すれ違い夫夫は発情期にしか素直になれない

和泉臨音

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本編

24話

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 レオンはユーグリッドと結婚してから過ごしたいつもの発情期と同じように、伴侶の衣服をもっさり持って、伴侶のベッドに積み上げていく。

 いつもよりはちょっと大きめに、と思えば普段は使わない洗濯済みの衣服までかき集めてしまった。
 怒られるだろうか……とレオンの巣作りをニコニコと見守っているユーグリッドに視線を向ければ、変わらずニコニコしているので大丈夫そうだ。

 満足いく巣が出来上がれば、レオンはいつも通りに全裸になる。

「……なっ」
「ユーグリッド様も脱いで……その服もください」

 緩く勃ち上がった陰茎も、火照り始めて色付く肌も惜しげもなくさらしながら、レオンはユーグリッドの傍まで行くと袖を引く。
 艶姿に息を飲みつつも、ユーグリッドは言われた通りに衣服を脱いでレオンに手渡す。発情期の時は大胆になることは判っていたが、ここまで違うのかとユーグリッドは驚愕と共に自分が昂っていくのを感じる。

 すでにバキバキに勃ち上がっているユーグリッドの陰茎をうっとりとレオンは見つめつつも、渡された服を片手に、もう片手で顔だけでなく肉体までも美しいユーグリッドの手を取り、巣へ誘う。

「やっと、完成した……」

 二人で巣に入ればレオンは崩れた部分を丁寧に積み直した後、ユーグリッドの逞しい身体に抱き付く。

 どれだけこの時を、この巣の中に番と入る日を夢見たことか。
 いろんな感情がごちゃ混ぜになって、ぐずぐずと泣き始めたレオンをあやすようにユーグリッドは抱きしめ返すと背中を優しく撫でる。

「あまり泣かないでくれ……また乗り込まれると面倒だ」

 思わず苦い記憶をユーグリッドは思い出してしまう。その呟きにレオンは堪えきれずにユーグリッドの唇に噛みつくようなキスをした。

「今は……俺だけ、俺だけ見て、ユーグリッドさま」

 友人に心配をかけた自分が悪いとレオンも判ってはいるが、ユーグリッドが自分以外のことを考えているのが嫌だった。

(いつもならこのくらぃ……がまん、できるのに)

 あれから発情期以外でもユーグリッドと肌を合わせるようになったけど、やはり発情期が一番素直になれるとレオンは実感していた。
 欲望のままに足を絡め、熱を欲しがり、卑猥な言葉で強請り、ユーグリッドを独占する。

「ああ、もちろん。可愛いレオン」
「んっ……」

 ちゅっちゅっと啄ばむようにキスをして、いい匂いに包まれて思考も身体も溶けていく。

(あぁそぅだ……いまなら、言える……)

「あ、あの……俺、こども……産みたぃ……だめ、ですか?」
「……?? えっ??!」
「ユーグリッドさまと俺の子ども……欲しぃ、です」

 発情期なら素直になれる。レオンは普段出来ないおねだりも素直に出来る。
 それはレオンとユーグリッドの共通認識だった。

 トロンと熱に浮かされていても、意を決したようにまっすぐ見つめてくるレオンの瞳にユーグリッドは唾を飲む。

「嫌じゃ、ないのか?」

 レオンはこくっと小さく頷く。

「だいしゅきなユーグリッドさまの子なら、産みたぃ」

 ほわりと幸せそうに微笑んだレオンに、ユーグリッドの理性は溶けて消えた。
 普段でも発情期は激しく求めあっていたが今回は更に容赦なく、最初の二日は水を飲むのも忘れ、眩暈を感じたユーグリッドが危機感を感じたほどだった。

「はっ、ぁんっ、あっ、あっ……ゆーぐ、さま……もっと、もっと欲しぃ……ひぅっ!!」
「かわいい、かわいい……オレのレオンっ! んっ、いっぱいオレの愛を感じてくれっ」
「……あぁあああぁっ!!!!!」
 
 乱れ狂うのはΩとしての本能なのだと判ってはいるけれど。

 自分の痴態をユーグリッドの記憶から消してしまいたいと、羞恥でレオンが思うのはこの発情期の一週間が終わった後の事である。


 ~おわり~
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