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ちゃんと「好き」だと伝えたい
6.「これなら見えないから」
しおりを挟む夜の海岸だからか周りには人は居ない。
「……デート、誘ってくれて嬉しかった」
ボソリと各務くんのくぐもった声が聞こえる。そろりと視線だけで見ればこちらを見ている各務くんと目があってしまった。
ドクンと心臓が馬鹿みたいに大きく脈打つ。暗いとはいえ街燈の灯りが届かない距離ではない。
真面目な顔の各務くんにドキドキする。あまりに鼓動が早くなりすぎて逃げ出したい気持ちに襲われるが、ぐっと堪える。大人なんだからと以前言われてしまったし、たしかに俺は各務くんに比べればだいぶ大人だ。余裕を持って対応すべきであることくらいは判る。判るんだけど……。
「ぐ、ごめん。あんまり見ないで」
なぜか判らないが物凄い羞恥に襲われた俺は、繋いでいない手で己の顔を隠す。何だこれなんだコレ何だコレ。
よくわからないパニックになっていれば繋いでいた手を引かれ、よろけた俺は各務くんに抱き留められた。
「ごめっ……」
「これなら見えないから」
慌てて離れようとした俺の背中に各務くんの腕が回されしっかりと抱き寄せられた。
たしかにこれなら近すぎてお互いの顔とか全く見るとこは出来ない。俺と各務くんの身長はさほど変わらず彼のほうが数cm大きいだけだ。
だから密着するように抱きしめられれば俺の顔は各務くんの肩辺りに乗ることになる。しっかり抱きしめられるとTシャツ越しに各務くんの体温を感じた。蒸し暑い気温も相まって抱きしめられると汗をかきそうなほど暑い。いやもうすでに汗はかいている。体も顔も熱い。だというのに、俺も空いてる手をそっと各務くんの背に回した。
一瞬だったのか数分経ったのか全くわからなかったけど、駅の方から人がやってくる声が聞こえた。思わず俺も各務くんもビクッと肩を震わせる。急いで離れようとしたが、背に回った各務くんの腕がぎゅっと抱きしめてきた。
「か、各務くん、人が来るよ??」
「べつに……いい」
そう言うと俺の肩に各務くんの額が乗るのを感じる。
たしかにここで知り合いに会う確率は低いから、見られても問題ないのかもしれないが。このままだと俺の心臓が爆発しそうだ。
「デート」
「え?」
「次、どこいく?」
耳元で囁くように問われ、俺は思わず「ヒィッ」と変な声を出してしまった。
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