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「宿題は済ませたの?」
「あとは数学だけ。これがなかなか……」
「手強いよね。そう言えば葛城って志望校決めた?」
「うん、決めたよ。沙也ちゃんと同じ大学の家政学部にする」
「家政学部か、栄養学とか興味あったもんね」
「そういうの学ぶの楽しいんだぁ。将来はね、食物を通じて地球環境とか子供の健康とかに関係する仕事に就きたいって思ってる」
「葛城……お前それは、家政学部より農学部の範疇だ。そしてお前の選択は文系で、農学部は理系だ」
「えっ? そうなの?」
葛城の人生を賭けたボケかまし……ワロタ。
「今から変える? 二学期で変える人も多いって聞くよ?」
「家政学部って?」
「大くくりでいえばお前の言ったことと同じようなものだが、家政学部は『家庭』とか『生活』に主眼があるんじゃなかったかな? 」
「文系なの? 理系なの?」
「……分からないけど、大学によるんじゃない? そこは進路指導の先生に頼れ。どちらにしても文系を選択しているから理系の学部を受けられないというわけじゃないんだから」
「グレートブラザーは?」
「獣医学部? 理系だよ」
「じゃあ理系に変えようっと」
お前の判断基準がイマイチ理解できん……
「……そろそろ買い物に行こうか」
深雪ちゃんを起こして買い物に行くことを伝えると、一緒に行くという。
「今日は何にしようか」
「カレー!」
即答だった。
「何カレーにする?」
「チキン!」
うん、楽でいい。
「よし! 洋子ちゃんスペシャルチキンカレーだ!」
「やったぁ」
明日の昼食分と冷凍ストック分も一緒に作ることにして、かなり多めの買い出しをした。
途中で深雪ちゃんが欲しいスナック菓子を離さず、沙也ちゃんに怒られるという微笑ましいシーンもあったが、1個だけという妥協点に落ち着いた。
深雪ちゃんが迷いに迷って諦めた方を、自分の分だといってカートに乗せる葛城。
私はあんたのそういうところ、好きだよ。
3人で分け合って荷物を持ち、ゆるい坂を上る。
特訓の成果により、葛城は米を炊く事ができるようになった。
まあ無洗米だし? 実際炊くのは炊飯器だし?
深雪ちゃんには野菜の水洗いを担当してもらい、米をセットし終わった葛城には風呂の準備を頼んだ。
次の仕事を要求してくるやる気MAXな小学生には、玄関を掃くというミッションを与え、静かになった台所で玉葱を炒めていく。
我が家のカレーは肉と玉葱しか入っていない。
これはばあさん直伝で、水を使わず野菜ジュースで煮込むからなのだが、なんとも言えない野菜のコクが、ものすごく凝って作ったカレーのように感じさせる逸品だ。
かといっていろいろなスパイスを用意するわけではなく市販のルーを使う。
ばあさんは『スパイス研究者の弛まぬ努力に絶大な信頼を置いている』かららしい。
玉ねぎをあめ色になるまで炒めるのは時間の無駄だと教えてくれたのは母だ。
なるべく触らず、焦げそうになったら箸でほぐす。
これを繰り返すとあっという間にあめ色玉葱ができるのだ。
今思うと、ばあさんも母さんもいろいろと教えてくれている。
生きる知恵とでも言うのだろうか、そういうものは育ててくれる人から授かるのだろう。
そう考えると静香さんは本当に一人でよく頑張ったと思う。
泣きたいことなんてたくさんあっただろうし、断腸の思いで諦めたこともあったはずだ。
それでも『家族』を手放すまいと頑張っているのだから、マジでリスペクトだ。
「洋子ちゃん、お風呂終わったよ。ちょっとリビングに掃除機かけてくるね」
葛城……お前も気が利くようになったなぁ……
私は最近どこかで聞いたようなセリフを呟いていた。
「あとは数学だけ。これがなかなか……」
「手強いよね。そう言えば葛城って志望校決めた?」
「うん、決めたよ。沙也ちゃんと同じ大学の家政学部にする」
「家政学部か、栄養学とか興味あったもんね」
「そういうの学ぶの楽しいんだぁ。将来はね、食物を通じて地球環境とか子供の健康とかに関係する仕事に就きたいって思ってる」
「葛城……お前それは、家政学部より農学部の範疇だ。そしてお前の選択は文系で、農学部は理系だ」
「えっ? そうなの?」
葛城の人生を賭けたボケかまし……ワロタ。
「今から変える? 二学期で変える人も多いって聞くよ?」
「家政学部って?」
「大くくりでいえばお前の言ったことと同じようなものだが、家政学部は『家庭』とか『生活』に主眼があるんじゃなかったかな? 」
「文系なの? 理系なの?」
「……分からないけど、大学によるんじゃない? そこは進路指導の先生に頼れ。どちらにしても文系を選択しているから理系の学部を受けられないというわけじゃないんだから」
「グレートブラザーは?」
「獣医学部? 理系だよ」
「じゃあ理系に変えようっと」
お前の判断基準がイマイチ理解できん……
「……そろそろ買い物に行こうか」
深雪ちゃんを起こして買い物に行くことを伝えると、一緒に行くという。
「今日は何にしようか」
「カレー!」
即答だった。
「何カレーにする?」
「チキン!」
うん、楽でいい。
「よし! 洋子ちゃんスペシャルチキンカレーだ!」
「やったぁ」
明日の昼食分と冷凍ストック分も一緒に作ることにして、かなり多めの買い出しをした。
途中で深雪ちゃんが欲しいスナック菓子を離さず、沙也ちゃんに怒られるという微笑ましいシーンもあったが、1個だけという妥協点に落ち着いた。
深雪ちゃんが迷いに迷って諦めた方を、自分の分だといってカートに乗せる葛城。
私はあんたのそういうところ、好きだよ。
3人で分け合って荷物を持ち、ゆるい坂を上る。
特訓の成果により、葛城は米を炊く事ができるようになった。
まあ無洗米だし? 実際炊くのは炊飯器だし?
深雪ちゃんには野菜の水洗いを担当してもらい、米をセットし終わった葛城には風呂の準備を頼んだ。
次の仕事を要求してくるやる気MAXな小学生には、玄関を掃くというミッションを与え、静かになった台所で玉葱を炒めていく。
我が家のカレーは肉と玉葱しか入っていない。
これはばあさん直伝で、水を使わず野菜ジュースで煮込むからなのだが、なんとも言えない野菜のコクが、ものすごく凝って作ったカレーのように感じさせる逸品だ。
かといっていろいろなスパイスを用意するわけではなく市販のルーを使う。
ばあさんは『スパイス研究者の弛まぬ努力に絶大な信頼を置いている』かららしい。
玉ねぎをあめ色になるまで炒めるのは時間の無駄だと教えてくれたのは母だ。
なるべく触らず、焦げそうになったら箸でほぐす。
これを繰り返すとあっという間にあめ色玉葱ができるのだ。
今思うと、ばあさんも母さんもいろいろと教えてくれている。
生きる知恵とでも言うのだろうか、そういうものは育ててくれる人から授かるのだろう。
そう考えると静香さんは本当に一人でよく頑張ったと思う。
泣きたいことなんてたくさんあっただろうし、断腸の思いで諦めたこともあったはずだ。
それでも『家族』を手放すまいと頑張っているのだから、マジでリスペクトだ。
「洋子ちゃん、お風呂終わったよ。ちょっとリビングに掃除機かけてくるね」
葛城……お前も気が利くようになったなぁ……
私は最近どこかで聞いたようなセリフを呟いていた。
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