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本編
(14)足止め
しおりを挟む俺たちは無事、サロの住む村に客人として迎え入れて貰う事が出来た。
ホルフが言うには、俺たちも獣人狩りの仲間として疑われてしまう可能性もあったらしい。だがサロはとても利発な子だったので、大人への説明が的確だった。
あと俺がキルクハルグ竜王国の王子であることと、ホルフが妖精族の子に懐かれていたことも村人に信用される要因になったそうだ。
あまり大きな村ではなかったが、パン屋や肉屋、武具雑貨屋など一軒ずつだが店もきちんとある。
ただ残念ながら宿屋の部屋は二人定員の三部屋しかなく、俺とエールックが同室でと思ったがそれは恐れ多いと拒否されてしまった。ならば四人で二組に別れてとなったが、エールックが貴族でもない者と同室になりたくないと言った。
ちなみに冒険者の三人の誰かが俺と同室になることもエールックは断固反対した。
俺の単独行動のせいでエールックは明らかに気が立っていた。
戻ってから「あなた一人の身体ではない」「王子としての自覚はあるのか」「人死にが出たのは軽率な行動のせいだ」等々、鬼気迫る勢いで文句を言われてしまったのだ。
心配させてすまないと謝ったが、エールックは落ち着かなかった。
そんな俺たち、というかエールックに対して「ぶっ倒れてた人がえらそーに何言ってんの?」とグリムラフが横やりを入れ、またこの二人が言い合いになり、俺への叱責が終わった。
終わった直後、俺はホルフにテントに連れていかれたから、多分またレーヴン達が俺からエールックを引き離してくれたのだろう。
レーヴンとグリムラフからは俺が衣服をはがされたことは、エールックに伝えないようにと言われた。
責任感で俺に着いてくるし、王族としての振る舞いに煩いエールックのことだ、知ったらどんな風に荒れるか判らないと言われれば俺も頷くしかない。
それとは別に、俺ももちろん醜態は広めてほしくないので、二人にも他言しないように依頼した。
本当は罠にかかったことも恥ずかしかったので伝えたくはなかった。しかし、それは足の怪我があるので黙っているわけにはいかなかった。
そんな事もあって、俺は少しばかりエールックに引け目を感じてしまっていたので、彼の我儘…言い分を許すことにした。
冒険者三人のうち一人があぶれてしまう事が申し訳なかったが、サロがうちに泊まればいいと言ってくれたので甘えることにして、ホルフが厄介になることになった。
妖精族の子どもは、村長が近隣で消えた子どもがいないか確認してくれている。その間、あの子もサロの家が預かることになった。
それを知ったホルフは「子ども好きなので一緒にいられて嬉しいです」と朗らかに言ってくれた。
竜の渓谷に行くには回り道になってしまったが、サロやサロの家族、村の人の笑顔を見れば、今回の決断が無駄な事ではなかったと確信する。
ただ、密輸団に関わったことで、俺の身体に想定外の問題が起きてしまっていた。
そちらは正直、喜べることではない。
――… 俺は、眠れなくなってしまったのだ。
密輸団の調査協力をすることもあって、到着した日に三泊程度は村に滞在することは決めていた。
村人への対応はレーヴンが主にやってくれており、俺の傍にはエールックと、グリムラフかホルフのどちらかがついてくれている。
一晩目は気が昂っていて眠れないのだと思った。
二晩目に身体がまた動かなくなるのでは、胸の上で髭面の顔の男が俺を見ているのでは、と想像してしまい、どうしても横になることが出来なくなってしまった。
それならばと座って寝れないかと試した。壁に背を預け支えと安心の為に剣を抱いて寝てみた。
少しうとうとできたがちょっとした物音、それこそ自分の剣が服とこすれる音でも目が覚めてしまった。
さらに治っているはずの、罠にかかった右足が痛むのだ。
歩行なら問題がない。だが走ったり剣を振るのに踏み込むと、罠にかかった時と同じような衝撃が走り転倒した。
村の医者にも診て貰ったが、傷は治っていると言われた。
ただ治癒魔法で治しているなら自然に治るものとは違い、暫くはそういった痛みも出るかもしれないとも言われた。
これから旅を続けるにはどちらも障害にしかならない。
足のことはレーヴン達も知ることだが、眠れない事は伝えていない。
……俺は三晩目もまともに寝ることが出来ないまま、宿屋の一階にある食堂に降りた。
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