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きのこのダンジョンに到着
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きのこのダンジョン
「君☆(きみほし)」において重要な役割をしているダンジョンである。各シリーズで主人公をサポートするアイテムが手に入れられます。ただし注意が必要です。このダンジョンは最弱であり村人でも攻略が出来ます。特にきのこの魔物は美味しいです。主婦の味方です。短期間で攻略され、ダンジョンコアになる前に破壊されますので早めに確保しましょう
◇□◇□◇□
「ユーファネート様。準備が整いました。いつでも出発できます」
「ありがとう。セバス。では、きのこのダンジョンに向けて出発ですわ! お兄様は馬で?」
準備が出来たとのセバスチャンの声に、希は勢いよく頷くとミスリル装備姿で馬車に乗り込む。そして自分を見いているギュンターに問いかけると、「後で向かう」との返事があった。
「いいか、セバス。俺は後から行くが、絶対に袋の魔道具は使うなよ! かなり減らしたが、あれだけでもゴブリンレベルのスタンピードくらいなら軽く殲滅できるからな!」
「もちろんです。至上なるユーファネート様の御身に危険が及ばない限りは使いません。ただし、危険だと判断すればダンジョンごと消滅させます」
「おい! だからきのこのダンジョンだと言っているだろ! 相変わらずお前はおかし過ぎる! 絶対に使うなよ!」
セバスチャンとギュンターとのやり取りを眺めている希だが、湧き立つ心はきのこのダンジョンに向かっていた。「君☆(きみほし)」シリーズで、きのこのダンジョンが出てくるのは、ゲームの主人公がピンチになったときである。そしてきのこの魔物を討伐し、そしてレベルを上げて食材まで手にでき、ダンジョン内の魔物を枯渇させなければ恩恵を受け続ける事が出来る。
「最初のころは本当にきのこのダンジョンにはお世話になったからねー。それにしても、この世界はどのゲームなのかしら。1年も経つとスチル絵は覚えていても、ストーリーやイベントを忘れつつあるから本当に困る」
「どうかされましたか?」
「いえ、なにもないわ。出発しましょう」
希がユーファネートとだと自覚してから1年が経っており、最初の頃は細かな内容まで覚えていた「君☆(きみほし)」シリーズの内容も、徐々に記憶から薄れつつあった。それに気付いた希は慌てて記録を取り始めていたが、抜け落ちている情報もあった。
「まあ、深く考えても仕方ないわね。セバス。紅茶の用意をしてもらえるかしら」
「はい。すぐに」
さすがは侯爵家の馬車であると言えるほど、希が乗っている馬車は室内が広く、また魔道具を使って揺れる事がない特別仕様になっていた。ユーファネートの父親であるアルベリヒが「可愛いユーファが酔って、体調を悪くしたらどうする」との一言で作らせた、王国でも数台しかない逸品であった。
「なにかお考えのようでしたが?」
「ん? そうね。きのこのダンジョンを押さえたら、市民の食生活が豊かになるなと思って」
「さすがはユーファネート様。領民の食生活向上まで考えておられるなんて。本当に天使はここにいるのですね」
「お兄様じゃないけど言わせてもらうわ。ちょっとセバスおかしいわよ?」
目を輝かせながら紅茶を用意しているセバスチャンに思わずツッコむ希。そんな主人の姿を眩しそうに、また少し頬を赤らめつつ見るセバスチャン。呆れたようにため息を吐く希。そんな表情も素晴らしいと、いつものようにセバスチャンの幸せな時間はゆっくりと過ぎていくのだった。
◇□◇□◇□
「到着しました。お嬢様」
御者が希に声をかける。少しうたた寝をしていた希は目を覚ますと、ご苦労様と声をかける。そして改めて装備を確認して問題ないと頷くと馬車から降りた。きのこのダンジョンはライネワルト侯爵家の屋敷がある領都から7日ほど離れた場所にあり、父親のアルベリヒからもらった研究所からは3日ほどの場所であった。
「近くの町には寄らなかったの?」
「侯爵家の馬車が先触れも無しに到着するのは避けたいと思い、私が指示いたしました」
目の前のダンジョンを見上げながら素朴な疑問を投げかけた希に、セバスチャンが恭しく答える。この1年でセバスチャンは成長しており、執事長からも将来を期待される人材になっていた。少しばかりユーファネートへの忠誠心が振り切っているが、紅茶や剣術だけでなく、執事として必要な一通りの技術や、主人のスケジュール管理だけでなく、近隣の都市などへの対応も徐々に任されつつあった。
「まあ、セバスチャンがそういうならいいわ。でも、帰りは近くの町に寄るわよ。今後のきのこのダンジョンについての取り扱いを決めないとだめだから」
「かしこまりました。後で先触れを出しておきます」
そう希に伝えながら、セバスチャンが武器の確認を行う。希に手渡されたのは魔力を弾丸のように打ち出す武器であり、これもアルベリヒがユーファネートの為に王都で作らせた特別仕様の逸品であった。なんどか空に向かって試射を行い、問題ないと頷いた希が近くいた護衛の騎士に問いかける。
「お兄様は?」
「ギュンター様なら先に到着されており、ダンジョン内の広場でお待ちです」
「そうなの? それじゃあ、私たちも向かいましょう。あなたは馬車をお願いね」
目の前に大きな口を開いているきのこのダンジョンを見上げて、嬉しそうにすると希は、御者に留守番を頼み、そしてセバスチャンや護衛の騎士3人を連れてダンジョンに意気揚々と入っていくのだった。
きのこのダンジョン
「君☆(きみほし)」において重要な役割をしているダンジョンである。各シリーズで主人公をサポートするアイテムが手に入れられます。ただし注意が必要です。このダンジョンは最弱であり村人でも攻略が出来ます。特にきのこの魔物は美味しいです。主婦の味方です。短期間で攻略され、ダンジョンコアになる前に破壊されますので早めに確保しましょう
◇□◇□◇□
「ユーファネート様。準備が整いました。いつでも出発できます」
「ありがとう。セバス。では、きのこのダンジョンに向けて出発ですわ! お兄様は馬で?」
準備が出来たとのセバスチャンの声に、希は勢いよく頷くとミスリル装備姿で馬車に乗り込む。そして自分を見いているギュンターに問いかけると、「後で向かう」との返事があった。
「いいか、セバス。俺は後から行くが、絶対に袋の魔道具は使うなよ! かなり減らしたが、あれだけでもゴブリンレベルのスタンピードくらいなら軽く殲滅できるからな!」
「もちろんです。至上なるユーファネート様の御身に危険が及ばない限りは使いません。ただし、危険だと判断すればダンジョンごと消滅させます」
「おい! だからきのこのダンジョンだと言っているだろ! 相変わらずお前はおかし過ぎる! 絶対に使うなよ!」
セバスチャンとギュンターとのやり取りを眺めている希だが、湧き立つ心はきのこのダンジョンに向かっていた。「君☆(きみほし)」シリーズで、きのこのダンジョンが出てくるのは、ゲームの主人公がピンチになったときである。そしてきのこの魔物を討伐し、そしてレベルを上げて食材まで手にでき、ダンジョン内の魔物を枯渇させなければ恩恵を受け続ける事が出来る。
「最初のころは本当にきのこのダンジョンにはお世話になったからねー。それにしても、この世界はどのゲームなのかしら。1年も経つとスチル絵は覚えていても、ストーリーやイベントを忘れつつあるから本当に困る」
「どうかされましたか?」
「いえ、なにもないわ。出発しましょう」
希がユーファネートとだと自覚してから1年が経っており、最初の頃は細かな内容まで覚えていた「君☆(きみほし)」シリーズの内容も、徐々に記憶から薄れつつあった。それに気付いた希は慌てて記録を取り始めていたが、抜け落ちている情報もあった。
「まあ、深く考えても仕方ないわね。セバス。紅茶の用意をしてもらえるかしら」
「はい。すぐに」
さすがは侯爵家の馬車であると言えるほど、希が乗っている馬車は室内が広く、また魔道具を使って揺れる事がない特別仕様になっていた。ユーファネートの父親であるアルベリヒが「可愛いユーファが酔って、体調を悪くしたらどうする」との一言で作らせた、王国でも数台しかない逸品であった。
「なにかお考えのようでしたが?」
「ん? そうね。きのこのダンジョンを押さえたら、市民の食生活が豊かになるなと思って」
「さすがはユーファネート様。領民の食生活向上まで考えておられるなんて。本当に天使はここにいるのですね」
「お兄様じゃないけど言わせてもらうわ。ちょっとセバスおかしいわよ?」
目を輝かせながら紅茶を用意しているセバスチャンに思わずツッコむ希。そんな主人の姿を眩しそうに、また少し頬を赤らめつつ見るセバスチャン。呆れたようにため息を吐く希。そんな表情も素晴らしいと、いつものようにセバスチャンの幸せな時間はゆっくりと過ぎていくのだった。
◇□◇□◇□
「到着しました。お嬢様」
御者が希に声をかける。少しうたた寝をしていた希は目を覚ますと、ご苦労様と声をかける。そして改めて装備を確認して問題ないと頷くと馬車から降りた。きのこのダンジョンはライネワルト侯爵家の屋敷がある領都から7日ほど離れた場所にあり、父親のアルベリヒからもらった研究所からは3日ほどの場所であった。
「近くの町には寄らなかったの?」
「侯爵家の馬車が先触れも無しに到着するのは避けたいと思い、私が指示いたしました」
目の前のダンジョンを見上げながら素朴な疑問を投げかけた希に、セバスチャンが恭しく答える。この1年でセバスチャンは成長しており、執事長からも将来を期待される人材になっていた。少しばかりユーファネートへの忠誠心が振り切っているが、紅茶や剣術だけでなく、執事として必要な一通りの技術や、主人のスケジュール管理だけでなく、近隣の都市などへの対応も徐々に任されつつあった。
「まあ、セバスチャンがそういうならいいわ。でも、帰りは近くの町に寄るわよ。今後のきのこのダンジョンについての取り扱いを決めないとだめだから」
「かしこまりました。後で先触れを出しておきます」
そう希に伝えながら、セバスチャンが武器の確認を行う。希に手渡されたのは魔力を弾丸のように打ち出す武器であり、これもアルベリヒがユーファネートの為に王都で作らせた特別仕様の逸品であった。なんどか空に向かって試射を行い、問題ないと頷いた希が近くいた護衛の騎士に問いかける。
「お兄様は?」
「ギュンター様なら先に到着されており、ダンジョン内の広場でお待ちです」
「そうなの? それじゃあ、私たちも向かいましょう。あなたは馬車をお願いね」
目の前に大きな口を開いているきのこのダンジョンを見上げて、嬉しそうにすると希は、御者に留守番を頼み、そしてセバスチャンや護衛の騎士3人を連れてダンジョンに意気揚々と入っていくのだった。
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