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4.調査方針と通常業務
しおりを挟むさっそく真織は聞き出した情報をもとに本を探すことにした。
手順としては青年が借りることができた本の中から、数学関連の洋書を検索するというシンプルなものだ。
まず確認したのは、第一回目の東京オリンピックの開催年だ。これはインターネットで調べれば簡単にわかる情報だし、色々な公的サイトにも載っていることなので真偽を疑う必要もない。
開催は1964年、昭和39年である。
1964年時に青年が何年生だったかは不明だが、留年などしていないならば想定しうる在学期間は1960年から1967年の間になるだろう。
つまり1960年~1967年の間にこの図書館にあった貸出可能な数学書のいずれかが探している本である可能性が高い。
そうなれば次は該当年にこの図書館にあった本の確認だ。
「田端さん、あとで事務室内のパソコンお借りしてもいいですか?」
真織は出勤早々事務室内に座る先輩図書館員、田端和華子に声をかけた。
「いいよ~。じゃあ帰るときにそこのやつ電源切らないでおくね」
「ありがとうございます」
図書館の仕事は事務室内での作業も多くある。田端は一般利用者が目につくことはほぼない目録業務と呼ばれる仕事を担当しているベテラン図書館員だ。
図書館を利用したことがあれば、本の背表紙に数字が書かれたシールが貼られているのを見たことがあるだろう。図書館の本はそのシールにより並べられており、それを作成するのが目録業務の主な仕事だ。
さらにデジタル化が進んだ昨今の図書館では、購入した本を検索データベースに登録することも目録の仕事となっている。
そのおかげでどのような本があるのか、またいつ入荷したのかなど検索することが容易になった。
勿論、1960年代にこの図書館システムは存在しない。
導入されたその当時の図書館員が紙の台帳や本の現物を見ながら、何万冊とある蔵書を確認してデータ化したのだ。
そのおかげもあって蔵書の検索は今やパソコンなどの電子機器で簡単に行うことが出来るのである。
(さすがに貸出開始日は専用端末でないと解らないから、とりあえず続きは休憩時間に調べよう)
そうと決めれば気持ちを仕事モードに切り替える。
真織の本日の担当は窓口だ。
図書の貸出手続きや、館内施設の案内などが主な仕事になる。
といってもセルフで貸出が出来る機械が窓口近くにあるので、図書館のメインとも言える本の貸出などはほぼ対応することがない。
どちらかと言えば不具合を起こしたセルフ貸出機を再起動したり、貸出しているタブレットの動作確認をしたりなど、デジタル機器のトラブル対応の方が多いくらいだ。
「ああ~っ! また止まってしまった」
案の定、セルフ貸出機がエラー画面を表示する。
動きを止めた機械の前で、白衣を着た背の高い男が愕然と頭を垂れていた。
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