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第2話 お仕事斡旋ギルド
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工房を出た私はいつもの所に向かう。
――からんからん。
小気味良いドア鐘の音に気分を貰いながら私は奥のカウンターへと足を向け、そこに居る女性へと言葉をかける。
ここはトウトウの街にあるお仕事斡旋ギルドでポーションなどの納品依頼もここから注文されるのがほとんどだった。
「ユリアーナさん。何か新しい依頼は入ってないですか?」
「あら、サクラちゃん。今日はゆっくりなのね。でも、せっかく来て貰って悪いんだけど今日は新しい依頼はないのよ」
カウンターに居た綺麗なお姉さんは残念そうな表情で私にそう教えてくれる。
「そうですか。なら今日は薬草の採取に行こうと思ってるから何か依頼があったら工房のロイルに伝えてくださいね」
「わかりました。何かあればそうさせて貰いますね」
マリアーナの返事を聞いた私は片手をあげて「じゃあ」と言ってお店を出た。
(まあ、そんな都合よく依頼が入っていることは少ないわよね。それよりもあれだけ失敗しちゃったから中級ポーションの材料を集めておかないと絶対に足りなくなるわよね)
私は採取用の肩がけ魔導鞄を揺らしながら少し早足で北の門へと急いだ。
「すみません。タポポの森に薬草採取に行きたいのですが手の空いている方は居ますか?」
「なんだ、今からか?」
「ちょうど暇してたんだ。俺が行こうか?」
「まあ待て、今回は俺に任せろ」
門の傍にある詰所にそう声をかけると直ぐに数人から声が返ってくる。
その中に私が良く護衛を依頼する男性の姿を見つけると私はニコリと笑って彼に声をかけた。
「じゃあ、今回もダリさんにお願い出来ますか?」
「ん? また俺で良いのか? 俺見たいなオッサンじゃなくても元気のいい若いもんが手を上げてるようだが……」
私が選んだダリという男性は青年の枠を少しばかり過ぎた壮年の渋い男性で今まで何度か護衛依頼を頼んだが、とても紳士的で好感が持てる振る舞いをする人だった。
もちろん妻子持ちであることからそちら方面でも余計な心配をしなくて済む事から良く指名をさせて貰っていたのだ。
「ダリさんは薬草の知識もあって採取護衛としては凄くありがたいのですよ」
私は彼を指名した理由を話すと護衛依頼書を彼の前に差し出した。
「周りの視線が少々痛いが指名されたのなら仕方ないな。いいぞ、これから直ぐに出るんだったな?」
ダリはそう言って依頼書にサインをすると通常の装備に採取用の魔導鞄を追加で持つと私と共に北門を出た。
「――今日のメインは何だ?」
目的の場所へ歩く傍らでダリが私にそう聞いてくる。
「ヒーリング草とアカネバの花ですね。どちらもタポポの森の湖の畔に生息している素材ですね」
「中級ポーションか……。最近はあまり需要が無いんじゃないか?」
「まあ……そうですね。この街にも治癒士の方が幾人か病院を開いていますからね。症状に特化したポーションよりも汎用性のある治癒魔法を頼りたくなる気持ちは分かりますよ」
「だが、魔法での治療費は決して安くない上に病人を動かせない時には往診をして貰わなくてはならないが、そもそも治癒士が足りない状態では来てくれる保証もない。そんな時はやはりポーションに頼らざるを得ないと俺は思うがな」
「ふふっ。気を使ってくれてありがとうございます。まあ、私もまだまだ見習いに毛が生えた程度の実力しかありませんので期待に応えられるように精進していかないと駄目ですね」
「いや、嬢ちゃん頑張ってると思うぞ。お母さんに不幸があってお父さんがあんな事になったというのに立派に工房を廻しているのだからな」
「ありがとうございます。またまだ周りに助けられてばかりですけどね」
ダリとはもう何度も素材採取に付き合って貰っているのでこういった話も出来る間柄で非常にありがたい存在として感謝していた。
「お、そろそろ森に入るが湖の畔で良いんだな?」
「はい。宜しくお願いします」
街から森へはそれなりの道が通っており、森の入口付近までは馬車も通れるくらいには整備されていた。
「今日は珍しく一匹の獣とも遭遇しませんね」
「そうだな。大抵は角ウサギか尾長狼あたりが出てくるんだがな」
大抵、湖の畔まで素材採取に向かうと数回は獣などと遭遇することが多い。その為、わざわざお金を支払って護衛を雇う必要があるのだ。
「まさか大物が潜んでいるから出て来ないって事はないですよね?」
「それは可能性としては低いとは思うが念のため気を引き締めて進むとしよう」
ダリはそう言って腰の剣に手を添えた。
◇◇◇
それから進むこと半刻ほどして目的地である湖の畔へと私たちはたどり着いていた。
「結局、何とも遭遇しませんでしたね」
目的の場所にたどり着いた私はすぐに素材の収集へと動き出す。
「あまり離れてくれるなよ。いざという時に守れなくなるからな」
「分かっています。場所移動をする時は必ず声をかけるようにしますね」
私はそう言って彼の視界から出ない範囲で素材収集を再開する。
「あ、珍しい。オトナリ草がある!」
目的の素材であるヒーリング草とアカネバの花はすぐに見つかったのだが、もう少しだけど希少価値の高いオトナリ草が見つかったことでテンションが爆上がりとなり彼の注意した事を失念していた。
――からんからん。
小気味良いドア鐘の音に気分を貰いながら私は奥のカウンターへと足を向け、そこに居る女性へと言葉をかける。
ここはトウトウの街にあるお仕事斡旋ギルドでポーションなどの納品依頼もここから注文されるのがほとんどだった。
「ユリアーナさん。何か新しい依頼は入ってないですか?」
「あら、サクラちゃん。今日はゆっくりなのね。でも、せっかく来て貰って悪いんだけど今日は新しい依頼はないのよ」
カウンターに居た綺麗なお姉さんは残念そうな表情で私にそう教えてくれる。
「そうですか。なら今日は薬草の採取に行こうと思ってるから何か依頼があったら工房のロイルに伝えてくださいね」
「わかりました。何かあればそうさせて貰いますね」
マリアーナの返事を聞いた私は片手をあげて「じゃあ」と言ってお店を出た。
(まあ、そんな都合よく依頼が入っていることは少ないわよね。それよりもあれだけ失敗しちゃったから中級ポーションの材料を集めておかないと絶対に足りなくなるわよね)
私は採取用の肩がけ魔導鞄を揺らしながら少し早足で北の門へと急いだ。
「すみません。タポポの森に薬草採取に行きたいのですが手の空いている方は居ますか?」
「なんだ、今からか?」
「ちょうど暇してたんだ。俺が行こうか?」
「まあ待て、今回は俺に任せろ」
門の傍にある詰所にそう声をかけると直ぐに数人から声が返ってくる。
その中に私が良く護衛を依頼する男性の姿を見つけると私はニコリと笑って彼に声をかけた。
「じゃあ、今回もダリさんにお願い出来ますか?」
「ん? また俺で良いのか? 俺見たいなオッサンじゃなくても元気のいい若いもんが手を上げてるようだが……」
私が選んだダリという男性は青年の枠を少しばかり過ぎた壮年の渋い男性で今まで何度か護衛依頼を頼んだが、とても紳士的で好感が持てる振る舞いをする人だった。
もちろん妻子持ちであることからそちら方面でも余計な心配をしなくて済む事から良く指名をさせて貰っていたのだ。
「ダリさんは薬草の知識もあって採取護衛としては凄くありがたいのですよ」
私は彼を指名した理由を話すと護衛依頼書を彼の前に差し出した。
「周りの視線が少々痛いが指名されたのなら仕方ないな。いいぞ、これから直ぐに出るんだったな?」
ダリはそう言って依頼書にサインをすると通常の装備に採取用の魔導鞄を追加で持つと私と共に北門を出た。
「――今日のメインは何だ?」
目的の場所へ歩く傍らでダリが私にそう聞いてくる。
「ヒーリング草とアカネバの花ですね。どちらもタポポの森の湖の畔に生息している素材ですね」
「中級ポーションか……。最近はあまり需要が無いんじゃないか?」
「まあ……そうですね。この街にも治癒士の方が幾人か病院を開いていますからね。症状に特化したポーションよりも汎用性のある治癒魔法を頼りたくなる気持ちは分かりますよ」
「だが、魔法での治療費は決して安くない上に病人を動かせない時には往診をして貰わなくてはならないが、そもそも治癒士が足りない状態では来てくれる保証もない。そんな時はやはりポーションに頼らざるを得ないと俺は思うがな」
「ふふっ。気を使ってくれてありがとうございます。まあ、私もまだまだ見習いに毛が生えた程度の実力しかありませんので期待に応えられるように精進していかないと駄目ですね」
「いや、嬢ちゃん頑張ってると思うぞ。お母さんに不幸があってお父さんがあんな事になったというのに立派に工房を廻しているのだからな」
「ありがとうございます。またまだ周りに助けられてばかりですけどね」
ダリとはもう何度も素材採取に付き合って貰っているのでこういった話も出来る間柄で非常にありがたい存在として感謝していた。
「お、そろそろ森に入るが湖の畔で良いんだな?」
「はい。宜しくお願いします」
街から森へはそれなりの道が通っており、森の入口付近までは馬車も通れるくらいには整備されていた。
「今日は珍しく一匹の獣とも遭遇しませんね」
「そうだな。大抵は角ウサギか尾長狼あたりが出てくるんだがな」
大抵、湖の畔まで素材採取に向かうと数回は獣などと遭遇することが多い。その為、わざわざお金を支払って護衛を雇う必要があるのだ。
「まさか大物が潜んでいるから出て来ないって事はないですよね?」
「それは可能性としては低いとは思うが念のため気を引き締めて進むとしよう」
ダリはそう言って腰の剣に手を添えた。
◇◇◇
それから進むこと半刻ほどして目的地である湖の畔へと私たちはたどり着いていた。
「結局、何とも遭遇しませんでしたね」
目的の場所にたどり着いた私はすぐに素材の収集へと動き出す。
「あまり離れてくれるなよ。いざという時に守れなくなるからな」
「分かっています。場所移動をする時は必ず声をかけるようにしますね」
私はそう言って彼の視界から出ない範囲で素材収集を再開する。
「あ、珍しい。オトナリ草がある!」
目的の素材であるヒーリング草とアカネバの花はすぐに見つかったのだが、もう少しだけど希少価値の高いオトナリ草が見つかったことでテンションが爆上がりとなり彼の注意した事を失念していた。
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