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第四幕
しおりを挟む今回の演目は悲恋だ。
最後キスで毒を口移しし一緒に死のうとする奴と、キスの間にお互いを剣で貫いて一緒に死のうとする奴の恋物語。
相手と自分殺すくらいの行動力があるなら普通に国外にでも逃げろよ、死んだ気になりゃなんでも出来るだろ?? だいたい家がどうだとか世継ぎがどうだとか言うのに一緒に自害した後の周りの迷惑考えねぇのかよ? と俺は思う、そんな話だ。理解も共感もできない。でも人気はある演目である。
『お前以外を愛する事はできない、どうか来世でも私を愛してほしい』
『……ええ、王子。また一緒に……うっ』
ララの顔が近づいて口付けられる。ふりだけでいいはずなのに毎回きっちり舌を突っ込んでくるの本当にヤメろっと稽古ではキレる。だが悔しいが本番では拒絶できない。
わざと耳を塞いでぢゅるぢゅると卑猥な音を俺の頭に響かせる。もはやこの状況には慣れている。俺は台本通り剣が二人を貫いて見える様に逆手に鞘をもち、ララの背中から刺すように見せる。
ララが俺に覆いかぶさるように倒れて、幕が下りる。割れんばかりの拍手が起これば、ララが俺の手を引いて立ち上がらせてくれた。
こういう普通の態度だけみれば悪い奴じゃない。演技も上手い。その獣並みの精力がなければいい奴なんだと俺も素直に思う。
ララに腰を抱かれるが演目的にしかたないので、我慢したままカーテンコールを無表情で終わらせれば控室に戻る。
疲れた。
早く愛しのイワンの写真を眺めて癒されたい。実物じゃない相手を思うのは気楽だ。実際の交流のある相手を思うより何倍も楽だ。
そんな事を思いながら控室の扉を開けた瞬間、固まった。
控室が血の海なのである。
なんだろ、どっからそれ持ってきたんだ?ってくらい、鶏だとかハトだとかの死骸が散らかっている。それだけならまあいい、嫌がらせだろうって話だし、片付ければいいから。
だけど問題はそこじゃなかった。
鳥をむしゃむしゃ食べている物体が問題だ。
「……ひっ、いやあああああああああああああああ!!!!」
部屋の中をみて、一拍置いてからカイの叫びがこだました。
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