魔王の花嫁の護衛の俺が何故か花嫁代理になった経緯について

和泉臨音

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第四章

115話

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 好きな人から「好きなのか?」と聞かれて、どう返事するのが正しいんだろうか?
 いや、好きですって答えればいいんだろうけど。そもそもこの「好き」ってどういう意味で聞かれてるんだ?
 あ、俺が好きって言ったからか??

 俺は思考をぐるぐるさせつつも、身体は硬直する。
 固まった俺を辛抱強くオルトゥス王が見つめたまま、答えを待つ。
 
 赤い瞳がうっすらと光った気がした。早く答えろってことか? わかんないけど、妙なプレッシャーがかかる。

 自慢じゃないが俺はいままで色恋沙汰は全くの無縁だった。女の子を可愛いと思ったことはあるけど、告白したり恋人になることもなくて、日々鍛錬に明け暮れ、強くなることだけ目指してた。
 それもこれもオルトゥス王を守りたいっていう壮大な夢があったからだ。

「うっ……」

 俺が言いよどんでいると、オルトゥス王が俺の頭に手をのせて耳も一緒に撫でてくる。

「私がサテンドラだと分かったから、怖くないの?」
「いや、サテンドラって知る前から怖くない……っていうか、怖かったと言えば怖かったけど、それは、あの、嫌われるのが怖いっていうか……」

 じわじわと頬が赤くなるのが判る。さすさすと耳の根元を撫でられるのが気持ちいい。

「嫌われたくないか、それじゃまるで……。いや、ちゃんと確認するか。カデルの好きってどういう気持ち?」

 は? どういう、と言われても困るけど。

「オルトゥス王の傍に居たくて、サテンドラとは離れたくないって思って……」

 まあ、つまりどっちも一緒に居たいって事なんだけど。俺はうーうー唸りつつ、優しい王の手に撫でまわされる。

「ねえ、キスしてもいい?」

 は????
 俺は再び硬直する。

「な?! は? へ???? なんで??」
「昔、ティシウスに気持ちを確かめるのにキスは手っ取り早い方法だ、って聞いたんだ」
「はぁ???」
「……しても良さそうだね」

 そういうとオルトゥス王は俺の髪に、額に、頬に、鼻の頭に啄ばむようにキスしてきて、思わず俺は身を引いた。
 むずむずする。恥ずかしくって逃げ出したい! それにこの流れだと、絶対、口にもするだろこれ!!

「お、俺はしていいって言ってない!! だいたいオルトゥス王はアルトレスト伯爵と恋人なんじゃないのかよ?!」

 逃れようと身体を離したはずなのに、気付けばオルトゥス王の腕の中にいた。俺を包む布団、じゃなくてオルトゥス王が小刻みに震えている。

 一瞬泣いているのではとドキッとしたが、よくよく見れば肩を震わせて笑っていた。

「私とティシウス、が?……ふふっ、カデルの勘違いは面白い、ね、ふふ」
「だ、だってこの間、アルトレスト伯爵が浮気しかけたから止めたんじゃ…」
「ああ、あれは私がサテンドラだって君にバラそうとしたから止めただけだよ」

 ふふふっといまだ小刻みに身体を揺らし笑いながら、涙目で俺に微笑みかける。

「もし私がティシウスの恋人なら、そもそもあんな自由にさせないし、カデルのことを消し炭にしているよ」

 楽しそうに微笑むオルトゥス王の姿に、先ほどまでの苦笑よりは全然こっちの方がいいなと思ったけど、言ってる事が結構不穏だ。

「私がカデルの事を好きだと言えば、このまま続けても?」

 み、耳元で囁かないで欲しい!! 思わずびくっと身体が反応してしまった。抱きしめられているし、絶対に今の気付かれてる。
 恥ずかしくなって、頬が熱くなる。俺の顔、もはや茹だって湯気とか出てるんじゃないだろうか。

 確かにキスとかしたらどういう好きなのかってわかりやすい、とは思う。いくら顔が良くてもアルトレスト伯爵との行為は恐怖と嫌悪が勝った。

 今のところ、オルトゥス王…サテンドラとのキスは大丈夫そうだ。ただ、赤い瞳が見つめて優しく微笑まれると心臓がきゅってなるし、息が止まりそうだけど。

 俺が覚悟を決めて目を閉じれば、ふっとオルトゥス王が小さく笑った後、そっと唇に暖かいモノが触れた。
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