32 / 184
今さらですが少し良心の呵責を覚えます
しおりを挟む
「マダムラッテ・・・相談に乗っていただけませんか?」
「まあロア?改まってどうされたのかしら・・・好きな子でもできて?」
「それなら相談なんかせずさっさと掻っ攫って逃げますよ。って私の性的対象は男性に限りますが」
「ほほほ安心しました。それでご相談とは?」
「実は・・・」
ティナは屋敷と一緒に売られそうな現状を話した。
ずっと黙って聞いていたマダムラッテはタバコをひと口吸ってから話し始めた。
「要するにロアは両親に売られたということね?」
「はい」
「伯爵の屋敷と処女の伯爵令嬢って合わせていくらなのかしら・・・」
「それは知りません」
「お金はどうやって受け取るの?」
「既に半金は貰っているらしいです。隣国に・・・義母の実家に行く際に全て持っていかれましたから。残りの半金は何らかの方法で送金されるのだと思います。結局私の手元にはまったく残らないようになっています」
「まあそうでしょうね・・・あなたが昼夜掛持ちで働いているのは生活のためでしょうから」
「全てお見通しだったのですね・・・」
「そりゃ雇用する人間の身元調査くらいするわ?かなり複雑な事情があるのだろうとは思っていたけど、想像以上な状況ね」
「申し訳ありません」
「それで?あなたとしてはお金は払ってほしいけど自分は売りたくないという希望を叶えたいっていうことね?」
「はい。屋敷のことは全然いいですし、お金のことも本当は別に良いのです。半金が親に渡らなくても私には関係ないって思います。ただ使用人の二人には絶対に迷惑を掛けたくないのです」
「ああ、ビスタとリアね。まあ契約が履行されないうえにあなたが姿を消したら・・・当然あの二人が危険よね」
「はい。それだけは・・・」
「判ったわ。少しだけ時間を頂戴?良い方法を考えてみるわ。時間はどれくらいあるの?」
「できれば今月中にはカタをつけたいです」
「なるほどね・・・その後はあなたどうするの?この街にはいられなくなるでしょう?」
「はい。王都に行こうと考えています」
「王都・・・なるほどね」
「よろしくお願いします。私も考えてみますので」
「かわいいロアの為だもの。私も全力で応援するわ。で?いつまでお店に出られそうなのかしら」
「できればあと十日くらいで終わりにしようかと思っています」
「そうね、いろいろ準備もあるでしょうし・・・残念ね。あなたのファンのお嬢様方が寝込むかもしれないわね・・・ふふふ」
「ははは・・・」
「そういう事なら短期間で目いっぱい稼がせて戴きましょうか。ロアも協力してね?」
「勿論です。マダムラッテ」
そう言うとティナは騎士の礼をとってマダムラッテの手の甲に口づけた。
「ああ、このキスが受けられなくなるかと思うと私も悲しいわ・・・死んで困る人もいないようなジャルジュのためにうちの店は大損害ね・・・いっそ殺して埋めようかしら・・・」
あながち冗談でもなさそうなのでティナは何も言わず部屋を出た。
マダムラッテは口元を扇で隠しながら少し笑うように何かを考えていた。
「殺して埋めるって・・・マジかよ」
マダムラッテに相談したティナは少し安心できた。
なんとも頼もしい人と繋がりができたものだと思う。
裏社会にもかなり顔が利くらしいことはなんとなく察していたがまず間違いはないだろう。
「敵に回すと怖い人よねぇ」
そんなことを考えながら賄い飯を口にしていると、いつものようにプレゼントが大量に運ばれてきた。
花束をテーブルに積み上げながらスタッフがティナに言った。
「今日は7番テーブルの金髪のご令嬢に一曲と3番テーブルの黒髪のご令嬢にい願いします」
「わかりました。どちらを先にしますか?」
「どちらでも良いですよ。たぶんいつものように最後までお帰りにはならないでしょう」
「じゃあ・・・私の好みの方からにしますね」
「ははは!では今宵はロア殿の好みの傾向が判るという事ですね?楽しみだ」
軽口を叩いてスタッフはホールに向かった。
ティナは山積みになった花束の中から紫のバラを一輪引き抜いて胸のポケットに挿した。
「まあロア?改まってどうされたのかしら・・・好きな子でもできて?」
「それなら相談なんかせずさっさと掻っ攫って逃げますよ。って私の性的対象は男性に限りますが」
「ほほほ安心しました。それでご相談とは?」
「実は・・・」
ティナは屋敷と一緒に売られそうな現状を話した。
ずっと黙って聞いていたマダムラッテはタバコをひと口吸ってから話し始めた。
「要するにロアは両親に売られたということね?」
「はい」
「伯爵の屋敷と処女の伯爵令嬢って合わせていくらなのかしら・・・」
「それは知りません」
「お金はどうやって受け取るの?」
「既に半金は貰っているらしいです。隣国に・・・義母の実家に行く際に全て持っていかれましたから。残りの半金は何らかの方法で送金されるのだと思います。結局私の手元にはまったく残らないようになっています」
「まあそうでしょうね・・・あなたが昼夜掛持ちで働いているのは生活のためでしょうから」
「全てお見通しだったのですね・・・」
「そりゃ雇用する人間の身元調査くらいするわ?かなり複雑な事情があるのだろうとは思っていたけど、想像以上な状況ね」
「申し訳ありません」
「それで?あなたとしてはお金は払ってほしいけど自分は売りたくないという希望を叶えたいっていうことね?」
「はい。屋敷のことは全然いいですし、お金のことも本当は別に良いのです。半金が親に渡らなくても私には関係ないって思います。ただ使用人の二人には絶対に迷惑を掛けたくないのです」
「ああ、ビスタとリアね。まあ契約が履行されないうえにあなたが姿を消したら・・・当然あの二人が危険よね」
「はい。それだけは・・・」
「判ったわ。少しだけ時間を頂戴?良い方法を考えてみるわ。時間はどれくらいあるの?」
「できれば今月中にはカタをつけたいです」
「なるほどね・・・その後はあなたどうするの?この街にはいられなくなるでしょう?」
「はい。王都に行こうと考えています」
「王都・・・なるほどね」
「よろしくお願いします。私も考えてみますので」
「かわいいロアの為だもの。私も全力で応援するわ。で?いつまでお店に出られそうなのかしら」
「できればあと十日くらいで終わりにしようかと思っています」
「そうね、いろいろ準備もあるでしょうし・・・残念ね。あなたのファンのお嬢様方が寝込むかもしれないわね・・・ふふふ」
「ははは・・・」
「そういう事なら短期間で目いっぱい稼がせて戴きましょうか。ロアも協力してね?」
「勿論です。マダムラッテ」
そう言うとティナは騎士の礼をとってマダムラッテの手の甲に口づけた。
「ああ、このキスが受けられなくなるかと思うと私も悲しいわ・・・死んで困る人もいないようなジャルジュのためにうちの店は大損害ね・・・いっそ殺して埋めようかしら・・・」
あながち冗談でもなさそうなのでティナは何も言わず部屋を出た。
マダムラッテは口元を扇で隠しながら少し笑うように何かを考えていた。
「殺して埋めるって・・・マジかよ」
マダムラッテに相談したティナは少し安心できた。
なんとも頼もしい人と繋がりができたものだと思う。
裏社会にもかなり顔が利くらしいことはなんとなく察していたがまず間違いはないだろう。
「敵に回すと怖い人よねぇ」
そんなことを考えながら賄い飯を口にしていると、いつものようにプレゼントが大量に運ばれてきた。
花束をテーブルに積み上げながらスタッフがティナに言った。
「今日は7番テーブルの金髪のご令嬢に一曲と3番テーブルの黒髪のご令嬢にい願いします」
「わかりました。どちらを先にしますか?」
「どちらでも良いですよ。たぶんいつものように最後までお帰りにはならないでしょう」
「じゃあ・・・私の好みの方からにしますね」
「ははは!では今宵はロア殿の好みの傾向が判るという事ですね?楽しみだ」
軽口を叩いてスタッフはホールに向かった。
ティナは山積みになった花束の中から紫のバラを一輪引き抜いて胸のポケットに挿した。
13
お気に入りに追加
284
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される
雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。
スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。
※誤字報告、感想などありがとうございます!
書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました!
電子書籍も出ました。
文庫版が2024年7月5日に発売されました!
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる