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情報を集めて愕然とする
第9話 門番との会話から街へ
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「じゃあ、お嬢ちゃん。名前を聞いても良いかな?」
「ユーフェと言います」
名前を名乗った健亮ことユーフェに、門番はしばらく無言で眺める。何事だろうかとしばらく門番と目を合わせていた健亮だが、何も聞かれない状態が続き時間だけが経過していく。
流石に何も言われず、じっと見られている事に訝しげな表情を浮かべたユーフェが門番に声をかけようとしたが、その前に笑みを浮かべた門番は頷来ながら懐から木札を取り出すとユーフェに手渡した。
「ほいよ。ユーフェちゃん。これは仮入場許可証だ。イワン達の証言とお嬢ちゃんの目に悪意が無いから許可証を渡す事にするよ」
「悪意が無いなんて分かるんですか?」
ユーフェの不思議そうな声に門番は軽やかに笑うと、孫娘に接するように目線を合わせて頭に手を置いた。
「ふふっ。門番さんには不思議な力があるんだよ。悪い奴はある程度分かるんだ。ユーフェちゃんみたいに透き通った目を見るのは久し振りだけどね」
「よく分からないけど入って良いんですよね?」
「ああ、もちろん。入場税はもらうけどね」
木札を受け取りながら確認するユーフェに門番は入場税を求めてきた。銅貨3枚はイワンが代表して支払い、ユーフェは門番に頭を下げると街に入る。
そんなユーフェの後ろ姿を門番はしばらく眺めていたが、入場を待っている列が増えているのを確認すると忙しそうに業務を続けながら小さく呟いた。
「あんな悪意のない目を持った子は初めて見たな。まるで生まれたての赤子みたいじゃないか。どこか高貴な生まれの令嬢なんだろうか? とりあえず領主様には報告が必要だな」
◇□ ◇□ ◇□
「あの門番が簡単に通すなんて珍しいよな」
「ああ。俺達の時は1時間くらいかかったよな」
「ライナルトが調子の良い事ばかりペラペラと喋るからだろ」
「お陰で今は仲良くなってて、ユーフェちゃんが入場する時に役に立ったからいいだろう!」
門番に手を振っているユーフェを眺めながらイワン達が話していた。その視線はユーフェに集中しており、見られている事に気付いたユーフェがコテンとの擬音が聞こえるように首を傾げる。
「どうかされましたか?」
可愛らしい仕草にイワン達は顔を赤らめながらユーフェに話しかける。門番の仕事は怪しい人物や荷物の確認であり、少しでも怪しいと感じると徹底的に調べるのである。
そう告げられたユーフェだが、あまりピンとこなかった。
「ちょっと無言で見られただけですよ?」
「だよなあ。それが不思議でさ。門番らしくなったんだよなー」
門番がユーフェを無言で眺めていた理由は、長年の経験で不審な動きをしないかの確認と、門番が【善悪判断】スキルを発動していたからである。
対象の人物が善悪どちら寄りかを色で見る事が出来るスキルであり、善性なら青、悪性なら赤になる。
「まあ、ユーフェちゃんが悪い子じゃないって分かったんだろう」
「そうだったら嬉しいですね」
夢だと思い込んでいるユーフェだが、一向に醒めない状態に不安感が少しずつ募っていたが、まだそこまで焦った感じではなかった。
「そうだ。入場税ありがとうございました。どうやって返したらいいですか?」
「うーん。ユーフェはここがどこか分かっていないだろう? 故郷ってどこなの? 身分証を作るのはギルドに登録すればいいけど働き口をどうするかだな」
借りたお金をどう返したらいいかとの問いかけにイワンが顎に手を当てながら考える。
「俺達とパーティーを組むのはレベル差があるから難しいだろ……って、そう言えばユーフェちゃんのレベルって幾つなの?」
「レベルってどうやって見るんですか?」
ライナルトの言葉に首を傾げながら確認するユーフェに、一同が『嘘だろう?』と言いたげな驚いた表情を浮かべていた。
「ユーフェと言います」
名前を名乗った健亮ことユーフェに、門番はしばらく無言で眺める。何事だろうかとしばらく門番と目を合わせていた健亮だが、何も聞かれない状態が続き時間だけが経過していく。
流石に何も言われず、じっと見られている事に訝しげな表情を浮かべたユーフェが門番に声をかけようとしたが、その前に笑みを浮かべた門番は頷来ながら懐から木札を取り出すとユーフェに手渡した。
「ほいよ。ユーフェちゃん。これは仮入場許可証だ。イワン達の証言とお嬢ちゃんの目に悪意が無いから許可証を渡す事にするよ」
「悪意が無いなんて分かるんですか?」
ユーフェの不思議そうな声に門番は軽やかに笑うと、孫娘に接するように目線を合わせて頭に手を置いた。
「ふふっ。門番さんには不思議な力があるんだよ。悪い奴はある程度分かるんだ。ユーフェちゃんみたいに透き通った目を見るのは久し振りだけどね」
「よく分からないけど入って良いんですよね?」
「ああ、もちろん。入場税はもらうけどね」
木札を受け取りながら確認するユーフェに門番は入場税を求めてきた。銅貨3枚はイワンが代表して支払い、ユーフェは門番に頭を下げると街に入る。
そんなユーフェの後ろ姿を門番はしばらく眺めていたが、入場を待っている列が増えているのを確認すると忙しそうに業務を続けながら小さく呟いた。
「あんな悪意のない目を持った子は初めて見たな。まるで生まれたての赤子みたいじゃないか。どこか高貴な生まれの令嬢なんだろうか? とりあえず領主様には報告が必要だな」
◇□ ◇□ ◇□
「あの門番が簡単に通すなんて珍しいよな」
「ああ。俺達の時は1時間くらいかかったよな」
「ライナルトが調子の良い事ばかりペラペラと喋るからだろ」
「お陰で今は仲良くなってて、ユーフェちゃんが入場する時に役に立ったからいいだろう!」
門番に手を振っているユーフェを眺めながらイワン達が話していた。その視線はユーフェに集中しており、見られている事に気付いたユーフェがコテンとの擬音が聞こえるように首を傾げる。
「どうかされましたか?」
可愛らしい仕草にイワン達は顔を赤らめながらユーフェに話しかける。門番の仕事は怪しい人物や荷物の確認であり、少しでも怪しいと感じると徹底的に調べるのである。
そう告げられたユーフェだが、あまりピンとこなかった。
「ちょっと無言で見られただけですよ?」
「だよなあ。それが不思議でさ。門番らしくなったんだよなー」
門番がユーフェを無言で眺めていた理由は、長年の経験で不審な動きをしないかの確認と、門番が【善悪判断】スキルを発動していたからである。
対象の人物が善悪どちら寄りかを色で見る事が出来るスキルであり、善性なら青、悪性なら赤になる。
「まあ、ユーフェちゃんが悪い子じゃないって分かったんだろう」
「そうだったら嬉しいですね」
夢だと思い込んでいるユーフェだが、一向に醒めない状態に不安感が少しずつ募っていたが、まだそこまで焦った感じではなかった。
「そうだ。入場税ありがとうございました。どうやって返したらいいですか?」
「うーん。ユーフェはここがどこか分かっていないだろう? 故郷ってどこなの? 身分証を作るのはギルドに登録すればいいけど働き口をどうするかだな」
借りたお金をどう返したらいいかとの問いかけにイワンが顎に手を当てながら考える。
「俺達とパーティーを組むのはレベル差があるから難しいだろ……って、そう言えばユーフェちゃんのレベルって幾つなの?」
「レベルってどうやって見るんですか?」
ライナルトの言葉に首を傾げながら確認するユーフェに、一同が『嘘だろう?』と言いたげな驚いた表情を浮かべていた。
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