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15 寝ても覚めても
しおりを挟む母上の用意してくれたお茶を飲み、みんなの近況を聞いていればすぐに夜になってしまった。
父上は残念ながら後一週間は視察から戻ってこないとのこと。いつもの休みだったら入れ違いになったが、今回は休みが長いので父上をのんびり待つことができる。
それにしても、俺が帰宅すると判ってるのに視察に行くなんて……。
母上は問題が起きたわけじゃないと言ってたけど、少しばかり心配になった。
まぁ状況を聞くにしても父上のお帰りを待つしかないから、俺が今できることなんてないんだけどね。
俺が今出来ることといえば、妹弟たちを甘やかすことである!
夕飯を食べたあと、俺はガードルートとリヒャルトと一緒にベッドに入って絵本を読むことにした。
最近はリヒャルトがガードルートに読んであげているらしいけど、リヒャルトだってまだ六歳だ。甘やかされたいに違いない。
いつもはお兄ちゃんとして頑張ってるリヒャルトを俺がいる間くらい甘やかしてあげたい。
読み始めて三十分もしないうちに遊び疲れもあったのか、可愛い弟たちはすーすーと寝息をたてはじめた。
しばし天使の寝顔を堪能してから、静かに二人の寝室をあとにする。
自室に戻れば俺も早々にベッドに入ることにした。
旅路の間も夜はちゃんと宿に泊まりベッドで休んだし、日がな一日馬車に乗っていただけで、なにかしていた訳では無いけど疲労は蓄積していたのだろう。すぐに眠気がやってくる。
俺は可愛い弟たちの寝顔を思い出しつつ、そう言えばヒューベリオン殿下も昔は可愛かったなぁなんてことを思い出しながら眠りに落ちたのだった。
翌朝、せっかくの休暇、しかも実家だし二度寝してやるぜぐふふ、なんて休みを堪能しようと思ってたのに、気付けば普段通りに起床してしまった。
早起きしたもののすることがないので庭を散策したけど、それでも朝食まで時間が余ってしまったので調理場に顔を出す。
邪魔になるかなぁと思ったけど快く作業スペースを開けてくれたので、最近殿下がハマっている甘じょっぱいパンケーキを作ることにした。
ヒューベリオン殿下は毎朝騎士団と一緒に鍛錬してるので、ガッツリしたものを食べたがる。
いつもの食事では物足りないと言うのでこれでもかとだだ甘&肉増しのパンケーキを作ったら気に入ってしまったのだ。ベーコンとか肉とかチーズをメイプルシロップひたひたにしたパンケーキで挟んだ、朝食べるには結構重たい料理である。
ミルクティーしか飲めなかったあの繊細な殿下はどこへいったのやら。
可愛らしかった頃の殿下を懐かしく思い出しながら、みんなで一口ずつ食べられるよう小さめのパンケーキを作ることにした。
そうこうしていれば母上たちが起きてきた。寝起きの天使たちがこれまたほわほわで可愛い。
唯一マルゲリットだけは朝からキリッとしていて、お姉さんとしてみんなの世話を焼いている。
愛しい家族に朝の挨拶をして、心を潤す。はぁー幸せ。
そういえば殿下はちゃんと起きてるだろうか。昔はそんな事をまったく心配したことはなかったけど、最近お疲れのせいか朝起きれない時があるのだ。
寝ぼけすぎて俺をベッドに引きずり込むことさえある。
他の使用人には絶対にしないように忠告してるけど……少しだけ不安だ。
だって、あんな気怠げで無防備な国宝イケメンに甘えられたら誰だって惚れるし、下手したらトキメキすぎて心臓が止まってしまうかもしれない。
俺だって何度か危なかった。
「お兄様! これ甘くて美味しい!!」
「もうひとつ、食べて良い?」
「おいち~」
「おもしろい味!」
「へぇ、おいしいね」
気付けば俺の作ったパンケーキはみんなに好評ですぐに無くなった。喜んでもらえたみたいだし、また今度作ろうっと。
食事の後はマルゲリットとキャロラインに勉強を教えたり、リヒャルトとガードルートと庭の小川で水遊びをしたり、アルヴィンに指をにぎにぎしてもらいながら母上とのんびり話をしたりと全力で家族と戯れた。
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