20 / 184
予定通り誤解される
しおりを挟む
ハーベストは三日ほど安静にしていた。
ティナは時間さえあればハーベストのお見舞いに行く日々を送った。
ティナが部屋にいる間ハーベストはティナの手を握ったままで、その都度キリウスに叱られていた。
騎士たちは日常に戻り早朝から訓練を欠かさない。
ティナも日常を取り戻し、早朝から仕事に出ていた。
「おい、やっぱり今日も出て行ったな」
「ああ俺も見ちゃったよ。がっかりだよなぁ~慎ましやかなご令嬢がさぁ」
廊下で立ち話をしていた騎士たちの会話がハーベストとキリウスの耳に飛び込んできた。
「おい、何を話している?」
キリウスが咎めるように声を掛けた。
「あっ・・・えっと・・・実は毎日四時頃に青年が馬に乗って屋敷から出て行くのを見てしまって」
「どういうことだ?」
「何人か見たっていう連中もいて・・・たぶんティナロア嬢かリア嬢の恋人だろうと・・・」
「・・・‥‥確認したのか?」
「いえ・・・ただの噂です。申し訳ございません!」
ハーベストが不機嫌そうに親指の爪を噛んだ。
キリウスがそっとそれを窘める。
「騎士たるものつまらん噂を口にすべきではないな!」
「しかし副団長。夜も出て行く姿を見ているのですよ。しかも夜中に屋敷に入っていく姿も目撃されているのです」
「‥‥‥殿下・・・どうしますか?」
ハーベストの顔が一層険しくなった。
「あ・・・あの‥‥それは誤解です・・・」
後からビスタが声を掛けた。
「ビスタ殿。説明していただけないか?」
キリウスがビスタに言った。
「私の部屋で聞こう。お茶を持ってきていただけないか?」
「畏まりました・・・」
ビスタが厨房に向かうと振り向きざまにキリウスが二人の噂話をしていた騎士たちに他言無用を念押しした。
騎士たちは大きく頷きロビーへと去って行った。
ハーベストの部屋のドアがノックされ、ビスタとリアが入ってきた。
「忙しいのにすまない。先ほどの話・・・いや、なぜティナロア嬢だけが残されているのか不思議なことだらけだ。説明して貰えないだろうか」
ビスタとリアが顔を見合わせ頷きあった。
「ハーベスト皇子殿下がどこまでご存知なのか分かりませんので、重複しているところがあるかもしれませんがご了承下さいませ」
ビスタが口を開き、リアがお茶の準備に取り掛かった。
「ティナロアお嬢様は赤子の時からずっとお可哀そうな目にあってこられたのです。お嬢様をお産みになった方は遠国から来られた旅芸人一座の方でした。ティナロアお嬢様の黒髪と黒曜石の瞳はその方から受け継がれています」
「さぞお美しい女性だったのだろう・・・」
「はい。それはもうエキゾチックな美女でご主人様・・・ランバーツ伯爵は一目ぼれされて・・・それはもう無理やり手に入れようとなさいました。リリア様は・・・大金に目が眩んだ一座の座長に売られたのです。そしてティナロアお嬢様をお産みになった一年後、アルベッシュ国王の愛妾として差し出されてしまわれました」
「何だと!父上の元に贈られた?リリア?リリア・・・リリアン妃か!」
「今はリリアンというお名前ですか・・・生きておいでなのですね?良かった・・・」
「それは伯爵がそうなさったのか?」
「いいえ、奥様です。ベルーシュ奥様がご実家に里帰りされるとき手土産としてお連れになってしまいました」
「人を・・・手土産とは・・・」
ハーベストとキリウスが同時に唸り声を出した。
ティナは時間さえあればハーベストのお見舞いに行く日々を送った。
ティナが部屋にいる間ハーベストはティナの手を握ったままで、その都度キリウスに叱られていた。
騎士たちは日常に戻り早朝から訓練を欠かさない。
ティナも日常を取り戻し、早朝から仕事に出ていた。
「おい、やっぱり今日も出て行ったな」
「ああ俺も見ちゃったよ。がっかりだよなぁ~慎ましやかなご令嬢がさぁ」
廊下で立ち話をしていた騎士たちの会話がハーベストとキリウスの耳に飛び込んできた。
「おい、何を話している?」
キリウスが咎めるように声を掛けた。
「あっ・・・えっと・・・実は毎日四時頃に青年が馬に乗って屋敷から出て行くのを見てしまって」
「どういうことだ?」
「何人か見たっていう連中もいて・・・たぶんティナロア嬢かリア嬢の恋人だろうと・・・」
「・・・‥‥確認したのか?」
「いえ・・・ただの噂です。申し訳ございません!」
ハーベストが不機嫌そうに親指の爪を噛んだ。
キリウスがそっとそれを窘める。
「騎士たるものつまらん噂を口にすべきではないな!」
「しかし副団長。夜も出て行く姿を見ているのですよ。しかも夜中に屋敷に入っていく姿も目撃されているのです」
「‥‥‥殿下・・・どうしますか?」
ハーベストの顔が一層険しくなった。
「あ・・・あの‥‥それは誤解です・・・」
後からビスタが声を掛けた。
「ビスタ殿。説明していただけないか?」
キリウスがビスタに言った。
「私の部屋で聞こう。お茶を持ってきていただけないか?」
「畏まりました・・・」
ビスタが厨房に向かうと振り向きざまにキリウスが二人の噂話をしていた騎士たちに他言無用を念押しした。
騎士たちは大きく頷きロビーへと去って行った。
ハーベストの部屋のドアがノックされ、ビスタとリアが入ってきた。
「忙しいのにすまない。先ほどの話・・・いや、なぜティナロア嬢だけが残されているのか不思議なことだらけだ。説明して貰えないだろうか」
ビスタとリアが顔を見合わせ頷きあった。
「ハーベスト皇子殿下がどこまでご存知なのか分かりませんので、重複しているところがあるかもしれませんがご了承下さいませ」
ビスタが口を開き、リアがお茶の準備に取り掛かった。
「ティナロアお嬢様は赤子の時からずっとお可哀そうな目にあってこられたのです。お嬢様をお産みになった方は遠国から来られた旅芸人一座の方でした。ティナロアお嬢様の黒髪と黒曜石の瞳はその方から受け継がれています」
「さぞお美しい女性だったのだろう・・・」
「はい。それはもうエキゾチックな美女でご主人様・・・ランバーツ伯爵は一目ぼれされて・・・それはもう無理やり手に入れようとなさいました。リリア様は・・・大金に目が眩んだ一座の座長に売られたのです。そしてティナロアお嬢様をお産みになった一年後、アルベッシュ国王の愛妾として差し出されてしまわれました」
「何だと!父上の元に贈られた?リリア?リリア・・・リリアン妃か!」
「今はリリアンというお名前ですか・・・生きておいでなのですね?良かった・・・」
「それは伯爵がそうなさったのか?」
「いいえ、奥様です。ベルーシュ奥様がご実家に里帰りされるとき手土産としてお連れになってしまいました」
「人を・・・手土産とは・・・」
ハーベストとキリウスが同時に唸り声を出した。
24
お気に入りに追加
293
あなたにおすすめの小説
転生したら養子の弟と家庭教師に好かれすぎて、困っています。
ももね いちご
恋愛
普通のOL高坂真姫(こうさかまき)が、転生したのは 、フランス王国だった!?
養子の弟と家庭教師の好き好きアピールに悪戦苦闘の毎日。
しかも、その家庭教師は元〇〇で……!?
揺れ動く、マキの心情に注目しながらお楽しみください
「休刊日不定期であり」
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる