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第三幕
しおりを挟む入団から3年目には俺は主役をするまでになった。凄く腹立たしいことに、男同士の恋愛ものばかりだが。
5年目には俺の人気は不動になっていた。俺が演じる恋愛ものの演目は全て満員御礼。しかも王女様方も俺のファンだと公言したものだから、余計に俺の人気が出た。ありがたいことだ。
稽古の都合があるから他の演目に出れないのは判る、だがそれが表向きなのも判っている。しゃぶるのを拒否しているから演出も脚本も嫌がるのを知っていて、わざと俺を男同士の恋愛演目にしか出さないのだ。くだらない。カイがこっそり俺の芝居を見て演出が自慰をしていたと恐ろしいことを教えてくれたが、俺はカイに死んだ目でそういことは言わなくていいと教えた。
ちなみにこれはカイが悪いわけではなく、ララの馬鹿が俺がどんな反応をするか見たいがためにカイに言わせたことだと後で知った。とりあえずララの腹に蹴りを入れるだけで勘弁してやった。
「なーに今日も不機嫌な顔してるんだよ、シャクナ」
俺の出番がないシーンの練習をしている舞台上を壁にもたれて眺めていれば、いつのまにかララが隣に立っていた。
黒い髪に黒い瞳、俺よりも背が高く傍に立つと見下ろされるのが腹が立つ。さらにコイツは顔がいいから腹が立つ。ついでに今回の相手役もコイツなのが腹が立つ。
「勝手に触るな。またお前問題起こしたのか?」
「えー…どうだろ?」
人の尻を揉み始めた手を乱暴にはたく。耳に顔を近づけてふーっと息を吹きかけてくるが無視だ。
「シャクナが抱かせてくれれば大人しくするんだけどなぁ」
いつの間にか腰を抱き寄せられて、ララの硬くなったちんこを押し付けられる。
「お前には理性がないのか、稽古中だ。握りつぶしてやろうか」
「やだこわい。優しくお口で奉仕してよ」
本気で握りつぶしてやろうかと思ったがコイツも第三歌劇団の花形だ、失うと困る。主にチケットの売り上げが。俺は理性を総動員してララの足を、小指だけを狙って思いっきり踏みつけるだけで我慢した。
「いたたたた、シャクナやめて、骨折れる!」
「折れてしまえ」
「や、やめてください。シャクナさん、ララさんが可哀想です」
俺が無表情でララの足を踏んでいれば、ララの従者のニースが俺の足にしがみついてきた。そしてうるうるした瞳で俺を見上げてくる。ふわふわの金髪に青い大きな瞳が今にも零れ落ちそうで怖い。
「お、ニースお前優しいなぁ。よしちょっと付き合ってくれ」
「はい!」
犬にでもするように乱暴にニースの頭をララが撫でても、ニースは嬉しそうに笑う。そのまま二人して連れだって稽古場を後にした。ニースに口で奉仕してもらうんだろう。自分の出番の練習までには戻ってくるだろうから黙認する。
結局ララは誰が相手でも構わないんだ。
「だったら俺にかまうなよ……」
うんざりした気持ちでつぶやいた。
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