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「だから!入れるわけにはいかないと言っているでしょう?お帰り下さい!」
「ここは俺の屋敷だと何度言えば分かって貰えるのでしょうね?この証書を見ても納得できませんか?」
「証書には確かにあなたの名義だと書かれていますが、我々が滞在する間は引き渡しはしないとも書かれているでしょう?」
「引き渡せとは言っていませんよ。入れろと言っているだけです。引き渡しの期日の事も含めてティナロアお嬢様と詳しい話をしたいだけです。いい加減に分かってくださいよ」
「こんな夜中にいきなり来てするような話ではないでしょう?とにかくレディティナロアに会わせることはできません」
「いい加減にしろよ?」
玄関先で数人の男たちが言い争っている。
その状況を見たティナは気を失いそうなほどに青ざめた。
ティナと一緒に馬に乗っていたハーベストがティナをグッと抱き寄せる。
「あなたは声を出してはいけません。任せてください」
「はい・・・わかりました」
ハーベストとキリウスが一団に向かって声を掛ける。
「何事だ!何時だと思っている」
騎士たちがさっと場所を空けハーベストたちを出迎えた。
「お帰りなさいませ、殿下。この者たちがレディティナロアに会わせろと・・・」
キッとした鋭い目をジャルジュたちに向け、ハーベストが言い放つ。
「時間をわきまえろ!すぐに失せないと後悔することになるぞ」
ジャルジュは一瞬怯んだが、自分を取り囲むならず者たちを見回して気を取り直した。
「これはこれは・・・我が屋敷に無理やり居座っておられる隣国の王族というのはあなた様でしょうか?私は自分の屋敷の様子を見に来ただけですが?管理を任せている女に状況を説明させたいだけなのに邪魔をされて困っているところです」
「管理を任せている女だと?お前・・・死にたがりか?」
「いえいえ死にたくはありませんよ」
ジャルジュが下卑た笑いを口元に浮かべた。
キリウスが睨みを聞かせながらならず者たちを牽制している。
「では失せろ。今夜の私は気分が良いからな。今消えれば見逃してやるぞ?」
「ですから・・・女に会わせて下されば消えますよ。少し確認したいことがあるだけですから」
「何を確認するというのだ?」
「いえね・・・ちょいと変な噂を耳にしたもので。ホンモノの伯爵令嬢が実在するのかどうかってことを確認したいんですよ」
「どういう意味だ?」
「裏の世界じゃ実しやかなに言われているんですよ。伯爵令嬢は既に逃げていて替玉を残してるってね。私はご令嬢の顔を見たことがありますし、特徴も知っていますからね。わかりやすく言うと首実験に来たってわけで」
「そんなことか。我々はお前の言うその伯爵令嬢に滞在を許され毎日顔をあわせている。間違いない。確かにこの屋敷は既にお前の名義なのだろう。しかしあのか弱いご令嬢を首実験などと・・・恥を知れ!」
「ははは!恥じですか。屋敷と一緒に娘を売り飛ばす貴族様とどちらが恥を知らないのでしょうね?とにかくここに連れてきてください。顔を見せて貰えば今日のところはおとなしく帰りますよ」
唇を噛みしめながらハーベストとジャルジュの会話を聞いていたティナが二人の側に近寄ろうとした。
ビスタが気付き小さく首を横に振る。
ティナの足が停まった。
キリウスが後に立っていた騎士に小さい声で指示を出しティナの前に行かせた。
「ロア殿、私の後ろに」
「は・・・はい」
騎士の動きを見たジャルジュがこちらに目線を向ける。
「おや?隣国の騎士団には華奢な方もおられるのですねぇ」
キリウスが毅然と応じる。
「あの者は殿下の側仕えの者。お前が気にするようなことではない。良いからさっさと立ち去ったらどうだ!」
「だからひと目ご令嬢を拝ませて下さいよ。そうしたら帰りますから。出せないのですか?まさか本当にいないのでは無いでしょうな」
「ここは俺の屋敷だと何度言えば分かって貰えるのでしょうね?この証書を見ても納得できませんか?」
「証書には確かにあなたの名義だと書かれていますが、我々が滞在する間は引き渡しはしないとも書かれているでしょう?」
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「こんな夜中にいきなり来てするような話ではないでしょう?とにかくレディティナロアに会わせることはできません」
「いい加減にしろよ?」
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その状況を見たティナは気を失いそうなほどに青ざめた。
ティナと一緒に馬に乗っていたハーベストがティナをグッと抱き寄せる。
「あなたは声を出してはいけません。任せてください」
「はい・・・わかりました」
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「何事だ!何時だと思っている」
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「お帰りなさいませ、殿下。この者たちがレディティナロアに会わせろと・・・」
キッとした鋭い目をジャルジュたちに向け、ハーベストが言い放つ。
「時間をわきまえろ!すぐに失せないと後悔することになるぞ」
ジャルジュは一瞬怯んだが、自分を取り囲むならず者たちを見回して気を取り直した。
「これはこれは・・・我が屋敷に無理やり居座っておられる隣国の王族というのはあなた様でしょうか?私は自分の屋敷の様子を見に来ただけですが?管理を任せている女に状況を説明させたいだけなのに邪魔をされて困っているところです」
「管理を任せている女だと?お前・・・死にたがりか?」
「いえいえ死にたくはありませんよ」
ジャルジュが下卑た笑いを口元に浮かべた。
キリウスが睨みを聞かせながらならず者たちを牽制している。
「では失せろ。今夜の私は気分が良いからな。今消えれば見逃してやるぞ?」
「ですから・・・女に会わせて下されば消えますよ。少し確認したいことがあるだけですから」
「何を確認するというのだ?」
「いえね・・・ちょいと変な噂を耳にしたもので。ホンモノの伯爵令嬢が実在するのかどうかってことを確認したいんですよ」
「どういう意味だ?」
「裏の世界じゃ実しやかなに言われているんですよ。伯爵令嬢は既に逃げていて替玉を残してるってね。私はご令嬢の顔を見たことがありますし、特徴も知っていますからね。わかりやすく言うと首実験に来たってわけで」
「そんなことか。我々はお前の言うその伯爵令嬢に滞在を許され毎日顔をあわせている。間違いない。確かにこの屋敷は既にお前の名義なのだろう。しかしあのか弱いご令嬢を首実験などと・・・恥を知れ!」
「ははは!恥じですか。屋敷と一緒に娘を売り飛ばす貴族様とどちらが恥を知らないのでしょうね?とにかくここに連れてきてください。顔を見せて貰えば今日のところはおとなしく帰りますよ」
唇を噛みしめながらハーベストとジャルジュの会話を聞いていたティナが二人の側に近寄ろうとした。
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ティナの足が停まった。
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「ロア殿、私の後ろに」
「は・・・はい」
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「おや?隣国の騎士団には華奢な方もおられるのですねぇ」
キリウスが毅然と応じる。
「あの者は殿下の側仕えの者。お前が気にするようなことではない。良いからさっさと立ち去ったらどうだ!」
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