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12 残念ながらβ確定のようです
しおりを挟む父上との相談のことはヒューベリオン殿下には言っていないけど、今や俺と殿下は無二の友。たぶん俺の考えは読まれているだろう。
「ああそうだ、皆に土産を用意してあるから持っていって貰えるか? 王妃殿下から公爵夫人への出産祝いもあるから渡してくれ」
「わぁ! 喜びます! ありがとうございます!」
俺が笑顔で答えると、殿下は眩しいのか目を細めて微笑む。
今は幼少期のような作り笑いではなく、自然な微笑みを俺に向けてくれるのが嬉しい。
うふふ、今日もヒューベリオン殿下は顔もいいし臣下への配慮も万全だ。暫くの間、殿下にお会いできなくなるので今のうちにプリンススマイルを堪能しておこう。
最近の殿下は昔のように張り詰めた空気や必死さはなくなり、余裕が出てきたのが見て取れる。周りの根拠のない噂などに惑わされない心の強さも手に入れられた。
ここまでくると、本当に完全無欠だろう。うん、俺、側仕えとしていい仕事したんじゃない?
そんな大活躍した俺も今年で十六歳になった。ヒューベリオン殿下に仕えるべく王城へやって来て早七年経過している。
殿下は現在、公務と勉強半々の日々を過ごされており、俺はそのお手伝いをしていた。
本来であれば俺もそろそろお手伝いではなく、殿下を支える右腕になれるよう、なんだかんだと役職を賜ったりして動くはずの年齢なんだけど……理由あってお手伝いの身分から脱げ出ていない。
理由ってのはまぁメイドたちも噂していたけどね。俺の性別、第二性に問題があるからだ。
幼い頃は優秀なαと言われていた俺だが、神童も成人すればただの人とはよく言ったもので、どうやら俺はαではなかったらしい。
αやΩは体の変化で性別が判明することも多いけど、最終的には薬をつかって確認する。
試薬を染み込ませた紙を舐めて赤になったらα、青になったらΩと判断され、第二性が確定する。ちなみにβの唾液には反応しない。
早ければ十歳前後の検査で反応が出て、遅くても十六歳くらいには判明するらしい。
ちなみにヒューベリオン殿下は俺と会った十歳の時に舐めた試薬が、それはもう鮮やかな赤に染まったんだそうだ。
貴族は特に第二性を重要視するので、身体に変化がなくても幼い頃から試薬検査を実施されている。
俺も王城へ来た年に確認したが、結果は変化なし。
その年から毎年試薬を舐めているが、今年も紙は染まらなかった。
最初の2、3回は試薬の苦さに涙目になったが今はもう干し肉を味わうかのように堪能できる。うまうま……。
まあ、味わったところで何も変わらないんだけどね。
……つまり、十六歳になったのに試薬が無反応な俺は、β確定なのだ。
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