上 下
7 / 50
まさか「好き」とは思うまい

7.「あんたと一緒のでいい」

しおりを挟む

 各務くんと約束の日はバレンタインだったので、職場で貰ったチョコをお裾分けしようと持参した。頑張っていた俺になんだかみんな気を使ってくれたらしく、六個も貰ってしまったからだ。
 もし食べないっていうなら持って帰ればいいし。
 約束の時間にコンビニの前で立っていれば、中から各務くんが出て来た。

「あれ? そういえば今日バイトの日じゃないの?」
「変わってもらった。飯、うちでいい?」
「いいよ。あ、それなら何か買ってく? 飲み物とか」
「は? 俺がおごるんだけど?」
「え? 飲み物はいいよ、ご飯だけ食べさせて。お酒でいい?」
「あんたと一緒のでいい」
「あはは、何買うかバレてるよね。……って、あ? そうだ、歳いくつ?」
「二十歳」
「じゃあ飲めるね。適当に買ってから家行くよ」
「……チッ、わかった」

 なんだか久々に不良店員くんって呼んでた時代の舌打ちを聞いて、思わず笑ってしまう。
 俺はいつもの缶チューハイとビールと適当に買って各務くんの家へ向かった。コンビニが近いと買い足しも楽でいいな。
 「ゆかり荘」は古い建物だけど、中はまあまあ広かった。四畳半にキッチンがついててその奥に六畳間がある。俺の住んでる1Kより広い。
 四畳半に小さなテーブルがあって、その上にコンロと鍋が乗っていた。

「懐かしいな、大学生ってこういう感じだよね」
「勝手に先輩が置いてった」
「あはは、溜まり場確定だ」

 冷蔵庫も勝手に開けていいと言うので買ってきたチューハイとか出し入れして、鍋を食べた。ご飯も炊いてあった。ちゃんと食事してんだな、偉い。
 そういえばテレビが部屋になくて不便じゃないか聞いたら、パソコンで見るから要らねぇと言われて今どきはそうなのか?? と驚いた。
 あと各務くんは俺と同じ大学に通ってた。学部も違うし、学科もなんだかんだと変わっているから同じ先生に習ってはいなかったけど、学食のメニューは変わってなくて、積極的には会話をしてくれないが各務くんと話すのは楽しかった。

「あ、そうだ甘いもの好き?」
「……ふつう」
「じゃあ、チョコあげるね。職場で今年結構もらってさ。あ、もしかしてきみも結構貰ってたりする?」
「もらわねぇよ」
「そっか。はいどうぞ」

 俺は鞄からチョコの赤い包みを取り出せば各務くんへ差し出した。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

眠るライオン起こすことなかれ

鶴機 亀輔
BL
アンチ王道たちが痛い目(?)に合います。 ケンカ両成敗! 平凡風紀副委員長×天然生徒会補佐 前提の天然総受け

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

魔術師の卵は憧れの騎士に告白したい

朏猫(ミカヅキネコ)
BL
魔術学院に通うクーノは小さい頃助けてくれた騎士ザイハムに恋をしている。毎年バレンタインの日にチョコを渡しているものの、ザイハムは「いまだにお礼なんて律儀な子だな」としか思っていない。ザイハムの弟で重度のブラコンでもあるファルスの邪魔を躱しながら、今年は別の想いも胸にチョコを渡そうと考えるクーノだが……。 [名家の騎士×魔術師の卵 / BL]

多分前世から続いているふたりの追いかけっこ

雨宮里玖
BL
執着ヤバめの美形攻め×絆されノンケ受け 《あらすじ》 高校に入って初日から桐野がやたらと蒼井に迫ってくる。うわ、こいつヤバい奴だ。関わってはいけないと蒼井は逃げる——。 桐野柊(17)高校三年生。風紀委員。芸能人。 蒼井(15)高校一年生。あだ名『アオ』。

花いちもんめ

月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。 ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。 大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。 涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。 「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

目標、それは

mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。 今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?

アルファとアルファの結婚準備

金剛@キット
BL
名家、鳥羽家の分家出身のアルファ十和(トワ)は、憧れのアルファ鳥羽家当主の冬騎(トウキ)に命令され… 十和は豊富な経験をいかし、結婚まじかの冬騎の息子、榛那(ハルナ)に男性オメガの抱き方を指導する。  😏ユルユル設定のオメガバースです。 

処理中です...