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第二章
60話
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朝だ。
陽の光が差し込んできて眩しい。俺はぼーっとする頭で外から聞こえる鳥の声を聴くでもなく聞いていた。
「おい、カデル。そろそろ起きないと! アーニャちゃんの飯冷めてから食う事になるぞ?」
ネストが俺にそういうと、布団の上から俺の腹をポンポンと叩いた。ぼーっとする視界でそちらを見やれば、上着の前を開けたまま苦笑するネストが居た。ほぼ身支度は整っている感じだ。
やっぱりその服、ネストに似合うなぁと父さんたちが用意してくれた服を着たネストを見る。
「……カデル? 大丈夫か? 二日酔いかよ。水持ってくるか?」
ネストは動かない俺を怪訝に思ったのか、心配顔になりのぞき込んでくる。
「ネスト……?」
「うん?」
「!!!!!!!! ネスト!!!! お前大丈夫なのか??」
「うぉ! 危ねえ! 急に起きるなよ!!」
俺が勢いよく起き上がれば、ネストは絶妙なタイミングで身を引いて避ける。体を起こしたらぐらっと視界が揺れた。
「おいおい、大丈夫か。昨日の酒抜けてないとか、どんだけ弱いんだよ」
「酒……? なんの話?」
ベッドに上半身を起こして頭を押さえる俺に、ネストが水を持ってきてくれた。それよりも、どっちだった? 右手だったよな。
コップを持ってきたネストの腕はいつも通りだ。昨日、オルトゥス王に折られた怪我は治っている。
「何って、昨日の夜、飯のあとサロンでアルトレスト伯爵が持ってきた林檎酒のんだの覚えてないのか?」
「サロンで……?」
なん、の話だ??
「アルトレスト伯爵が最初果汁だとか言って持ってきて、それ信じたお前が飲んでぶっ倒れたんだよ」
俺はネストが持ってきた水を飲む。なんだ、それ? そんな事はしてない。いや、ネストの言ってる事が合っていて、俺の、この記憶が、夢なのか?
「とりあえず、顔洗って着替えろ。さすがにそろそろ下りないと姫様たちを待たせちまうぞ」
俺が無言でいるのは反省しているからだととらえたのか、ネストは慰めるように俺の頭を撫でて、自分の身支度に戻っていった。
……夢、だったのだろうか。メリー殿のこともネストのことも。
俺は飲み干したコップをサイドテーブルに置き、言われるまま身支度を開始する。
部屋の中は俺とネストしかおらず、応接用のテーブルには昨日俺たちが使ったお茶のカップは無い。
窓辺のデスクに戻されていたサテンドラが使った便箋にそれとなく触れる。
「やっぱり……夢じゃない……」
便箋にはかすかだが、昨日見た筆跡が残っていた。
陽の光が差し込んできて眩しい。俺はぼーっとする頭で外から聞こえる鳥の声を聴くでもなく聞いていた。
「おい、カデル。そろそろ起きないと! アーニャちゃんの飯冷めてから食う事になるぞ?」
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やっぱりその服、ネストに似合うなぁと父さんたちが用意してくれた服を着たネストを見る。
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ネストは動かない俺を怪訝に思ったのか、心配顔になりのぞき込んでくる。
「ネスト……?」
「うん?」
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俺が勢いよく起き上がれば、ネストは絶妙なタイミングで身を引いて避ける。体を起こしたらぐらっと視界が揺れた。
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「酒……? なんの話?」
ベッドに上半身を起こして頭を押さえる俺に、ネストが水を持ってきてくれた。それよりも、どっちだった? 右手だったよな。
コップを持ってきたネストの腕はいつも通りだ。昨日、オルトゥス王に折られた怪我は治っている。
「何って、昨日の夜、飯のあとサロンでアルトレスト伯爵が持ってきた林檎酒のんだの覚えてないのか?」
「サロンで……?」
なん、の話だ??
「アルトレスト伯爵が最初果汁だとか言って持ってきて、それ信じたお前が飲んでぶっ倒れたんだよ」
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「とりあえず、顔洗って着替えろ。さすがにそろそろ下りないと姫様たちを待たせちまうぞ」
俺が無言でいるのは反省しているからだととらえたのか、ネストは慰めるように俺の頭を撫でて、自分の身支度に戻っていった。
……夢、だったのだろうか。メリー殿のこともネストのことも。
俺は飲み干したコップをサイドテーブルに置き、言われるまま身支度を開始する。
部屋の中は俺とネストしかおらず、応接用のテーブルには昨日俺たちが使ったお茶のカップは無い。
窓辺のデスクに戻されていたサテンドラが使った便箋にそれとなく触れる。
「やっぱり……夢じゃない……」
便箋にはかすかだが、昨日見た筆跡が残っていた。
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