【完結】歴史が変わりますが神の願いなのでどうぞご了承ください

志波 連

文字の大きさ
上 下
52 / 184

新しい扉は突然開く

しおりを挟む
マダムが指定した通路の奥で壁に寄りかかりながら数分待った。
ドレスの絹連れの音が通路に響き、小走りで近づくご令嬢が視界に入る。
胸の前で手を握り今にも泣き出しそうな顔で近づいて来た。

「レディ・・・ご足労いただき感謝します。どうかご無礼をお許しください」

「まあ!なんてことを!私・・・感激しておりますのよ・・・お近くでお顔を拝見できて、お話しまでできるなんて・・・」

「ああ、可愛いレディ・・・美しい人。もっと顔を見せてください」

ティナはご令嬢の頬に優しく手を添えて顔を近づけた。

「っっっつ!ロア様・・・心臓が・・・持ちませんわ・・・」

「許可も無く触れてしまったことをお詫びします。でも・・・そうさせてしまうレディの罪なのですよ?本当に愛らしい・・・この目も鼻も・・・食べてしまいたくなるような唇も・・・まるでバラの妖精のようだ」

「ああ・・・ロア様!」

ご令嬢がティナの胸にしなだれかかった。
ティナがそっとご令嬢の腰を引き寄せ抱きしめる。

(これ以上密着するとさすがにおっぱいがあるのバレるよね・・・)

腰の辺りは密着させつつ胸は離し気味の態勢をとる。
しかしご令嬢は頭をぐいぐいとティナの胸に押し付けてきた。

(あれ?バレない?むむむ・・・晒で押さえているとはいえ複雑な気分・・・)

悪戯心が爆発したティナはさらに仕掛けた。
ご令嬢の後頭部にそっと手を添え髪を優しく撫でおろす。

「可愛い人・・・お話しをしても?」

「はい。何なりと・・・」

ご令嬢が潤んだ瞳でティナの顔を見上げた。

「私は明日旅立ちます。今夜が最後のステージです。他のお客様には何も言わずに終わるつもりです・・・しかし・・・あなたには・・・あなただけにはどうしても直接お別れを言いたかった」

ご令嬢がハッと息を呑み目を見開いた。

「最後?今・・・最後と仰いましたの?」

「ええ、今夜が最後です」

「なぜ?なぜ旅に?お給料の問題かしら?それなら私がなんとでも・・・」

「いいえ、そうではありません。こちらのマダムは破格に良い報酬を下さっていました。何の問題も無かったですよ」

「ではなぜですの?私・・・私・・・嫌ですわ!」

「ああ、レディ・・・泣かないで・・・どうか笑って下さい。あなたの笑顔を旅の糧にしたいのです」

「嫌よ・・・行かないで・・・お願い・・・ロア様・・・」

「レディ・・・何処に行ってもあなたのことを想いましょう。どの空の下でもあなたの心の安寧を祈りましょう」

「私は・・・ロア様のいない日々など・・・ああ!ロア様!やはり嫌ですわ!お別れなどと・・・」

「レディ・・・」

「レイラと・・・レイラとお呼びくださいませ」

「レイラ・・・美しいレイラ・・・私のことは忘れてください。その代わり私はあなたのことを絶対に忘れません。そして心穏やかな日々があなたに続きますように・・・」

「無理な事おっしゃらないで!ロア様がいないのに・・・それに忘れられるわけないではありませんか。こんなにもお慕いしておりますのに・・・」

ティナは思い切りご令嬢を抱きしめた。
数秒の間身動ぎもせず抱き合ったあとティナは囁くように言った。

「レイラ・・・これは絶対に秘密ですよ・・・」

ご令嬢の顎をそっと引上げ優しく口づけた。

(凄い!柔らかい!甘い!男の人とは全然違う!)

昨夜のハーベストの熱く荒々しい愛撫を思い出しティナの心臓が跳ねあがった。
うっとりするご令嬢の後頭部を手で支え、さらに深い口づけをした。
ご令嬢の唇を舌でこじ開け口腔を弄る。
震えながらそれに応えるご令嬢にティナは少なからず感動していた。

(ヤバイ!新しい扉を開けちゃった?)

ゆっくりと唇を離し、もう一度強く抱きしめてから体を離した。

「秘密は守れる?」

「はい・・・ロア様」

「良い子だ。愛してるよ」

「私も・・・お慕いしております」

「うん。でもね、忘れるんだ。いいね?」

「無理ですわ・・・そんな」

「忘れると誓うならもう一度口づけてあげよう」

「・・・わ・・・忘れ・・・ま・・・す・・・わ・・・」

「レイラ・・・」

もう一度ご令嬢を抱き寄せ深く短いキスをした。

「さあ、もう行くんだ。お幸せに・・・レイラ」

「ロア様・・・」

仕草で席に戻るよう促し、ティナはゆっくりと去っていくその背中を見ていた。
何度か振返りつつも歩みを止めることなくご令嬢は席に戻って行った。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...