病原菌鑑定スキルを極めたら神ポーション出来ちゃいました

夢幻の翼

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第12話 スキル鑑定士と新たな能力

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「おはようございます。朝食を食べられたら出かけますのでいい加減に目を覚まされてください」

 いつもよりも少し早い時間にロイルが部屋に現れて毛布を剥ぎ取りながら私を起こしにかかる。

「まだ早くない?」

「いいえ、スキル鑑定士の方は本当にお忙しいのです。時間どおりに行かないと最悪の場合はキャンセルとなりお金だけかかる事にもなりかねませんよ」

 ロイルは私の他所行きの服をタンスから選びながらそう言って私を急かした。

「――では、出発しますね。街の中だけの移動ですので三十分程度かと思われますが中で眠らないでくださいよ」

 御者台からロイルが私に釘を刺しながら馬車を動かし始める。

「ロイル。そのスキル鑑定士の人って男の人? それとも女の人?」

「どちらも居られますが男性の方がレベルが高いと聞いております」

「ふうん。どうやって確認するのかな?」

「身体に触れた状態で鑑定スキルを使うそうですが、お嬢様は一度受けた事がありますよね?」

「十歳の事なんか忘れちゃったわよ。なんとなく覚えてるのは頭を押さえられたと思ったら終わってたってだけね」

「覚えてるじゃないですか」

「だからおぼろげにってだけだから。自信が無かったのよ」

 ロイルとそんな事を話しているといつの間にか一軒の大きな建物の前で彼女は馬車を止めた。

「着きましたよ。私は馬車を止める場所へ向かいますのでお嬢様はここで降りて中のホールで待っていてください」

 ロイルは私にそう言うと私が降りるのを待ってから馬車の移動を始めた。

 ――シャラン。

 ドアを開くと綺麗な音色が聞こえ私は臆せずに中へと入っていく。

「すみませんがご要件をお願いします」

 ホールに入ると受付嬢らしい人がスッと傍に寄ってきて用件を聞いて来る。

「スキルの鑑定をお願いしたいのですが」

「ご予約でしょうか?」

「えっと……」

 連絡はロイルに任せていたので予約なのかそうでないのか分からず私は言い淀んでしまう。

「あ、予約した者です」

 その時、私の後ろからロイルが代わりに答えてくれた。

「……確認しました。ではスキル鑑定を受けられる方はこちらの部屋にお願いします」

 受付を済ませると先払いで鑑定料金を支払い私だけ部屋に通される。

 部屋の中はシンプルで一組のソファと何やら小難しそうな本が並べられた本棚があるだけだった。

「ようこそ。本日はスキル鑑定の再検査をご希望だとか」

 声のする方を見るといつから居たのか一人の青年男性が本を片手にソファに座っていた。

「あ、宜しくお願いします」

「どうぞ、座られてください。先にいくつか質問をしますが出来るだけ正確に答えて頂きたいです。その方がより新たなスキル発現の確率が上がりますので」

 青年はそう行って優しく微笑みかけてくる。

「先ほど提出いただきました資料によるとサクラ様は現在『錬金調薬』のスキルを有しているそうですね。これは十歳の時に行った鑑定の儀で分かったものだそうですね」

「はい。そうなります」

「そして、今回はあなたに複数のスキル適正があるかの再鑑定をして欲しい……で間違いないですね?」

「はい」

 青年は優しい表情で頷いて質問を続ける。

「あなたは今現在、錬金調薬といった優秀なスキルに恵まれていますが何故このタイミングで新たな可能性を求めてこの場に来られたのでしょうか?」

 青年の質問に私は言葉に詰まるが正直に話すことにした。

「――なるほど。お母様に不幸があったとはいえお父様の行動に理解が出来ず、その反発心と未熟な自分の不甲斐なさに苛まれての行動だったのですね」

 青年は話を聞いて数回うんうんと頷くと私の目を見て言った。

「良く理解しました。全てをさらけだして正直に伝えてくれたこと嬉しく思います。このような場での話をされる方の多くは自分を正当化したいがために嘘の情報を交えて話される方がいます。迷いを持ったまま受ける鑑定魔法はそのまま迷いの結果を出す事となります」

 青年はそう言って優しく微笑むと静かに右手を出して握手を求めてくる。

「聞いているかと思いますが私のスキル鑑定魔法はその対象に触れていないと発動しませんのでお願いします」

 その説明は事前に聞いていたので私は頷いてからその右手を握り返す。

「ありがとうございます。では魔法を発動しますのであなたは目を瞑って身体に巡る魔力を感じるようにリラックスしてください」

 青年は私が目を瞑るのを確認してから魔法を発動させた。

「――スキル鑑定」

 青年が魔法を展開すると言われていたように私の身体の中を魔力が巡るのを感じられる。

 目を瞑っているので目の前は真っ暗なはずだが次の瞬間、パッと光が弾けるように明るく感じたと思ったらすぐに暗闇へと戻った。

「はい。もう目を開いても大丈夫ですよ」

 青年に言われて私はゆっくりと目を開くと変わらず微笑みかける青年の顔があった。

「もう手を放されても大丈夫ですよ。結果を書類に起こしますので少しだけそのままお待ちくださいね」

 青年は私が手を放すと横にあったテーブルに置かれている書類に何かを記入していく。

 私はすぐに質問をしたかったが青年が書類を書き終わるのをじっと待った。

「こちらが鑑定結果になります。正直言って私の魔法ではこれが限界でした」

 そう言って渡された書類を私は食い入るように読んでいく。

『この度、サクラ様のスキル鑑定を行いましたところ新たにひとつのスキルが存在することが判明しました。
 スキル名は【×××鑑定スキル】となります』

「鑑定スキルなのですよね? この×××とはいったい何のことなのでしょうか?」

 報告書を読んだ私は当然の疑問を青年に投げかける。

「申し訳ありませんが、それはわかりかねます。おそらくですがスキルの根底はあなたの中にあるのですがそれが発現するためには何かのきっかけが必要なのかと思います」

「何かのきっかけ……」

 私はその後も青年と話を続けたが結局のところそれ以上の事は分からずその日は工房へと帰ることになった。
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