まさか「好き」とは思うまい

和泉臨音

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まさか「好き」とは思うまい

8.「……聞こえてんのかよ」

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「……まじ、キモイんだけど」

 ぼそりと呟かれて、あれ? と思う。

「ごめん、えっと、嫌だったこういうの?」
「は? なんで?」
「今、キモイって言ってたから」

 差し出した包みをしまうべきか悩んだけど、チョコには罪はないし。
 悩みつつ各務くんを見れば睨まれた。

「……聞こえてんのかよ」
「え? 聞こえてないと思ってたの??」
「あんた、耳遠いじゃん」
「そんなことないよ。いつも俺の事、ウザいとかキモイとか言ってたの聞こえてたよ?」
「は? なんで? 財布の時ぜんぜん気付かなかっただろ」
「あれはちょっとぼーっとしてたから……」
「ていうか、ウザいとか言ってる奴と飯食ってんの……え? なんで?」
「そう、なるね。あ、でもなんていうか、挨拶なのかなって思ってたからあんまり気にならないっていうか……えっと、ごめん」

 嫌われてんの解ってんなら来るなって事だよね。確かにごもっともだ。

「えっと、俺帰るね。今日はご馳走様。片付けとかしないでごめんね」

 久しぶりに仕事関係以外で食事ができるからって、確かに浮かれてた。各務くんとの約束と、仕事の区切りが同じだから、なんかもうその日ばかり待ち遠しくて。
 そうだよな。俺の方が大人なんだし、ちゃんと気を使うべきだった。

「は? ちょっと待てって!」
「え? あ? ごめん。片付けてった方がいい?」
「いや、そうじゃなくて………………その、ごめん……なさい」

 荷物を持って立ち上がりかけたら、鞄を掴まれ制止された。

「えっと……え?」
「聞こえてるとは……思ってなくて……」
「うん、俺も嫌われてるって判ってるなら来るなって話だし、ほんとごめんね」
「は? ちげぇよ」
「えっと、お礼はこれで大丈夫だからね。美味しかったし」
「だから、そうじゃなくて……とにかく座れ」
「あ、はい」

 思いっきり睨まれたので俺は大人しく元の場所に座る。思わず正座した。
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