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7 違和感
しおりを挟む「……あれ、殿下。右手をどうかされましたか?」
カップを口に運ぼうとしたヒューベリオン殿下の手が止まる。
殿下の利き腕は右手だ。スプーンやフォークも右手で使うし、カップもいつもなら右手でとる。
だけど、今は左手に持っていた。
「いやなにも」
俺に視線を合わせると、殿下はニコリと微笑む。
はぁ、殿下の笑顔……可愛いなぁ。朝から良いものを見た。心が満たされていく。
両親のイチャラブを見れなくなってぽっかり空いてしまった俺の心は、現在ヒューベリオン殿下の美しい微笑みで満たされている。ありがたや。
と、そうじゃなかった。
「それなら良いのですが」
なんでもないと言うなら、たまたまだったのかな?
殿下は俺の問いかけに短く答えると、カップを右手に持ち替えて口に運んだ。
そのあと算術と、この国にはどんな領地があるのかという地理と歴史がミックスしたような授業を受ける間、俺はいつもよりも慎重にヒューベリオン殿下の様子を観察した。
相変わらず殿下は教師からの質問への回答も的確で、予習復習してるんだろうなぁと神々しいまでに凛とした横顔を惚れ惚れと見つめる。
そんな完璧な殿下だったが、やはりいつもと少し動作が違った。
スプーンやペンなどの軽いものはいつも通り持っていたけど、カップや本など多少重たいものは左手を使っていたのだ。
あとノートの文字が少しばかりいつもより雑な気がした。
……うーん、この結果から導き出されるのは、やはり何かしら右手を負傷してるってことだ。
でも特にそんな話は聞いてないし、ヒューベリオン殿下も隠したがっている。
大したことではないのかもだけど、見過ごすわけにはいかない。
かといって親密度が微妙な今の俺ではヒューベリオン殿下に何度聞いたところで朝食の時のようにはぐらかされてしまうだろう。
こうなったら言い逃れできない状況を作るしかない!
チャンスを伺うべく、俺は昼食を終えた後、殿下の着替えの手伝い係に立候補することにした。
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