魔王の花嫁の護衛の俺が何故か花嫁代理になった経緯について

和泉臨音

文字の大きさ
上 下
64 / 130
第二章

60話

しおりを挟む
 朝だ。
 陽の光が差し込んできて眩しい。俺はぼーっとする頭で外から聞こえる鳥の声を聴くでもなく聞いていた。

「おい、カデル。そろそろ起きないと! アーニャちゃんの飯冷めてから食う事になるぞ?」

 ネストが俺にそういうと、布団の上から俺の腹をポンポンと叩いた。ぼーっとする視界でそちらを見やれば、上着の前を開けたまま苦笑するネストが居た。ほぼ身支度は整っている感じだ。
 やっぱりその服、ネストに似合うなぁと父さんたちが用意してくれた服を着たネストを見る。

「……カデル? 大丈夫か? 二日酔いかよ。水持ってくるか?」

 ネストは動かない俺を怪訝に思ったのか、心配顔になりのぞき込んでくる。

「ネスト……?」
「うん?」
「!!!!!!!! ネスト!!!! お前大丈夫なのか??」
「うぉ! 危ねえ! 急に起きるなよ!!」

 俺が勢いよく起き上がれば、ネストは絶妙なタイミングで身を引いて避ける。体を起こしたらぐらっと視界が揺れた。

「おいおい、大丈夫か。昨日の酒抜けてないとか、どんだけ弱いんだよ」
「酒……? なんの話?」

 ベッドに上半身を起こして頭を押さえる俺に、ネストが水を持ってきてくれた。それよりも、どっちだった? 右手だったよな。
 コップを持ってきたネストの腕はいつも通りだ。昨日、オルトゥス王に折られた怪我は治っている。

「何って、昨日の夜、飯のあとサロンでアルトレスト伯爵が持ってきた林檎酒のんだの覚えてないのか?」
「サロンで……?」

 なん、の話だ??

「アルトレスト伯爵が最初果汁ジュースだとか言って持ってきて、それ信じたお前が飲んでぶっ倒れたんだよ」

 俺はネストが持ってきた水を飲む。なんだ、それ? そんな事はしてない。いや、ネストの言ってる事が合っていて、俺の、この記憶が、夢なのか?

「とりあえず、顔洗って着替えろ。さすがにそろそろ下りないと姫様たちを待たせちまうぞ」

 俺が無言でいるのは反省しているからだととらえたのか、ネストは慰めるように俺の頭を撫でて、自分の身支度に戻っていった。

 ……夢、だったのだろうか。メリー殿のこともネストのことも。

 俺は飲み干したコップをサイドテーブルに置き、言われるまま身支度を開始する。
 部屋の中は俺とネストしかおらず、応接用のテーブルには昨日俺たちが使ったお茶のカップは無い。

 窓辺のデスクに戻されていたサテンドラが使った便箋にそれとなく触れる。

「やっぱり……夢じゃない……」

 便箋にはかすかだが、昨日見た筆跡が残っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。

やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。 昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと? 前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。 *ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。 *フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。 *男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。

王子なのに戦場の聖域で好き勝手ヤってたら獣人に飼われました

サクラギ
BL
戦場で共に戦う者たちを慰める場所、聖域がある。そこでは国も身分も関係なく集うことができた。 獣人と戦士が書きたいだけで始めました。独りよがりなお話をお許し下さいます方のみお進みください。

ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

見捨てられ勇者はオーガに溺愛されて新妻になりました

おく
BL
目を覚ましたアーネストがいたのは自分たちパーティを壊滅に追い込んだ恐ろしいオーガの家だった。アーネストはなぜか白いエプロンに身を包んだオーガに朝食をふるまわれる。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

みなしご白虎が獣人異世界でしあわせになるまで

キザキ ケイ
BL
親を亡くしたアルビノの小さなトラは、異世界へ渡った────…… 気がつくと知らない場所にいた真っ白な子トラのタビトは、子ライオンのレグルスと出会い、彼が「獣人」であることを知る。 獣人はケモノとヒト両方の姿を持っていて、でも獣人は恐ろしい人間とは違うらしい。 故郷に帰りたいけれど、方法が分からず途方に暮れるタビトは、レグルスとふれあい、傷ついた心を癒やされながら共に成長していく。 しかし、珍しい見た目のタビトを狙うものが現れて────?

聖獣王~アダムは甘い果実~

南方まいこ
BL
 日々、慎ましく過ごすアダムの元に、神殿から助祭としての資格が送られてきた。神殿で登録を得た後、自分の町へ帰る際、乗り込んだ馬車が大規模の竜巻に巻き込まれ、アダムは越えてはいけない国境を越えてしまう。  アダムが目覚めると、そこはディガ王国と呼ばれる獣人が暮らす国だった。竜巻により上空から落ちて来たアダムは、ディガ王国を脅かす存在だと言われ処刑対象になるが、右手の刻印が聖天を示す文様だと気が付いた兵士が、この方は聖天様だと言い、聖獣王への貢ぎ物として捧げられる事になった。  竜巻に遭遇し偶然ここへ投げ出されたと、何度説明しても取り合ってもらえず。自分の家に帰りたいアダムは逃げ出そうとする。 ※私の小説で「大人向け」のタグが表示されている場合、性描写が所々に散りばめられているということになります。タグのついてない小説は、その後の二人まで性描写はありません

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

処理中です...