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第四章
114話
しおりを挟む「どこから話したものかな……」
オルトゥス王はベッドの縁に腰を下ろせば、ふと思案顔でつぶやいた。
うん、めちゃくちゃかっこいい!!! 伏せ目がちだと普段の威厳っていうかキツさが減って、こう、憂いがあるっていうか。
以前クリスティア姫と話した時は、オルトゥス王とエスカータが恋人というのは突拍子もないと思ったけど、今ならあり得るのではないかと思ってしまう。
実際、オルトゥス王は……サテンドラはアルトレスト伯爵と恋仲なんだろうしな。だから森の屋敷でアルトレスト伯爵は、サテンドラのハーブティーを褒めていたんだろう。
「カデル? 具合が悪くなった?」
「あ、いや、大丈夫。で、結局、サテンドラがオルトゥス王なの? 逆?」
俺は無意識に沈みかけていた気持ちを切り替えると、とりあえず一番気になることを確認した。
記憶の中の兄上は、王のことをどちらの名前でも呼んでいた。あの時はまだ「魔法師のサテンドラ」はヘルデに居なかったはずだ。
不思議なもので、やはりオルトゥス王の匂いや瞳や声や顔にはドキドキするけど、サテンドラだと思うと気が大きくなって、なんでも自然と話せそうな気がする。
「サテンドラはオルトゥスになる前の名前だよ。アエテルヌムを作って魔法の中心になった、今の私はオルトゥスだ」
「つまりサテンドラが魔法でオルトゥス王になって、その王がまた魔法でサテンドラのふりしてたってこと?」
「その認識であっているよ」
なるほど。それなら建国の時に生きていたリベルタースがサテンドラとオルトゥス王を知っていてもおかしくない。
オルトゥス王は建国で出来た魔法で登場した人物だもんな。
「ということは、本当の姿はサテンドラなのか…」
オルトゥス王の息を飲むまでの美麗さは、きっと以前アルトレスト伯爵が言っていた捕食するための容姿、なのだろう。
王は捕食はしないと思うけど、服従させるっていう魔法の性質から考えれば、見目がいいのはプラス要素だろうし。
「がっかりした?」
「え? いや別に」
うんうん唸りつつ考えを整理していれば、オルトゥス王が再び苦笑しつつ問いかけてきた。
確かにオルトゥス王の見た目は凄く好きだけど、声も好きだし、俺は兄上の亡くなったあの時に泣いていたおじさんに惚れたので、サテンドラの姿をしていても好きになったと思う。
見た目はそれほど関係ないと思うんだけど、俺の返事になぜかオルトゥス王が気落ちしている。
「やっぱりカデルには魅了も通じないのか……」
「んん?」
魔法が完璧じゃないのが悔しいのかな? 魔族の王がそんなことを? と今までなら思ったけど、サテンドラだと分かれば話は別だ。
俺が首を傾げれば、オルトゥス王が苦笑したまま答えた。
「私は服従の魔法と同じく魅了の魔法も使っているんだ。大体の魔族が私に好意的なのはその為だよ」
「あ、だからミードミーたちも」
俺の言葉に王が頷く。
「確かに俺は見た目がサテンドラでもオルトゥス王でも、どっちでも好きだなって思うから、魅了の魔法は効いてないと思う」
それってかなり凄い事なのでは? 魔眼の力ってやつなのかも。俺が自信満々に言えば、驚き見開かれたオルトゥス王の赤い瞳と目が合う。
「……え? 待って。カデルは、私のこと、好きなの?」
ポツリと呟いたオルトゥス王の声が、静かな部屋の中に響いた。
――… えっと、あ? あれ?
もしかして俺、どさくさ紛れに告白しちゃった、のか????!
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