花形スタァの秘密事

和泉臨音

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第二幕

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 第一特務隊イワン・レイグナーの二つ名が「氷の壁」ならば、俺シャクナのあだ名は「氷の華」だ。俺の銀にも見える金髪と薄い蒼色の瞳のせいで涼しく見えるんだろう。

 歌劇団は三つに分かれており、男女団員がいる第一歌劇団、女のみで構成されている第二歌劇団、男だけで構成されている第三歌劇団に分かれている。俺は第三歌劇団に所属している。
 第一や第二の演目は男女の恋愛ものが多いが、第三は友情とか社会的なもの、男同士の恋愛ものが多い。
 どうして第三だけ男女じゃなく同性なんだ、と幼い頃は思ったが入団して自分がそれを演じて肌で感じた。

 集客できるのである。

 そう、客が入る。チケットが売れる。儲かる。そりゃ、やるだろう。
 判る、判るが俺の表情筋は演目をやるたびに死んでいった。あれは役なのであって本来の俺は清楚可憐でも恋愛第一主義でもない。
 いや、演技中の表情筋は大丈夫だ、ちゃんと動いている、だが日常生活で死んだのだ。生きていたら今頃俺は童貞も処女も捨てることになったと思う。思うじゃない、絶対手籠めにされていた。その位、舞台の外で追い回されるのだ。笑顔は肯定じゃない、俺の拒否の言葉を耳に入れろ。

 元々俺は特務隊に入りたかった。俺の村は魔物の攻撃で滅んだ。その時に特務隊に助けてもらった恩もあって、自分も入隊できればって思った。
 しかし入隊・・試験を受けに行ったはずなのに届いたのは入団・・許可書だ。おかしいだろう、なぜ受けてない歌劇団から入団を許可されるんだ??? 特務隊に抗議にいったら「入隊試験は落ちていたけど、たまたま来ていた歌劇団の人間がキミをみてスカウトした」と説明された。それなら仕方ないと諦めた。帰る場所も行く場所もないのだ。ここで居場所を作るしかない。

 入団したら第三歌劇団に配属された。男所帯だなと当たり前のことを思っていたら新人団員、つまり従者は先輩のちんこを咥えないといけないと恐ろしいことを初日に言われた。耳を疑った。なんでも演目で男同士で愛し合うための訓練だから仕方ないんだそうだ。

 馬鹿か。そんなわけがあるか。

 そうして悟った。身寄りのない俺なら簡単にそういったことをするだろうと思われたのだ。しかし常識を持っていた俺は新聞社にこのネタを売った。とっても高く買ってもらえた。もうその金で田舎にでも土地を買うかって思ってたらその当時の団長に引き留められて感謝までされた。
 風紀を変えたかったが自分にその勇気はなかったと。
 まあそうだろう、団員の多くは歌劇団に入りたくて来ている。ちょっと先輩のちんこ舐めるくらいで主役になるならしゃぶるんだろう。俺はごめんだけどな。そもそも入団したかったわけじゃないからあっさりと行動できたのは否めない。金が手元にあるならいつやめたっていいんだ。

 まあでも団長は常識人でちんこをしゃぶれと言わなかったから、俺は彼の従者になり芝居を学んだ。

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