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第8話 朦朧とした意識の中で
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ポーション作りは予想どおり困難を極めた。同じものを作れば良いので早くなりそうだが実際は錬金レベルが低いために必要以上に精神力を消耗しながらの調薬となり思うように数がこなせずにいたのだ。
「――これで五十本。ようやく半分になったわね」
毎日、朝早くから夜遅くまでずっと調薬を続けていた私は既に限界に達していた。
「少しは休まれないと本当に倒れてしまいますよ」
ひとつ完成するたびにロイルが魔道具で検査をしてくれながらそう忠告をしてくる。
「うん。分かってはいるんだけど休んだら間に合わなくなっちゃう……」
そうなのだ。五十本完成したとはいえ、既に今日までに丸四日間費やしていた。
「とにかく今日はもう休んでください。明日、私がギルドに行って納期を延ばして貰えないか掛け合ってきますから!」
「心配してくれてありがとう。でも、やっぱり引き受けたからにはやらなくちゃ……」
私はふらつきながらも調薬台の前に立ったがその瞬間、私の意識は闇に包まれた。
――ガシャーン
「お嬢様!」
朦朧とした意識の中でロイルの悲鳴が聞こえた気がした。
◇◇◇
――夢を見ていた気がする。
小さいながらに父の背中をワクワクしながら追いかけて錬金調薬師の仕事をずっと見ていた。
子供の目から見ても父親の腕は一流で、どんな難しいポーションも涼しい顔で調薬していた記憶しかない。
だが優しかった母が病に倒れ、その病気の特効薬が不明な状態で父はそれまで見せたことのない苦悩に満ちた表情となる。
全ての仕事を放り投げ、母の病気の特効薬づくりに一年を捧げたが時間は残酷なものでその夢は叶うことは無かった。
失意に満ちた父は私に全てを押しつけたまま旅にでてしまったまま今がある。
(ああ、あんな無責任なクソ親父くらい直ぐに越えられると思ったんだけどな)
子供の頃のフラッシュバックが終わった時、私は目を覚ましていた。
「――ここは、私の寝室? 私寝ていたの!? ロイル! ロイルはどこ!?」
私の叫び声を聞いてロイルが部屋に飛び込んでくる。
「ああ、お嬢様。目を覚まされましたか。良かった」
「ロイル、私はどのくらい寝ていたの?」
焦る私にロイルは落ち着くように言ってからひとつずつ説明をしてくれた。
「お嬢様は倒れてから丸二日眠っておられました」
「二日!? それじゃあ明日がポーションの納品日なの?」
「そうなりますね」
ロイルの言葉に私の目の前は真っ暗になる。
「無理――。どうしたって一日で五十本は絶対に無理よ」
真っ青な顔で私がそう叫ぶがロイルの表情は変わらず落ち着いている。
「落ち着いてください。それについては大丈夫ですから」
「どういう事よ? まさか私が倒れたとギルドに報告して納期を延ばしてもらったの?」
「いいえ。そうではありません」
「なら、半分の五十本の納品で了承してもらったの?」
「いいえ。ポーションは百本既に揃っています」
「え?」
どう考えてもそんな事はあり得ない事で私が気を失ったまま調薬をしたとでも言うのだろうか?
「ちゃんと説明して!」
理由がわからない私はロイルにそう叫ぶ。
「……さまが代わりに調薬されました」
「は? 誰がって?」
私はロイルの言葉がよく聞き取れなかったので思わず聞き直してしまったが後悔することになる。
「お嬢様のお父様が作ってくださいました」
その言葉に私は愕然とし、自らの耳を疑った。
「父さんが帰ってきた?」
「はい」
「いつ?」
「お嬢様が倒れられた日の夕方です」
「それから五十本もポーションを作ったと言うの!?」
「はい。その腕は全く錆びついておらず、この工房を出て行かれた当時のままの腕前でした」
その言葉に私は自分の未熟さを痛感し、笑うしか無かった。
「はは、はははっ。今更何をしに帰ってきたの? 私の未熟さをあざ笑うため? 自ら捨てた錬金調薬の腕が当時のまま? なによそれ、意味わかんない」
落ち込む私の頭をロイルはそっと撫でながら私を褒める。
「サクラお嬢様は十分に結果を出しておられます。お父様に及ばないのは経験値の差です。お嬢様が今のお父様の年齢になった時、必ずお父様以上の錬金調薬師になっていると私は信じていますよ」
「ロイル……ありがとう」
私はロイルの優しさと自らの力不足に打ちのめされて彼女の胸に頭を埋めて泣いた。
◇◇◇
「――それで、父は今どこに居るの?」
暫く泣いた後、少し落ち着いた私はロイルに父の居場所を問いかける。
「おそらく、斡旋ギルドに行かれていると思います」
「ギルドに? 何か仕事を探しているのかしら」
「お父様が工房を出る時、相当に怒った顔でギルドに文句を言ってやると言われていました。おそらく、まだ未熟なお嬢様に無理な依頼を押し付けた事に憤りを感じでいたようでした」
「そう、ギルドマスターも災難ね。父が怒り出したら母でなければ止められなかったもの」
「それと、お父様はこの近くに治癒院を開くとも言われてました。その許可を貰いに行くとも言われてましたね」
「治癒院の開業許可? たった数年で本当に治癒魔法を習得してきたの!?」
「そのようです」
私はロイルの言葉に信じられないとの表情を出して彼女を見るがコクリと頷くだけだった。
「――これで五十本。ようやく半分になったわね」
毎日、朝早くから夜遅くまでずっと調薬を続けていた私は既に限界に達していた。
「少しは休まれないと本当に倒れてしまいますよ」
ひとつ完成するたびにロイルが魔道具で検査をしてくれながらそう忠告をしてくる。
「うん。分かってはいるんだけど休んだら間に合わなくなっちゃう……」
そうなのだ。五十本完成したとはいえ、既に今日までに丸四日間費やしていた。
「とにかく今日はもう休んでください。明日、私がギルドに行って納期を延ばして貰えないか掛け合ってきますから!」
「心配してくれてありがとう。でも、やっぱり引き受けたからにはやらなくちゃ……」
私はふらつきながらも調薬台の前に立ったがその瞬間、私の意識は闇に包まれた。
――ガシャーン
「お嬢様!」
朦朧とした意識の中でロイルの悲鳴が聞こえた気がした。
◇◇◇
――夢を見ていた気がする。
小さいながらに父の背中をワクワクしながら追いかけて錬金調薬師の仕事をずっと見ていた。
子供の目から見ても父親の腕は一流で、どんな難しいポーションも涼しい顔で調薬していた記憶しかない。
だが優しかった母が病に倒れ、その病気の特効薬が不明な状態で父はそれまで見せたことのない苦悩に満ちた表情となる。
全ての仕事を放り投げ、母の病気の特効薬づくりに一年を捧げたが時間は残酷なものでその夢は叶うことは無かった。
失意に満ちた父は私に全てを押しつけたまま旅にでてしまったまま今がある。
(ああ、あんな無責任なクソ親父くらい直ぐに越えられると思ったんだけどな)
子供の頃のフラッシュバックが終わった時、私は目を覚ましていた。
「――ここは、私の寝室? 私寝ていたの!? ロイル! ロイルはどこ!?」
私の叫び声を聞いてロイルが部屋に飛び込んでくる。
「ああ、お嬢様。目を覚まされましたか。良かった」
「ロイル、私はどのくらい寝ていたの?」
焦る私にロイルは落ち着くように言ってからひとつずつ説明をしてくれた。
「お嬢様は倒れてから丸二日眠っておられました」
「二日!? それじゃあ明日がポーションの納品日なの?」
「そうなりますね」
ロイルの言葉に私の目の前は真っ暗になる。
「無理――。どうしたって一日で五十本は絶対に無理よ」
真っ青な顔で私がそう叫ぶがロイルの表情は変わらず落ち着いている。
「落ち着いてください。それについては大丈夫ですから」
「どういう事よ? まさか私が倒れたとギルドに報告して納期を延ばしてもらったの?」
「いいえ。そうではありません」
「なら、半分の五十本の納品で了承してもらったの?」
「いいえ。ポーションは百本既に揃っています」
「え?」
どう考えてもそんな事はあり得ない事で私が気を失ったまま調薬をしたとでも言うのだろうか?
「ちゃんと説明して!」
理由がわからない私はロイルにそう叫ぶ。
「……さまが代わりに調薬されました」
「は? 誰がって?」
私はロイルの言葉がよく聞き取れなかったので思わず聞き直してしまったが後悔することになる。
「お嬢様のお父様が作ってくださいました」
その言葉に私は愕然とし、自らの耳を疑った。
「父さんが帰ってきた?」
「はい」
「いつ?」
「お嬢様が倒れられた日の夕方です」
「それから五十本もポーションを作ったと言うの!?」
「はい。その腕は全く錆びついておらず、この工房を出て行かれた当時のままの腕前でした」
その言葉に私は自分の未熟さを痛感し、笑うしか無かった。
「はは、はははっ。今更何をしに帰ってきたの? 私の未熟さをあざ笑うため? 自ら捨てた錬金調薬の腕が当時のまま? なによそれ、意味わかんない」
落ち込む私の頭をロイルはそっと撫でながら私を褒める。
「サクラお嬢様は十分に結果を出しておられます。お父様に及ばないのは経験値の差です。お嬢様が今のお父様の年齢になった時、必ずお父様以上の錬金調薬師になっていると私は信じていますよ」
「ロイル……ありがとう」
私はロイルの優しさと自らの力不足に打ちのめされて彼女の胸に頭を埋めて泣いた。
◇◇◇
「――それで、父は今どこに居るの?」
暫く泣いた後、少し落ち着いた私はロイルに父の居場所を問いかける。
「おそらく、斡旋ギルドに行かれていると思います」
「ギルドに? 何か仕事を探しているのかしら」
「お父様が工房を出る時、相当に怒った顔でギルドに文句を言ってやると言われていました。おそらく、まだ未熟なお嬢様に無理な依頼を押し付けた事に憤りを感じでいたようでした」
「そう、ギルドマスターも災難ね。父が怒り出したら母でなければ止められなかったもの」
「それと、お父様はこの近くに治癒院を開くとも言われてました。その許可を貰いに行くとも言われてましたね」
「治癒院の開業許可? たった数年で本当に治癒魔法を習得してきたの!?」
「そのようです」
私はロイルの言葉に信じられないとの表情を出して彼女を見るがコクリと頷くだけだった。
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