3 / 26
プロローグ
第3話 席に戻って資料作成
しおりを挟む
席に戻った健亮だが、部長に呼び出しを受けたのは周知であり、何をしで貸したんだとの視線を向けられていた。
その視線に気づかないフリをしながら、引き継ぎ資料をどう作ろうかと悩んでいた健亮の席に同僚がやってくると声を掛けた。
「なあ加藤。部長に呼ばれてたみたいだけど、なにをやらかしたんだよ?」
「急に有給を取るようにと部長から指示されただけだよ。明日からだってさ」
「それで有給を取るのか? そんな事をされたら俺の仕事が滞って困るんだよ。でも部長命令なのか……。ちっ。だったら少なくとも俺の仕事は最低限やっておけよ。だいたいお前が引き受けた仕事だろう? 相手も待っているんだよ。中途半端な仕事をするなよ。とりあえず先方に出す提案書は午前中にくれ。後は俺がやっといてやるから。なんで俺がしないといけねえんだよ。ちっ。使えない奴だな」
自分が仕事を押し付けている事も忘れ、同僚が舌打ちをしながら去っていくのを眺めていた健亮だが、聞き耳を立てている他の同僚達の視線に気付いた。
一同も先ほどの同僚と同じように仕事を健亮に押し付けており、遅れたらどうしてくれるんだとの視線を向けていた。健亮は周囲の視線を振り払う様に頼まれている仕事の内、何件かを急ぎまとめてメールすると、引き継ぎ資料を作り始めた。
「……。ふー。なんとか終わったな」
昼休み返上で引き継ぎ資料を作成した健亮は、印刷した資料をチェックしながら本来、自分がすべき仕事が出来ていない事を思い知らされた。
「どれだけ他人の仕事をしてたって話だな……。これを部長に送信してと……」
「あ、いたいた。健亮さん。会議室に来てもらっていいですか?」
引き継ぎ資料を確認していた健亮が部長宛にメールを送ったタイミングを見計らったように、背後から女性の声が聞こえた。
「ああ康子さんか。ひょっとしてヒアリング担当?」
「ええ、そうよ。同期の方が話しやすいでしょ? 私が立候補したのよ。感謝してよね」
健亮の問いかけに人事部に所属する同期の河合 康子が笑顔で答える。事情聴取される相手が同期である事にホッとしながら健亮は席を立った。
会議室に到着した健亮は仕事を請け負った関係者を河合に告げ、内容の説明もおこなった。
「……。と、まあこんな感じかな? 今、説明した内容は部長にもメールを送ってあるから」
「なんというか……。どんだけ仕事を引き受けているのよ。健亮さんお人好しすぎ。これだけ他人の仕事をしていたら、自分の仕事はなにも出来ないじゃない。今まではどうしてたのよ?」
「ほら、あれだよ。休日対応とか家に持って帰ってとか。みんなやっているから大丈夫だと思ったんだよ」
「それにしても限度はあるし、休日出勤も残業も上司の許可は必要だからね。そこは分かっているの?」
「うっ。それを言われるとつらい……」
無許可で仕事をしていた事を責められ思わず健亮は視線を逸らす。健亮が働いているのは大企業と呼ばれる会社であり、特に残業や休日出勤などについては厳しく管理されていた。
「そこは反省してもらいます。人事部でも問題になっているからね。タイムカードを押した後のサービス残業は今後一切禁止よ。今回は事情が事情だから情状酌量の余地があると部内ではなったけど、もうやっちゃ駄目だからね」
「もうやらないよ。また部長に呼び出されるのは勘弁して欲しいからな」
人差し指を立てながら説明をする河合の受けた健亮はバツが悪そうにしながら謝罪するのだった。
その視線に気づかないフリをしながら、引き継ぎ資料をどう作ろうかと悩んでいた健亮の席に同僚がやってくると声を掛けた。
「なあ加藤。部長に呼ばれてたみたいだけど、なにをやらかしたんだよ?」
「急に有給を取るようにと部長から指示されただけだよ。明日からだってさ」
「それで有給を取るのか? そんな事をされたら俺の仕事が滞って困るんだよ。でも部長命令なのか……。ちっ。だったら少なくとも俺の仕事は最低限やっておけよ。だいたいお前が引き受けた仕事だろう? 相手も待っているんだよ。中途半端な仕事をするなよ。とりあえず先方に出す提案書は午前中にくれ。後は俺がやっといてやるから。なんで俺がしないといけねえんだよ。ちっ。使えない奴だな」
自分が仕事を押し付けている事も忘れ、同僚が舌打ちをしながら去っていくのを眺めていた健亮だが、聞き耳を立てている他の同僚達の視線に気付いた。
一同も先ほどの同僚と同じように仕事を健亮に押し付けており、遅れたらどうしてくれるんだとの視線を向けていた。健亮は周囲の視線を振り払う様に頼まれている仕事の内、何件かを急ぎまとめてメールすると、引き継ぎ資料を作り始めた。
「……。ふー。なんとか終わったな」
昼休み返上で引き継ぎ資料を作成した健亮は、印刷した資料をチェックしながら本来、自分がすべき仕事が出来ていない事を思い知らされた。
「どれだけ他人の仕事をしてたって話だな……。これを部長に送信してと……」
「あ、いたいた。健亮さん。会議室に来てもらっていいですか?」
引き継ぎ資料を確認していた健亮が部長宛にメールを送ったタイミングを見計らったように、背後から女性の声が聞こえた。
「ああ康子さんか。ひょっとしてヒアリング担当?」
「ええ、そうよ。同期の方が話しやすいでしょ? 私が立候補したのよ。感謝してよね」
健亮の問いかけに人事部に所属する同期の河合 康子が笑顔で答える。事情聴取される相手が同期である事にホッとしながら健亮は席を立った。
会議室に到着した健亮は仕事を請け負った関係者を河合に告げ、内容の説明もおこなった。
「……。と、まあこんな感じかな? 今、説明した内容は部長にもメールを送ってあるから」
「なんというか……。どんだけ仕事を引き受けているのよ。健亮さんお人好しすぎ。これだけ他人の仕事をしていたら、自分の仕事はなにも出来ないじゃない。今まではどうしてたのよ?」
「ほら、あれだよ。休日対応とか家に持って帰ってとか。みんなやっているから大丈夫だと思ったんだよ」
「それにしても限度はあるし、休日出勤も残業も上司の許可は必要だからね。そこは分かっているの?」
「うっ。それを言われるとつらい……」
無許可で仕事をしていた事を責められ思わず健亮は視線を逸らす。健亮が働いているのは大企業と呼ばれる会社であり、特に残業や休日出勤などについては厳しく管理されていた。
「そこは反省してもらいます。人事部でも問題になっているからね。タイムカードを押した後のサービス残業は今後一切禁止よ。今回は事情が事情だから情状酌量の余地があると部内ではなったけど、もうやっちゃ駄目だからね」
「もうやらないよ。また部長に呼び出されるのは勘弁して欲しいからな」
人差し指を立てながら説明をする河合の受けた健亮はバツが悪そうにしながら謝罪するのだった。
1
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
こちらの世界でも図太く生きていきます
柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!?
若返って異世界デビュー。
がんばって生きていこうと思います。
のんびり更新になる予定。
気長にお付き合いいただけると幸いです。
★加筆修正中★
なろう様にも掲載しています。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる