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ちゃんと「好き」だと伝えたい
5.「……なぁ、まだ時間平気?」
しおりを挟むお土産を見つつまだ行っていなかった施設を見ていれば、気付けば結構な時間が経っていた。夕暮れになりパーク内には明かりが灯る。海の水面に光が反射して、ただの街燈なのに不思議と綺麗に見えた。
子ども連れの姿はすでになく、見渡せばカップルの姿がやたらと目につく。
「あと何かやりたいことある?」
売店で買ったコーヒーを飲みつつ、ベンチに腰掛けぼんやり海を眺めていた俺に各務くんが声をかけた。
「いやもう満足しました。楽しかった。各務くんは? あの大きなイルカのぬいぐるみ本当に要らない? 今ならまだ戻れるよ?」
「要らねえよ」
同じくコーヒーを飲みつつ隣に座る各務くんが嫌そうに答える。欲しそうに見てたと思ったんだけどな。今日一日一緒にいて、各務くんは絶対にイルカを気に入ったと確信している。いつも睨んでいるような視線の多い各務くんの目力が緩み、イルカをキラキラとした少年のような瞳で見てた。可愛かった。
色々出来たのも楽しかったけど、なにより普段見られない各務くんを見ることが出来て大満足である。俺が思わずニヤけていれば各務くんに睨まれた。
これ以上は本気で嫌われそうなので、俺は顔の筋肉を総動員して思わず笑顔になってしまいそうになるのを堪える。
「……なぁ、まだ時間平気?」
「うん、大丈夫だよ。8時に出ればバイトの時間には間に合うし」
「バイト?」
「? 各務くん今日コンビニでしょ?」
俺が答えれば各務くんが目をパチクリと瞬かせる。
「……おれじゃなくて、あんたの予定を聞いたんだけど」
「え、あ、そうなのか。俺は全然大丈夫だよ」
俺の答えを聞けば各務くんは立ち上がると駅へ向かって歩く。どこか他に行きたい場所があるのかと思い着いていけば、駅を通り過ぎて小島であるテーマパーク全体が見える対面の海岸へ向かっていた。
「わあ、綺麗」
海岸からはテーマパークの明かりだけでなく、対岸に見える明かりが暗い海面に反射して煌めいていた。すっかり暗くなった夜空にはいつもよりもずっと星が見える。
左手にふと熱を感じでビクッと肩を揺らしてしまったが、各務くんの意図を察した俺はそっと各務くんの手を握った。
水族館の中では涼しくて感じなかったが、今日は蒸し暑い。いつの間にか手の平にも汗をかいていてしっとりとしている。多分間違いなく俺の手だけでなく各務くんの手も汗ばんでいるのだろう。不快に感じそうなのに不思議なことに汗の感触も心地良かった。
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