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予定通り誤解される
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ハーベストは三日ほど安静にしていた。
ティナは時間さえあればハーベストのお見舞いに行く日々を送った。
ティナが部屋にいる間ハーベストはティナの手を握ったままで、その都度キリウスに叱られていた。
騎士たちは日常に戻り早朝から訓練を欠かさない。
ティナも日常を取り戻し、早朝から仕事に出ていた。
「おい、やっぱり今日も出て行ったな」
「ああ俺も見ちゃったよ。がっかりだよなぁ~慎ましやかなご令嬢がさぁ」
廊下で立ち話をしていた騎士たちの会話がハーベストとキリウスの耳に飛び込んできた。
「おい、何を話している?」
キリウスが咎めるように声を掛けた。
「あっ・・・えっと・・・実は毎日四時頃に青年が馬に乗って屋敷から出て行くのを見てしまって」
「どういうことだ?」
「何人か見たっていう連中もいて・・・たぶんティナロア嬢かリア嬢の恋人だろうと・・・」
「・・・‥‥確認したのか?」
「いえ・・・ただの噂です。申し訳ございません!」
ハーベストが不機嫌そうに親指の爪を噛んだ。
キリウスがそっとそれを窘める。
「騎士たるものつまらん噂を口にすべきではないな!」
「しかし副団長。夜も出て行く姿を見ているのですよ。しかも夜中に屋敷に入っていく姿も目撃されているのです」
「‥‥‥殿下・・・どうしますか?」
ハーベストの顔が一層険しくなった。
「あ・・・あの‥‥それは誤解です・・・」
後からビスタが声を掛けた。
「ビスタ殿。説明していただけないか?」
キリウスがビスタに言った。
「私の部屋で聞こう。お茶を持ってきていただけないか?」
「畏まりました・・・」
ビスタが厨房に向かうと振り向きざまにキリウスが二人の噂話をしていた騎士たちに他言無用を念押しした。
騎士たちは大きく頷きロビーへと去って行った。
ハーベストの部屋のドアがノックされ、ビスタとリアが入ってきた。
「忙しいのにすまない。先ほどの話・・・いや、なぜティナロア嬢だけが残されているのか不思議なことだらけだ。説明して貰えないだろうか」
ビスタとリアが顔を見合わせ頷きあった。
「ハーベスト皇子殿下がどこまでご存知なのか分かりませんので、重複しているところがあるかもしれませんがご了承下さいませ」
ビスタが口を開き、リアがお茶の準備に取り掛かった。
「ティナロアお嬢様は赤子の時からずっとお可哀そうな目にあってこられたのです。お嬢様をお産みになった方は遠国から来られた旅芸人一座の方でした。ティナロアお嬢様の黒髪と黒曜石の瞳はその方から受け継がれています」
「さぞお美しい女性だったのだろう・・・」
「はい。それはもうエキゾチックな美女でご主人様・・・ランバーツ伯爵は一目ぼれされて・・・それはもう無理やり手に入れようとなさいました。リリア様は・・・大金に目が眩んだ一座の座長に売られたのです。そしてティナロアお嬢様をお産みになった一年後、アルベッシュ国王の愛妾として差し出されてしまわれました」
「何だと!父上の元に贈られた?リリア?リリア・・・リリアン妃か!」
「今はリリアンというお名前ですか・・・生きておいでなのですね?良かった・・・」
「それは伯爵がそうなさったのか?」
「いいえ、奥様です。ベルーシュ奥様がご実家に里帰りされるとき手土産としてお連れになってしまいました」
「人を・・・手土産とは・・・」
ハーベストとキリウスが同時に唸り声を出した。
ティナは時間さえあればハーベストのお見舞いに行く日々を送った。
ティナが部屋にいる間ハーベストはティナの手を握ったままで、その都度キリウスに叱られていた。
騎士たちは日常に戻り早朝から訓練を欠かさない。
ティナも日常を取り戻し、早朝から仕事に出ていた。
「おい、やっぱり今日も出て行ったな」
「ああ俺も見ちゃったよ。がっかりだよなぁ~慎ましやかなご令嬢がさぁ」
廊下で立ち話をしていた騎士たちの会話がハーベストとキリウスの耳に飛び込んできた。
「おい、何を話している?」
キリウスが咎めるように声を掛けた。
「あっ・・・えっと・・・実は毎日四時頃に青年が馬に乗って屋敷から出て行くのを見てしまって」
「どういうことだ?」
「何人か見たっていう連中もいて・・・たぶんティナロア嬢かリア嬢の恋人だろうと・・・」
「・・・‥‥確認したのか?」
「いえ・・・ただの噂です。申し訳ございません!」
ハーベストが不機嫌そうに親指の爪を噛んだ。
キリウスがそっとそれを窘める。
「騎士たるものつまらん噂を口にすべきではないな!」
「しかし副団長。夜も出て行く姿を見ているのですよ。しかも夜中に屋敷に入っていく姿も目撃されているのです」
「‥‥‥殿下・・・どうしますか?」
ハーベストの顔が一層険しくなった。
「あ・・・あの‥‥それは誤解です・・・」
後からビスタが声を掛けた。
「ビスタ殿。説明していただけないか?」
キリウスがビスタに言った。
「私の部屋で聞こう。お茶を持ってきていただけないか?」
「畏まりました・・・」
ビスタが厨房に向かうと振り向きざまにキリウスが二人の噂話をしていた騎士たちに他言無用を念押しした。
騎士たちは大きく頷きロビーへと去って行った。
ハーベストの部屋のドアがノックされ、ビスタとリアが入ってきた。
「忙しいのにすまない。先ほどの話・・・いや、なぜティナロア嬢だけが残されているのか不思議なことだらけだ。説明して貰えないだろうか」
ビスタとリアが顔を見合わせ頷きあった。
「ハーベスト皇子殿下がどこまでご存知なのか分かりませんので、重複しているところがあるかもしれませんがご了承下さいませ」
ビスタが口を開き、リアがお茶の準備に取り掛かった。
「ティナロアお嬢様は赤子の時からずっとお可哀そうな目にあってこられたのです。お嬢様をお産みになった方は遠国から来られた旅芸人一座の方でした。ティナロアお嬢様の黒髪と黒曜石の瞳はその方から受け継がれています」
「さぞお美しい女性だったのだろう・・・」
「はい。それはもうエキゾチックな美女でご主人様・・・ランバーツ伯爵は一目ぼれされて・・・それはもう無理やり手に入れようとなさいました。リリア様は・・・大金に目が眩んだ一座の座長に売られたのです。そしてティナロアお嬢様をお産みになった一年後、アルベッシュ国王の愛妾として差し出されてしまわれました」
「何だと!父上の元に贈られた?リリア?リリア・・・リリアン妃か!」
「今はリリアンというお名前ですか・・・生きておいでなのですね?良かった・・・」
「それは伯爵がそうなさったのか?」
「いいえ、奥様です。ベルーシュ奥様がご実家に里帰りされるとき手土産としてお連れになってしまいました」
「人を・・・手土産とは・・・」
ハーベストとキリウスが同時に唸り声を出した。
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