6 / 16
本編(シャルロ視点)
暁の騎士 エドウィン・ハーシャル
しおりを挟む
「シャルロ話がある。少しいいか?」
「? もちろんいいけど」
シャルロが寮に帰り、夕食を終え一人部屋に戻ると、扉の前にエドウィンが待っていた。
エドウィン・ハーシャル。明るい赤髪にルビーのような赤い瞳のがっしりとしたマッチョだ。騎士の家系で、明るく爽やかな性格は頼れる兄貴みたいな存在である。
【花の騎士】の一人で、攻略対象。goodエンドは共に騎士となり切磋琢磨し、trueエンドは田舎で結婚して剣道場を開き幸せになり、badエンドだと邪神討伐で両目と右手左足を失ったエドウィンの性処理の穴としてレオは一生を過ごす。
エドウィンはいい奴だがbad展開は二人にとって不幸でしかない。
「あ、ここで立ち話もなんだよな。中に入ってくれ」
「ああ、お邪魔する」
シャルロの部屋は他より一部屋多く、寝室が別れているため友人たちの溜まり場にされている。
そのため座る場所もおおよそ決まっていた。シャルロとエドウィンはソファーに向かい合わせで座る。レオは必ずシャルロの隣を陣取った。
(そういえばレオ以外と部屋で二人になるの初めてかも……と、いかんいかん。未練を断ち切ると決めたばっかりなのに)
いつもなら自分の隣にいるレオがいなくて、なんだか居心地が悪い。
「シャルロ? 大丈夫か?」
「あ、ごめん。平気」
「ならいいが、顔色が……て、おい、大人しくしてろ」
思わずため息をついたシャルロにエドウィンが心配げに声をかけたが、その会話を断ち切るように、エドウィンの横に置かれた篭ががたがたと揺れた。
ピクニックに行くときにお弁当を入れてそうな篭だ。正直エドウィンが持っているには不似合いだが、【花の騎士】はモテるので卒業を間近に後輩からプレゼントを貰うことも多く、てっきり手作りのお菓子でも貰ったのかと思っていたが。
「わぁっ! 可愛い猫だな、どうしたんだその子?」
暴れた篭の蓋を押し上げて、ひょこっと顔を出したのは美人な黒猫だった。
じっと見つめてくる黒猫の紫の瞳をシャルロも見つめ返して微笑む。にゃんこ可愛い。可愛いは正義だ。落ち込んでいた気持ちが少し癒された。
「えっと……エミリアから預かった」
「エミリアから? 怪我でもしてて保護したとか?」
「いや、そういう訳じゃないが、ちょっと理由ありで」
二人が話している間に黒猫は篭から這い出ると素早く動き、シャルロの隣に我が物顔で寝転んだ。
にゃんっと一声鳴いてゴロゴロ喉を鳴らす様子は愛嬌たっぷりである。
「へぇ、なんか人懐っこいなぁ可愛い」
「人懐っこ……気に入ったならとりあえず良かった。悪いがそいつ、預かってもらえないか?」
黒猫の体を撫でようとしたら身を固くされたので、頬を指で撫でる。その手がエドウィンの言葉で止まる。
「??? エミリアから頼まれたのはエドウィンだろ? 話ってそれか?」
「いやそれはついでだ。話というかメインは報告だな。エミリアに【開花の儀式】を申し込んだ」
「おおおお! で、どうだった????」
「先ほど、……受けると返事を貰った」
「おおおおおお、おめでとう!!」
(エミリアが言ってた意中の相手ってエドウィンだったのか!)
髪や瞳だけでなく顔まで赤く染め、照れつつも真顔で話すエドウィンの両手をシャルロは身を乗り出して握る。
「良かったな! みんな集めてお祝いしなくちゃ!!」
「やめてくれ、恥ずかしい」
手を握ったまま上下に大きく振るシャルロにエドウィンは真っ赤になりつつ苦笑する。黒猫もお祝いに参加したかったのか、エドウィンの肩に飛び乗った。
「ほほーう、もしかして早速今夜儀式をするから、この猫を預かってくれっていうんだな。なるほどなぁ」
「それは違……おい、気色悪い顔で笑うな」
ヌフフフと笑うシャルロを真っ赤な顔のままジトリとエドウィンが睨む。睨まれてもこれっぽっちも怖くない。
「ぶっちゃけそりゃやりたいが……実際早い方がいいのか……どうなんだ? シャルロは邪神がいつ現れるか視えてるんだろ? そろそろなのか?」
「え、なんで……誰にも言ってないのに」
驚くシャルロの顔にエドウィンは自分の考えを確信すると言葉を続けた。
「最近魔物の数が増えているし、強くなってきただろう? それにレオに言われて気付いたが、シャルロは卒業後の話を極端にしない。今までは俺達が危険を回避できるよう、未来視を伝えてくれていたのにだ」
「ぐっ……」
「だから卒業後、わりとすぐに邪神が現れるんじゃないかと俺とレオ、エミリアは予想している」
(レオは流石だけど、エミリアとエドウィンもなかなか鋭いな)
卒業後の未来視が出来ないのは、レオに選ばれなかったキャラのその後がゲームで描かれていなかったからだ。なのでシャルロの未来視の力はもうすぐ使えなくなる。
シャルロがどう答えるべきか言い淀んでいると、黒猫がエドウィンの頬をグイグイと頭で押していた。
「? もちろんいいけど」
シャルロが寮に帰り、夕食を終え一人部屋に戻ると、扉の前にエドウィンが待っていた。
エドウィン・ハーシャル。明るい赤髪にルビーのような赤い瞳のがっしりとしたマッチョだ。騎士の家系で、明るく爽やかな性格は頼れる兄貴みたいな存在である。
【花の騎士】の一人で、攻略対象。goodエンドは共に騎士となり切磋琢磨し、trueエンドは田舎で結婚して剣道場を開き幸せになり、badエンドだと邪神討伐で両目と右手左足を失ったエドウィンの性処理の穴としてレオは一生を過ごす。
エドウィンはいい奴だがbad展開は二人にとって不幸でしかない。
「あ、ここで立ち話もなんだよな。中に入ってくれ」
「ああ、お邪魔する」
シャルロの部屋は他より一部屋多く、寝室が別れているため友人たちの溜まり場にされている。
そのため座る場所もおおよそ決まっていた。シャルロとエドウィンはソファーに向かい合わせで座る。レオは必ずシャルロの隣を陣取った。
(そういえばレオ以外と部屋で二人になるの初めてかも……と、いかんいかん。未練を断ち切ると決めたばっかりなのに)
いつもなら自分の隣にいるレオがいなくて、なんだか居心地が悪い。
「シャルロ? 大丈夫か?」
「あ、ごめん。平気」
「ならいいが、顔色が……て、おい、大人しくしてろ」
思わずため息をついたシャルロにエドウィンが心配げに声をかけたが、その会話を断ち切るように、エドウィンの横に置かれた篭ががたがたと揺れた。
ピクニックに行くときにお弁当を入れてそうな篭だ。正直エドウィンが持っているには不似合いだが、【花の騎士】はモテるので卒業を間近に後輩からプレゼントを貰うことも多く、てっきり手作りのお菓子でも貰ったのかと思っていたが。
「わぁっ! 可愛い猫だな、どうしたんだその子?」
暴れた篭の蓋を押し上げて、ひょこっと顔を出したのは美人な黒猫だった。
じっと見つめてくる黒猫の紫の瞳をシャルロも見つめ返して微笑む。にゃんこ可愛い。可愛いは正義だ。落ち込んでいた気持ちが少し癒された。
「えっと……エミリアから預かった」
「エミリアから? 怪我でもしてて保護したとか?」
「いや、そういう訳じゃないが、ちょっと理由ありで」
二人が話している間に黒猫は篭から這い出ると素早く動き、シャルロの隣に我が物顔で寝転んだ。
にゃんっと一声鳴いてゴロゴロ喉を鳴らす様子は愛嬌たっぷりである。
「へぇ、なんか人懐っこいなぁ可愛い」
「人懐っこ……気に入ったならとりあえず良かった。悪いがそいつ、預かってもらえないか?」
黒猫の体を撫でようとしたら身を固くされたので、頬を指で撫でる。その手がエドウィンの言葉で止まる。
「??? エミリアから頼まれたのはエドウィンだろ? 話ってそれか?」
「いやそれはついでだ。話というかメインは報告だな。エミリアに【開花の儀式】を申し込んだ」
「おおおお! で、どうだった????」
「先ほど、……受けると返事を貰った」
「おおおおおお、おめでとう!!」
(エミリアが言ってた意中の相手ってエドウィンだったのか!)
髪や瞳だけでなく顔まで赤く染め、照れつつも真顔で話すエドウィンの両手をシャルロは身を乗り出して握る。
「良かったな! みんな集めてお祝いしなくちゃ!!」
「やめてくれ、恥ずかしい」
手を握ったまま上下に大きく振るシャルロにエドウィンは真っ赤になりつつ苦笑する。黒猫もお祝いに参加したかったのか、エドウィンの肩に飛び乗った。
「ほほーう、もしかして早速今夜儀式をするから、この猫を預かってくれっていうんだな。なるほどなぁ」
「それは違……おい、気色悪い顔で笑うな」
ヌフフフと笑うシャルロを真っ赤な顔のままジトリとエドウィンが睨む。睨まれてもこれっぽっちも怖くない。
「ぶっちゃけそりゃやりたいが……実際早い方がいいのか……どうなんだ? シャルロは邪神がいつ現れるか視えてるんだろ? そろそろなのか?」
「え、なんで……誰にも言ってないのに」
驚くシャルロの顔にエドウィンは自分の考えを確信すると言葉を続けた。
「最近魔物の数が増えているし、強くなってきただろう? それにレオに言われて気付いたが、シャルロは卒業後の話を極端にしない。今までは俺達が危険を回避できるよう、未来視を伝えてくれていたのにだ」
「ぐっ……」
「だから卒業後、わりとすぐに邪神が現れるんじゃないかと俺とレオ、エミリアは予想している」
(レオは流石だけど、エミリアとエドウィンもなかなか鋭いな)
卒業後の未来視が出来ないのは、レオに選ばれなかったキャラのその後がゲームで描かれていなかったからだ。なのでシャルロの未来視の力はもうすぐ使えなくなる。
シャルロがどう答えるべきか言い淀んでいると、黒猫がエドウィンの頬をグイグイと頭で押していた。
46
お気に入りに追加
703
あなたにおすすめの小説

ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

嫌われ変異番の俺が幸せになるまで
深凪雪花
BL
候爵令息フィルリート・ザエノスは、王太子から婚約破棄されたことをきっかけに前世(お花屋で働いていた椿山香介)としての記憶を思い出す。そしてそれが原因なのか、義兄ユージスの『運命の番』に変異してしまった。
即結婚することになるが、記憶を取り戻す前のフィルリートはユージスのことを散々見下していたため、ユージスからの好感度はマイナススタート。冷たくされるが、子どもが欲しいだけのフィルリートは気にせず自由気ままに過ごす。
しかし人格の代わったフィルリートをユージスは次第に溺愛するようになり……?
※★は性描写ありです。

【完】悪役令嬢の復讐(改)全6話
325号室の住人
BL
初出 2021/10/08
2022/11/02 改稿、再投稿
わたくしマデリーンは18歳の誕生日の今日、2歳年上の第2王子から婚姻式をブッチされました。
「お前は国外追放だ!!」
と、花嫁衣装のまま国境の森に追放。
良いですわ。そちらがその気なら………
悪役令嬢が国外追放に決まった時、友人達はプランBで、動き出した。

追放系治癒術師は今日も無能
リラックス@ピロー
BL
「エディ、お前もうパーティ抜けろ」ある夜、幼馴染でパーティを組むイーノックは唐突にそう言った。剣術に優れているわけでも、秀でた魔術が使える訳でもない。治癒術師を名乗っているが、それも実力が伴わない半人前。完全にパーティのお荷物。そんな俺では共に旅が出来るわけも無く。
追放されたその日から、俺の生活は一変した。しかし一人街に降りた先で出会ったのは、かつて俺とイーノックがパーティを組むきっかけとなった冒険者、グレアムだった。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる