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3、好きな子の事は何でも知りたい

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 その日の夜、ショウマが私の部屋にやって来た。
 他の二人に聞いたところ私以外の部屋をショウマは訪れていないらしい。訪問の内容は主に今後の戦闘方針だ。私が他の二人よりも実力が劣っているため救世主が頻繁に助言にくる……だけでは多分ない。

 部屋にはベッドと一人用の机と椅子がある。私たちは自然とベッドに二人で腰かけて話すようになっていた。

「メイラ、ちょっとステータス見せてもらっていい?」

 ステータスとは実力が数値で表されるもののことだそうだ。救世主はそれを見ることが出来るらしい。

 最初こそなにをバカなと思ったが、習得している術や装備している武具、その時の怪我の具合、他にも気付かれないだろうことを次々と言い当てられてしまえば信じるしかない。

 私は無言で頷く。すると服も髪も微塵も動かないのに風が正面から吹いてきた感覚がした。

 この行為はあまり好きではない。見られたくない内面を見られている気がするからである。なんとなく俯き加減の私を真っすぐショウマが見つめていれば、うーんと腕を組んで唸りはじめた。

「炎と星をあげるだけあげて、星落しの呪符は使えるようにしたとして、回復だよなあ。全体がいいし」
「……回復なら樹系だと思う」
「あー! そっか星と樹で世界樹の呪符か! うん、メイラここでちょっとレベルあげてこ!」

 私の言葉にショウマが名案だとばかりに声を上げる。

「星落しと世界樹の呪符……そんな高度な符術を私が作れるとは思えない」
「大丈夫、大丈夫! デカイ木の妖魔倒すと樹の習練度あがりやすいから」
「しかし習得に時間がかかっては妖魔の核がまた育ってしまう」
「まだ大丈夫。あと一年くらいは育っても俺でなんとかできるし、次の段階までえーと、20日あるから足して50日の間に倒せばたいして変わらない」

 妖魔の核は30日毎に強さを増す。ショウマが言うには毎月レベルが上がり、ドロップアイテムも変化するから育てて倒す場合もあるのだそうだ。
 何を言っているのか半分も判らないが、判りやすく言えば妖魔の核をある程度大きくしてから倒す方が世界に恩恵があるのだという。

 ……にわかには信じがたい説だが、救世主が言うならそうなのだろう。

 ショウマは会話中、記憶を思い出すためか目を伏せ暫し止まる時がある。目を開いている時よりもいくぶん大人びて見える。しかし、ばっと目を開けて笑う姿は子供のようだ。
 破格に強い救世主を子供のように思うなど不敬だろうか。

「だから今はレベル上げ……えっと、修練に時間とろう」
「仰せのままに」
「あー、なんかその言い方やだなぁ」
「ではどのように言えと?」
「うーんもっと気軽に「OK頑張る!」とか?」
「……おーけーがんばる」

 私がショウマの言葉を復唱すれば、ショウマは大きな目をぱちぱちと瞬いてから「あー」っと何ともだらしない声を出してベッドに寝そべった。

 聞きたい言葉であっても言って欲しい相手でなければ意味がないことも多い。

 ショウマが私の部屋にだけ来るのは私が「あいつ」に似ているからなのだろうと私は推測している。
 この世界に似たゲームも「あいつ」に誘われてやったのだと言っていた。先程の返事もきっと「あいつ」がよく言う言葉なんだろう。ショウマは「あいつ」と会話がしたいのだ。

 私はいつからかショウマを旅の仲間以上に意識するようになった。
 ……だから、ショウマの話には頻繁に「あいつ」の影があることに気付いていた。
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