に向かうハーベスト。
その後ろにはテキパキと報告を受け、新たな命令を下すキリウスがいた。
「兄上、お帰りなさい」
キリウスの弟で今回は留守居役として暗躍していたノリス・レーベンが駆け寄った。
「ああ、ノリスか。状況はどうだ」
「思ったより皇太后一派の行動が遅かったよ。たぶんハーベン殿下が煮え切らない態度を崩していないのだろう」
「そうか・・・ハーベン殿下がキーマンか」
「どうかな。皇太后は大層なお怒りのご様子だ。ハーベスト殿下が帰られる前に決着したかったのだろうけどね」
「なるほどね」
執務室の扉を乱暴に蹴り開けながらハーベストが言った。
「ノリス、ご苦労だったな。王杖はどうなっている?」
「宝物殿の鍵はハーベン殿下の手に渡っています。しかし宝物殿の前にはハーベスト殿下を支持する騎士団が固めているため近寄れない状態です」
「ではハーベンはまだ王杖を手にはしていないのか」
「はい。そのため皇太后様がイラついていますよ」
「ははは・・・そりゃそうだろうな。で?義母上はどちらに?」
「ご自身の宮に籠られています。ハーベン殿下一派の貴族たちも続々と集まっているようです」
「メンツは把握できているのか?」
「ええ、概ね予想通りのメンバーですが・・・中立派だと思われていた大物が混ざっています」
「誰だ」
「アンダンテ侯爵です」
「アンダンテ殿が?これは意外だな・・・という事は我が婚約者殿は裏切ったか・・・」
「なにを今さら・・・公然の秘密でしたよね?」
「でも一応秘密だっただろ?」
「ええ、確かに」
「宝物殿前の騎士団長に連絡がとれるか?」
「勿論です」
「では義母上の所に奴らが集結したら勝負に出ると伝えよ。おそらく明後日が決戦だ」
「御意」
足早にノリスが部屋を出た。
その背中を見送りながらキリウスがハーベストに話しかける。
「ハーベン殿下はリリベル嬢をどうするおつもりでしょうね?」
「我が婚約者殿をか?それは手放すはずもないさ。それが条件だ」
「でも密約は明かしておられない?」
「ああ、あいつもバカじゃない。おそらく最後までアンダンテの去就が読めなかったのだろう」
「なかなか冷徹なご兄弟ですねぇ。相変わらず」
「お前が言うな。お前の発案だろう?」
「そうですね・・・まあ今のところは計画通りというところですか・・・。皇太后様の処遇は如何なさいますか?」
「北の塔に生涯幽閉一択だな」
「それが一番ですね。状況によってはハーベン殿下に御覚悟を迫ることにもなりかねませんが」
「ああ、それなら心配ない。俺より奴の方が義母上に関しては冷酷だ。それより・・・今更だが父上の死因は何だ?」
キリウスが手に持っていた報告書をめくる。
「急性心不全ですね。いわゆる腹上死ってヤツです」
「それはまた・・・父上も本望だったことだろう。相手は誰だったのだ?」
「愛妾のララ殿らしいです・・・」
「ははは!自分の娘よりも若い女に覆いかぶさって逝ったのか!笑うしかないな」
「心よりご冥福を・・・」
胸に手を当てて哀悼の意を表したキリウスをハーベストがジトっと睨んだ。
「ご丁寧に・・・痛み入る・・・」
無表情で切り返したハーベストを今度はキリウスが冷めた目で睨んだ。
「殿下・・・腹が減りませんか?」
「おう!そうだ。腹が減った。皆にも食事を摂るように言ってやれ・・・なあ、キリウス、アレが食べたいな」
「アレですか?ああ・・・ティナロア嬢の?」
「そうそう。フィッシュフライの丸いサンドウィッチ」
「あれ旨かったですよねぇ」
「うん。旨かった・・・ティナも旨かった・・・ふふふ」
「・・・厨房に行ってきます」
キリウスは小さく舌打ちをして部屋を出た。
「ティナ・・・どうか無事で・・・愛している・・・」
執務室の窓から空を見上げつつハーベストは声に出して言った。
物語りは皇太后の子である第二王子ハーベンと前皇后の子で皇太子であるハーベストの覇権争いが中心に進みます。
「すぐに現状を報告せよ」
僅かな休憩を取っただけでほぼ二昼夜走り通したハーベスト達がアルベッシュの王宮門に到着した。
迎え入れる衛兵に指示を飛ばしながら執務室に向かうハーベスト。
その後ろにはテキパキと報告を受け、新たな命令を下すキリウスがいた。
「兄上、お帰りなさい」
キリウスの弟で今回は留守居役として暗躍していたノリス・レーベンが駆け寄った。
「ああ、ノリスか。状況はどうだ」
「思ったより皇太后一派の行動が遅かったよ。たぶんハーベン殿下が煮え切らない態度を崩していないのだろう」
「そうか・・・ハーベン殿下がキーマンか」
「どうかな。皇太后は大層なお怒りのご様子だ。ハーベスト殿下が帰られる前に決着したかったのだろうけどね」
「なるほどね」
執務室の扉を乱暴に蹴り開けながらハーベストが言った。
「ノリス、ご苦労だったな。王杖はどうなっている?」
「宝物殿の鍵はハーベン殿下の手に渡っています。しかし宝物殿の前にはハーベスト殿下を支持する騎士団が固めているため近寄れない状態です」
「ではハーベンはまだ王杖を手にはしていないのか」
「はい。そのため皇太后様がイラついていますよ」
「ははは・・・そりゃそうだろうな。で?義母上はどちらに?」
「ご自身の宮に籠られています。ハーベン殿下一派の貴族たちも続々と集まっているようです」
「メンツは把握できているのか?」
「ええ、概ね予想通りのメンバーですが・・・中立派だと思われていた大物が混ざっています」
「誰だ」
「アンダンテ侯爵です」
「アンダンテ殿が?これは意外だな・・・という事は我が婚約者殿は裏切ったか・・・」
「なにを今さら・・・公然の秘密でしたよね?」
「でも一応秘密だっただろ?」
「ええ、確かに」
「宝物殿前の騎士団長に連絡がとれるか?」
「勿論です」
「では義母上の所に奴らが集結したら勝負に出ると伝えよ。おそらく明後日が決戦だ」
「御意」
足早にノリスが部屋を出た。
その背中を見送りながらキリウスがハーベストに話しかける。
「ハーベン殿下はリリベル嬢をどうするおつもりでしょうね?」
「我が婚約者殿をか?それは手放すはずもないさ。それが条件だ」
「でも密約は明かしておられない?」
「ああ、あいつもバカじゃない。おそらく最後までアンダンテの去就が読めなかったのだろう」
「なかなか冷徹なご兄弟ですねぇ。相変わらず」
「お前が言うな。お前の発案だろう?」
「そうですね・・・まあ今のところは計画通りというところですか・・・。皇太后様の処遇は如何なさいますか?」
「北の塔に生涯幽閉一択だな」
「それが一番ですね。状況によってはハーベン殿下に御覚悟を迫ることにもなりかねませんが」
「ああ、それなら心配ない。俺より奴の方が義母上に関しては冷酷だ。それより・・・今更だが父上の死因は何だ?」
キリウスが手に持っていた報告書をめくる。
「急性心不全ですね。いわゆる腹上死ってヤツです」
「それはまた・・・父上も本望だったことだろう。相手は誰だったのだ?」
「愛妾のララ殿らしいです・・・」
「ははは!自分の娘よりも若い女に覆いかぶさって逝ったのか!笑うしかないな」
「心よりご冥福を・・・」
胸に手を当てて哀悼の意を表したキリウスをハーベストがジトっと睨んだ。
「ご丁寧に・・・痛み入る・・・」
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「殿下・・・腹が減りませんか?」
「おう!そうだ。腹が減った。皆にも食事を摂るように言ってやれ・・・なあ、キリウス、アレが食べたいな」
「アレですか?ああ・・・ティナロア嬢の?」
「そうそう。フィッシュフライの丸いサンドウィッチ」
「あれ旨かったですよねぇ」
「うん。旨かった・・・ティナも旨かった・・・ふふふ」
「・・・厨房に行ってきます」
キリウスは小さく舌打ちをして部屋を出た。
「ティナ・・・どうか無事で・・・愛している・・・」
執務室の窓から空を見上げつつハーベストは声に出して言った。
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