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スキルの活用に気付く

第19話 防具の購入を検討する

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「ほれ。これなんかどうじゃ。これなら初心者向きじゃ」

 老人が持ってきたのはローブであり、かなり野暮ったい感じであった。見た目が残念な以外はしっかりと作られており、その点はユーフェも認めていたが購入する気にはなれなかった。

「防具としてはいいんですが、ちょっと……」

「なんじゃ。お前さんも見た目重視か」

 ユーフェの感想に老人が残念そうな顔になる。最近の冒険者は見た目にこだわり、防御を蔑ろにする者が多いとブツブツと言っている老人にユーフェは申し訳なさそうな顔になった。

「ごめんなさい。お金はあるので、もう少し可愛いのが欲しいんですけど」

「防具に可愛さを求めてどうすんじゃ。モンスターは可愛い服だからと言って加減はしてくれんぞ?」

「それは分かっているんですよ。だったら……1からデザインをしてもらうのは可能ですか?」

 ユーフェはそう言いながら、アイテムボックスからシルバーウルフファングの毛皮を取り出してカウンターの上に置いた。

 最初は興味なさげにバスケットをユーフェに渡して追い払おうとしていた老人だったが、毛皮を見ると目の色が変わる。

 そして毛皮を手に取ると隅々まで確認をする。

「おい、嬢ちゃん。これをどこで手に入れた? いや、どれだけ持ってる? 1枚って事はないよな。あるだけ出してみろ。全部買ってやる」

「え? ええ。本当にあるだけ出していいんですか? 物凄くありますよ。それにシルバーウルフファングは高価だと……」

「いいから出すんじゃ! 男に二言はない」

「本当に後悔しても知りませんよ?」

 そう答えながら次々とアイテムボックスからシルバーファングウルフの毛皮を取り出すユーフェに、最初は機嫌よくしていた老人だったが10枚を超えだした辺りで慌てて止めた。

「ちょっ! 待つんじゃ! 何枚持っておるんじゃ」

「え? 3000枚くらい?」

「さ……」

 絶句している老人に出せと言うから出したのに、なぜ怒るんだと非難がましい目を向けているユーフェに気まずそうに老人がそっぽを向く。

「5枚くらいでいいかの?」

「男に二言はないって……」

「そんな大量に持っているなんて思わんじゃろうが! 大体なんじゃ。どこから3000枚も手に入れたんじゃ」

 途方もない枚数を告げられた老人が、ジト目のユーフェに切れ気味に答える。確かにちょっと調子に乗ったと感じたユーフェは小さく舌を出しながら謝罪した。

「からかってごめんなさい。でも入手経路は秘密だから教えられないの」

「まあ、10枚売ってくれたらいいわい。入手経路も聞かん。じゃが、また欲しくなったら売ってくれんかの? 代わりに! お主が欲しい防具を作ろうじゃないか」

 入手経路の説明をしなくてもよく、また自分好みの防具を作ってくれるとの事でユーフェは機嫌良く老人との取引に応じる。

「そういえば名乗ってませんでしたね。私はユーフェって言います」

「儂の名前はドワイトじゃ。よろしくの嬢ちゃん」

「ユーフェですってば、おじいちゃん」

「がーはっはっ。言うじゃないか」

 ユーフェとドワイトはお互いに笑い合うと手を差し出すと固く握りあった。

「早速、話を聞かせてもらおうか。普段はどんな武器防具を使っておったんじゃ? 冒険者となるんじゃから、装備は持っておるんじゃろうが?」

「実は……武器と防具は持っているんだけど装備できなくて……」

「なんじゃ。レベルに見合った装備を用意せんかったのか? どれ見せてみい」

 ドワイトの言葉にユーフェはアイテムノックスから愛用の細身の剣と軽鎧を取り出して手渡した。

「これを使っていたんだけど……」

「は? お前さん。これを使いこなしておったんか?」

 受け取った瞬間にドワイトが震えだした。そんな様子を見ながらユーフェは首を傾げる。

「前は使ってたんですよ。でも今は装備出来なくて……」

「嘘じゃ! お前さんのレベルはいくつじゃ!?」

「え? レベル1ですけど?」

 ユーフェが首を傾げたまま答える。その仕草にドワイトは青すじを立てて怒鳴る。

「そんな訳あるか! この武器防具を装備しようとしたならレベル100は最低でも必要じゃぞ! 神の時代に使われていたと聞かされても納得出来る逸品じゃぞ!」

「えー。そんな凄くはないですよー。とりあえずこれは仕舞っておきますねー」

 ドワイトから勢いよく武器防具を奪い取ると、ユーフェは速攻でアイテムボックスに収納するのだった。
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