オメガバα✕αBL漫画の邪魔者Ωに転生したはずなのに気付いた時には主人公αに求愛されてました

和泉臨音

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48 俺のすべきこと

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 あらためて整理してみよう。

 俺は就寝の準備を終えベッドに大の字で転がると、見慣れた天井の花々を見つめる。

 ヒューベリオン殿下には想い人が居る。これは間違いない。本人からも聞いたし、女王陛下も把握されていた。
 もし、その相手がオデット皇女なら問題なく結婚するだろうから皇女ではない。そもそも子どもが出来ない相手らしいからその点でも除外できる。

 殿下が俺に言った「障害」というのも、この子どもが出来ないってことなんだろう。
 ……でもどうにかなりそう、とも言っていたっけ。

「うーむ、どこかから養子をとる算段が出来そう……とか?」

 現在王族と認められてはいないが歴史をさかのぼれば王家の血を継いでいる貴族がいないわけでもない。
 その者に王位継承権を発生させるのは難しいけど、不可能ということもないのでその辺りの調整なんだろうか? だとすると女王陛下も一枚噛んで……はいないよなぁ。陛下も相手の名は聞いていないみたいだったし。

「殿下がアレスに想い人を教えたのは信頼してるのはもちろんだけど、反対されないから……?」

 俺や女王陛下に具体的に言わないのは、反対される相手だと分かっているからだろう。いやまあ相手が誰であろうと後継が作れない以上、陛下は立場上、反対するしか無い。

 俺には相談してくれてもいいと思うんだけど……信用されてないんだろうなぁ。

 それにしたって相手が本当にアレスじゃないなんてことあるんだろうか?
 性格は確かに多少難アリだと思うが実力も容姿も申し分ない。殿下のこれからの人生のパートナーとして最良だろう。分かりにくいが、さり気ない優しさも漫画のアレスと同じく持ち合わせているし、懐に入ってしまえばかなりだだ甘やかしのスパダリになるはずだ。殿下が惚れない理由がない。

「あ、でも……」

 漫画のヒューベリオンと俺の殿下は結構キャラが違う。
 漫画の殿下は繊細で張り詰めた雰囲気の完璧王子だった。太陽か月かで言えば月だし、昼か夜かで言えば夜、季節なら秋か冬っていうイメージだ。見た目も俺の殿下よりだいぶ細身で、笑顔も憂いを帯びていて心の底から笑ってる印象はない。それがアレスと関わり、次第にやわらかく変わっていくのが胸アツ展開なんだが……と話がそれた。
 とにかく漫画のヒューベリオンは俺が出会った頃の幼い殿下がそのまま成長した感じだった。あの偏食のまま育ったらそりゃ線も細くなるだろう。

 一方俺の殿下は昼間の太陽みたいな存在に成長した。さすがに真夏ほど熱血ではないが春から夏にかけての明るいイメージが似合う。王子としての外面の良い笑顔はあるが、親しい者と話す時は楽しそうに声を出して笑うこともあるし、胸板も厚くて腕とか足とかも騎士並みに太い。フィジカルもメンタルもこれから一国を背負うのに問題ないほど図太く立派に成長した。どこにお出ししても申し分ない完全無欠の王太子である。

 キャラ設定という点では俺もかなり変わっているが、惚れた相手は漫画の邪魔者ミルドリッヒと同じだ。
 だから殿下たちもてっきり同じ人を好きになっているのだと思ったけど……違うんだろうか。

「わからん」

 アレスの言う通り、俺が考えたところで正解はみつけられないだろう。
 ヒューベリオン殿下に聞くのが確実だ。

「でも、またはぐらかされたらなぁ……」

 それはそれでちょっとというかかなり凹む。俺は殿下の味方になれないと暗に言われているのだ。辛い。
 俺はベッドの上をゴロゴロと転がってから、サイドテーブルに置いてある殿下特製マッサージオイルの小瓶を手に取った。

 先日、嵐のように対策室にやってきたヒューベリオン殿下が置いていったものだ。というか、これを俺に渡すために立ち寄ったらしい。
「疲れたら使ってくれ」とそれだけいうとカインに引きづられて立ち去っていった。

 漫画のヒューベリオンではイメージできないが、俺の殿下らしいと言えばらしい姿である。殿下も懐に入れた相手には優しいので、親しい部下が多少ぞんざいな扱いをしてきても笑顔で許すし、たまに悪ノリもしている。

 そう言えば漫画のヒューベリオンは横柄な態度のアレスにかなり参っていた。他人から距離を詰められるのが苦手なんだろう。どうにか笑顔の仮面であしらっていたが、あまりのしつこさに堪忍袋の緒が切れて食って掛かったあとはちょっとずつ打ち解けて甘えていた。その後もまあまあツンデレ気味だった。
 俺の殿下ではちょっと想像できない姿だ。本気で嫌な相手には笑顔でのらりくらりと器用にあしらい遠ざけるし、場合によってはシュタインにしたようにおとしいれて排除することも躊躇ためらいなくするだろう。

 漫画のヒューベリオンのように真面目で一生懸命すぎて不器用で、思わず手を差し伸べたくなるような、それこそ俺と出会った頃の殿下のような子どもみたいなか弱さはない。

「……はぁ」

 俺は殿下から貰ったオイルを手に取ると両手に塗り込んでいく。
 ふわりと広がる甘いホットミルクの香りにほっと一息つく。

「ほんと……いい香り」

 ハンドクリームみたいに手に馴染ませて鼻に近寄せるとすーはーと大きく吸い込んだ。

「……ん?」

 リラックスしすぎたのか、殿下にマッサージしてもらってた時の感覚を思い出してしまったのか、なんだか急に下半身がムズムズとしてきた。

「……んー」

 俺はしばし考える。
 朝起きた時に汚れているのは嫌なので、処理するには処理するのだが……。

「ちょっと、だけ……」

 俺は服をくつろげると殿下の香りのするマッサージオイルを多めに手に取り、少し兆している男の象徴に触れる。

「ふ、ぅん……、これ、ヤバ」

 ヌルっとした感触が予想よりも粘度があって、自身の熱と相まって想像以上に熱い。

「あっ…あっ……」

 俺は更にオイルを腹にかけると右手はしごくのをやめず、左手で下腹部にオイルを塗りまくった。

 ぶわりとミルクの香りが濃くなって、高まる快感で頭がグラグラする。

 気持ちいい、気持ちいい、気持ちいいーっ!

 夢中になった俺はしばし行為にふけったのだった。

 気付けばはしたなく足を広げて尻穴までいじっていたわけだが……気持ちよかったのは殿下のオイルの匂いと前をいじったからで……消して後ろで感じたわけじゃない。

 そんな誰に言うでもない言い訳を延々と脳内でしながら俺は再び就寝の準備を整える。

 ヌイたからか少しばかりクリアになった思考が、殿下が誰を好きでも俺の行動は変わらないということに気づかせてくれた。

 そう、たとえヒューベリオン殿下が誰と添いたげたいとしても、今回の縁談は成功させない。
 ただそれだけだ。

「きっと、俺に言える時になったら殿下も打ち明けてくれるだろう……」

 だから、殿下の想い人を知るのはその日まで待てばいい。今悩むことじゃなかった。

 俺はスッキリとした体で、久しぶりに殿下の香りに包まれながら眠りについた。


 
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