123 / 130
第四章
115話
しおりを挟む好きな人から「好きなのか?」と聞かれて、どう返事するのが正しいんだろうか?
いや、好きですって答えればいいんだろうけど。そもそもこの「好き」ってどういう意味で聞かれてるんだ?
あ、俺が好きって言ったからか??
俺は思考をぐるぐるさせつつも、身体は硬直する。
固まった俺を辛抱強くオルトゥス王が見つめたまま、答えを待つ。
赤い瞳がうっすらと光った気がした。早く答えろってことか? わかんないけど、妙なプレッシャーがかかる。
自慢じゃないが俺はいままで色恋沙汰は全くの無縁だった。女の子を可愛いと思ったことはあるけど、告白したり恋人になることもなくて、日々鍛錬に明け暮れ、強くなることだけ目指してた。
それもこれもオルトゥス王を守りたいっていう壮大な夢があったからだ。
「うっ……」
俺が言いよどんでいると、オルトゥス王が俺の頭に手をのせて耳も一緒に撫でてくる。
「私がサテンドラだと分かったから、怖くないの?」
「いや、サテンドラって知る前から怖くない……っていうか、怖かったと言えば怖かったけど、それは、あの、嫌われるのが怖いっていうか……」
じわじわと頬が赤くなるのが判る。さすさすと耳の根元を撫でられるのが気持ちいい。
「嫌われたくないか、それじゃまるで……。いや、ちゃんと確認するか。カデルの好きってどういう気持ち?」
は? どういう、と言われても困るけど。
「オルトゥス王の傍に居たくて、サテンドラとは離れたくないって思って……」
まあ、つまりどっちも一緒に居たいって事なんだけど。俺はうーうー唸りつつ、優しい王の手に撫でまわされる。
「ねえ、キスしてもいい?」
は????
俺は再び硬直する。
「な?! は? へ???? なんで??」
「昔、ティシウスに気持ちを確かめるのにキスは手っ取り早い方法だ、って聞いたんだ」
「はぁ???」
「……しても良さそうだね」
そういうとオルトゥス王は俺の髪に、額に、頬に、鼻の頭に啄ばむようにキスしてきて、思わず俺は身を引いた。
むずむずする。恥ずかしくって逃げ出したい! それにこの流れだと、絶対、口にもするだろこれ!!
「お、俺はしていいって言ってない!! だいたいオルトゥス王はアルトレスト伯爵と恋人なんじゃないのかよ?!」
逃れようと身体を離したはずなのに、気付けばオルトゥス王の腕の中にいた。俺を包む布団、じゃなくてオルトゥス王が小刻みに震えている。
一瞬泣いているのではとドキッとしたが、よくよく見れば肩を震わせて笑っていた。
「私とティシウス、が?……ふふっ、カデルの勘違いは面白い、ね、ふふ」
「だ、だってこの間、アルトレスト伯爵が浮気しかけたから止めたんじゃ…」
「ああ、あれは私がサテンドラだって君にバラそうとしたから止めただけだよ」
ふふふっといまだ小刻みに身体を揺らし笑いながら、涙目で俺に微笑みかける。
「もし私がティシウスの恋人なら、そもそもあんな自由にさせないし、カデルのことを消し炭にしているよ」
楽しそうに微笑むオルトゥス王の姿に、先ほどまでの苦笑よりは全然こっちの方がいいなと思ったけど、言ってる事が結構不穏だ。
「私がカデルの事を好きだと言えば、このまま続けても?」
み、耳元で囁かないで欲しい!! 思わずびくっと身体が反応してしまった。抱きしめられているし、絶対に今の気付かれてる。
恥ずかしくなって、頬が熱くなる。俺の顔、もはや茹だって湯気とか出てるんじゃないだろうか。
確かにキスとかしたらどういう好きなのかってわかりやすい、とは思う。いくら顔が良くてもアルトレスト伯爵との行為は恐怖と嫌悪が勝った。
今のところ、オルトゥス王…サテンドラとのキスは大丈夫そうだ。ただ、赤い瞳が見つめて優しく微笑まれると心臓がきゅってなるし、息が止まりそうだけど。
俺が覚悟を決めて目を閉じれば、ふっとオルトゥス王が小さく笑った後、そっと唇に暖かいモノが触れた。
10
お気に入りに追加
417
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王子なのに戦場の聖域で好き勝手ヤってたら獣人に飼われました
サクラギ
BL
戦場で共に戦う者たちを慰める場所、聖域がある。そこでは国も身分も関係なく集うことができた。
獣人と戦士が書きたいだけで始めました。独りよがりなお話をお許し下さいます方のみお進みください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
見捨てられ勇者はオーガに溺愛されて新妻になりました
おく
BL
目を覚ましたアーネストがいたのは自分たちパーティを壊滅に追い込んだ恐ろしいオーガの家だった。アーネストはなぜか白いエプロンに身を包んだオーガに朝食をふるまわれる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
みなしご白虎が獣人異世界でしあわせになるまで
キザキ ケイ
BL
親を亡くしたアルビノの小さなトラは、異世界へ渡った────……
気がつくと知らない場所にいた真っ白な子トラのタビトは、子ライオンのレグルスと出会い、彼が「獣人」であることを知る。
獣人はケモノとヒト両方の姿を持っていて、でも獣人は恐ろしい人間とは違うらしい。
故郷に帰りたいけれど、方法が分からず途方に暮れるタビトは、レグルスとふれあい、傷ついた心を癒やされながら共に成長していく。
しかし、珍しい見た目のタビトを狙うものが現れて────?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
聖獣王~アダムは甘い果実~
南方まいこ
BL
日々、慎ましく過ごすアダムの元に、神殿から助祭としての資格が送られてきた。神殿で登録を得た後、自分の町へ帰る際、乗り込んだ馬車が大規模の竜巻に巻き込まれ、アダムは越えてはいけない国境を越えてしまう。
アダムが目覚めると、そこはディガ王国と呼ばれる獣人が暮らす国だった。竜巻により上空から落ちて来たアダムは、ディガ王国を脅かす存在だと言われ処刑対象になるが、右手の刻印が聖天を示す文様だと気が付いた兵士が、この方は聖天様だと言い、聖獣王への貢ぎ物として捧げられる事になった。
竜巻に遭遇し偶然ここへ投げ出されたと、何度説明しても取り合ってもらえず。自分の家に帰りたいアダムは逃げ出そうとする。
※私の小説で「大人向け」のタグが表示されている場合、性描写が所々に散りばめられているということになります。タグのついてない小説は、その後の二人まで性描写はありません
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる