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5 寝食を共にすれば絆が深まる、ハズ
しおりを挟む『拝啓。父上、母上、キャロライン、マルゲリット、リヒャルト、お元気にしていますか? 俺は元気です。早いもので王都に来てから一年が経ちました……』
定期的に実家へ送っている手紙を書き終えれば大きく背伸びをする。窓から差し込む朝の日差しが気持ちいい。
王太子であるヒューベリオン殿下の側近候補として王都にある王城に住み、早一年。
十歳になった俺は、やっと最近ヒューベリオン殿下のお側について、身の回りのことをやらせてもらえるようになった。
一応俺は落ちぶれた公爵家とはいえ公爵令息だし、王族籍から出てはいるが父は王弟なので使用人のようなことをする必要はない。
だけど俺がやりたいのでやらせてもらうことにしたんだ。
だって、せっかく殿下と仲良くするために来たというのに、なんか物凄い壁があるんだよっ! 明らかに俺よりメイドさんたちの方が殿下と仲がいい。
まぁね、たしかにね、産まれた時からお世話してる方々と同じように、突然やってきた子どもに接してくれるとは思ってないよ?
でもね、俺だって可愛い盛りの妹たちや大好きな両親から離れ、一人寂しく頑張ってるんだよ。
結果を残したいじゃないか!
そこでどうしたら殿下が俺に打ち解けてくれるのか? って考えて、浮かんだのが身の回りのお世話だ。
寝食を共にすれば絆が深まるって昔から言うし、何気ない日常を一緒に過ごすのってとっても大事だろう。
最初こそ使用人のみんなは難色を示したけど、ヒューベリオン殿下本人が許可したし、もちろん陛下にも許可はもらったので無事に俺の仲良しになろう大作戦は決行できているのである。
そんな俺の一日はヒューベリオン殿下を起こして、本日のスケジュールをお伝えすることからはじまる。
現在唯一の直系王族たる殿下の日程はハードだ。
さすがに十一歳なので公務はほぼないが歴史、教養、算術などの座学だけでなく、マナーや剣術、社交ダンスなどなど実技も多くこなされる。いわゆる帝王学というやつである。
俺もだいたい一緒に勉強するんだけど、成績は殿下の足元に及んでるのかなぁどうかなぁといったところだ。
うちにいた頃は、やれ天才だの百年に一度の優秀なαだのと持て囃された俺だけど、所詮井の中の蛙でしかなかった。
「ヒューベリオン殿下、おはようございます! ミルドリッヒです!」
俺は部屋の前に立つ護衛たちに挨拶してから意気揚々と殿下の部屋をノックする。
すぐに部屋の中から入室を許可する声が聞こえたので殿下の部屋へ入れば、当たり前のように身支度を終えた完璧な笑顔の美少年がテーブルセットに座っていた。
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