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今さらですが少し良心の呵責を覚えます

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「マダムラッテ・・・相談に乗っていただけませんか?」

「まあロア?改まってどうされたのかしら・・・好きな子でもできて?」

「それなら相談なんかせずさっさと掻っ攫って逃げますよ。って私の性的対象は男性に限りますが」

「ほほほ安心しました。それでご相談とは?」

「実は・・・」

ティナは屋敷と一緒に売られそうな現状を話した。
ずっと黙って聞いていたマダムラッテはタバコをひと口吸ってから話し始めた。

「要するにロアは両親に売られたということね?」

「はい」

「伯爵の屋敷と処女の伯爵令嬢って合わせていくらなのかしら・・・」

「それは知りません」

「お金はどうやって受け取るの?」

「既に半金は貰っているらしいです。隣国に・・・義母の実家に行く際に全て持っていかれましたから。残りの半金は何らかの方法で送金されるのだと思います。結局私の手元にはまったく残らないようになっています」

「まあそうでしょうね・・・あなたが昼夜掛持ちで働いているのは生活のためでしょうから」

「全てお見通しだったのですね・・・」

「そりゃ雇用する人間の身元調査くらいするわ?かなり複雑な事情があるのだろうとは思っていたけど、想像以上な状況ね」

「申し訳ありません」

「それで?あなたとしてはお金は払ってほしいけど自分は売りたくないという希望を叶えたいっていうことね?」

「はい。屋敷のことは全然いいですし、お金のことも本当は別に良いのです。半金が親に渡らなくても私には関係ないって思います。ただ使用人の二人には絶対に迷惑を掛けたくないのです」

「ああ、ビスタとリアね。まあ契約が履行されないうえにあなたが姿を消したら・・・当然あの二人が危険よね」

「はい。それだけは・・・」

「判ったわ。少しだけ時間を頂戴?良い方法を考えてみるわ。時間はどれくらいあるの?」

「できれば今月中にはカタをつけたいです」

「なるほどね・・・その後はあなたどうするの?この街にはいられなくなるでしょう?」

「はい。王都に行こうと考えています」

「王都・・・なるほどね」

「よろしくお願いします。私も考えてみますので」

「かわいいロアの為だもの。私も全力で応援するわ。で?いつまでお店に出られそうなのかしら」

「できればあと十日くらいで終わりにしようかと思っています」

「そうね、いろいろ準備もあるでしょうし・・・残念ね。あなたのファンのお嬢様方が寝込むかもしれないわね・・・ふふふ」

「ははは・・・」

「そういう事なら短期間で目いっぱい稼がせて戴きましょうか。ロアも協力してね?」

「勿論です。マダムラッテ」

そう言うとティナは騎士の礼をとってマダムラッテの手の甲に口づけた。

「ああ、このキスが受けられなくなるかと思うと私も悲しいわ・・・死んで困る人もいないようなジャルジュのためにうちの店は大損害ね・・・いっそ殺して埋めようかしら・・・」

あながち冗談でもなさそうなのでティナは何も言わず部屋を出た。
マダムラッテは口元を扇で隠しながら少し笑うように何かを考えていた。

「殺して埋めるって・・・マジかよ」

マダムラッテに相談したティナは少し安心できた。
なんとも頼もしい人と繋がりができたものだと思う。
裏社会にもかなり顔が利くらしいことはなんとなく察していたがまず間違いはないだろう。

「敵に回すと怖い人よねぇ」

そんなことを考えながら賄い飯を口にしていると、いつものようにプレゼントが大量に運ばれてきた。
花束をテーブルに積み上げながらスタッフがティナに言った。

「今日は7番テーブルの金髪のご令嬢に一曲と3番テーブルの黒髪のご令嬢にい願いします」

「わかりました。どちらを先にしますか?」

「どちらでも良いですよ。たぶんいつものように最後までお帰りにはならないでしょう」

「じゃあ・・・私の好みの方からにしますね」

「ははは!では今宵はロア殿の好みの傾向が判るという事ですね?楽しみだ」

軽口を叩いてスタッフはホールに向かった。
ティナは山積みになった花束の中から紫のバラを一輪引き抜いて胸のポケットに挿した。
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