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それでも「好き」が止まらない
6.「理由、言うまで離さねぇからな」
しおりを挟む「えっと、それはどういう……」
各務くんの独り言に思わず反応してしまう。
「あぁ? おれたち恋人だろ?!」
「いやいやそこじゃなくって、失敗って」
「あー……だから、あんたは見てないと危なっかしいっていうか、背負わなくていい苦労背負うから、その、なんだ……飯も食べてるか心配つうか、いや、子どもじゃないし、平気なのはわかってるんだけど…」
各務くんは照れ隠しなのか自分の髪の毛をぐしゃぐしゃにしつつ、ボソボソと話す。つまり今まで一緒に食事をしてたのは、俺がまともなものを食べてるか確認してたってこと? そこまで俺は気遣われてたのか?
呆然とする俺に気付くと各務くんは慌てたように言葉を続ける。
「あ、いや、別にそれだけで会ってたわけじゃねぇからな。普通に一緒にいたかった、し」
各務くんは、本当に優しくていい子だ。
背負わなくていい苦労を背負うのはむしろ各務くんの方じゃないだろうか。
「ありがとう、心配してくれて……ははっ、嬉しい」
本当はこんな風に思っちゃ駄目なんだろうけど、気遣われていたのが、すごく嬉しい。
なんだろう、好かれてるなって感じるというか。うん、俺への愛をとても感じる。
年下の恋人に心配をかけるなんて俺はなんて駄目な大人なんだろう。そんな風に思うのに。嬉しくて、各務くんが好きだなぁって気持ちが溢れてくる。
「っ!? おい、なんで泣いてんだよっ!」
「へ……?」
先程まで恥ずかしげにボソボソと話していた各務くんが弾かれたように顔をあげると、俺の両肩を掴んだ。
言われてみれば確かに目から水が流れ落ちている気がする。なんか、嬉しくて、安心して……。
いつの間にか寂しいで埋め尽くされていた心が嬉しいって気持ちに全部塗り替えられていく。
こんな時に泣くなんて情けないが、俺の意志に反して目から流れる水は止まらなかった。
「ぐずっ、ああ、えっと……これはその、キャベツが目に染みたのかも…」
なので誤魔化そうと言い訳をしてみる。なけなしの大人の矜持だ。
「………。理由、言うまで離さねぇからな」
取り繕うべく再びへらりと笑ってみたが、各務くんには通用しなかった。明らかに目の座った各務くんに抱擁というよりは犯人確保の勢いで俺は抱きしめられ、身柄を拘束された。
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