このステータスプレート壊れてないですか?~壊れ数値の万能スキルで自由気ままな異世界生活~

夢幻の翼

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第109話【交渉成立と酒豪決闘の結果】

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「これはどういった食べ物と相性が良いのですかな?」

「まあ、いろいろな物にあわせることが出来ますからそれはそちらで試して貰えると良いかと思いますよ。
 それで先程の条件でよろしいですかね?」

「ああ、お互いの勝利条件と代理決闘を認める件だな?
 分かった。それでいいのでその調味料を試させてくれ!」

「ありがとうございます。
 では日時は明日の夕刻の鐘。
 場所はギルドの酒場にてお願いします。
 では、このマヨネーズはお譲りしますので頑張って新しいメニューを考えてくださいね。
 では本日はお食事のご招待ありがとうございました」

 僕達は一応食事のお礼を伝えるとカクレンガから工房へと帰路についた。

「ごめんなさい。
 なんだか事が大きくなってしまって。
 でも大丈夫なんですか?酒豪決闘ってかなりのお酒を飲むみたいですけど、誰か強い人に知り合いが居るのですか?」

 クーレリアは不安そうな顔で僕の顔を覗き込んできたが、僕はなんでもないかのように答えた。

「ああ、クーレリアの事だったのに僕が勝手に話を進めたことは申し訳ないと思ってるよ。
 でも負ける要素は皆無だから安心していいよ。
 こっちは僕が出るつもりだけど、もし向こうが女性でないと駄目だと言われればエスカに頼もうと思ってるよ。
 彼女は僕と引き分けた実績があるからね」

 僕の言葉に目を丸くするクーレリアだったが笑顔になり「ありがとうございます」と言って頭を下げた。

 ーーー次の日の夕刻時、ギルドで恒例の酒豪決闘の準備が行われていた。
 証人ギャラリーも多く集まり今か今かと盛り上がっていた。

「それで、そちらの代表はその方ですか?」

 ホーリクの側には背は低いがガタイの良いおそらくドワーフ系の男が立っていた。

「ドラブだ。好きなだけ酒が飲めると聞いて引き受けたがあんたが相手か?
 こんな奴だとすぐに決着がついてほとんど飲めねぇんじゃないのか?」

(なるほど、それなりに強そうなのを探してきたな)

「今日はフォルクさんはどうされましたか?」

「フォルク氏は昨日あんたが渡した調味料のせいで試作に夢中になり、まだ起きてこれてないよ」

 どうやらフォルクは僕の妨害作戦にまんまと引っ掛かったらしい。

「じゃあ始めますよ。
 あ、今回は引き分けにはしたくないのでお酒は通常よりもかなり多めに仕入れて貰ってますから在庫が尽きることはないと思いますよ」

 こうして結果の見えている酒豪決闘は幕を開けたのであった。


「次、ゴリゴリエールだ!」

 何杯飲んだのだろうか。
 夕刻の鐘が鳴る頃に始めた対決は夜になっても全く決着がつかなかった。

(このドワーフ男、本当に酒が強いな。だんだん面倒になってきたぞ)

「おぬしかなりやるじゃないか。
 ワシとこれだけ飲める相手は初めてじゃよ。
 どうだ?この辺で敗けを認めないか?
 素人が一気に飲み過ぎると下手すると死ぬかもしれないぞ」

「そうしたいのですが、こちらも大切なものを賭けてますので引く訳にはいかないんですよ。
 そちらこそ、そろそろ諦めないと支払い金額が相当な額になると思いますよ。
 どうせ負ける気は無かったでしょうから依頼料だけでここの支払いは考えてなかったでしょう?」

「当然じゃろ?そっちこそ払えるのか?」

「払えますが払うつもりはありませんよ。妻に怒られますからね」

 お互い腹の探りあいをしながら酒精の強い注文が続く、このまま在庫がきれるまで続くかと思われたバトルも突然終着を迎えた。

「ぐっ!この酒は!?なぜこの酒が置いてあるんじゃ!?」

『ポイズンサーペントの毒袋酒』通称『ポイズンエール』強力な精力剤として一部の有力者に需要がある酒だが、毒性も強く飲み過ぎると命に関わる薬酒だった。

「コイツでケリをつけましょうか」

 僕が不適に笑う。
 実はこの酒は僕が準備をしてギルドの酒場に置いてもらったものだった。
 もちろん酒の特性は知っているし、僕には状態無効のスキルがある。
 負ける要素はない。

(これで退いてくれれば良いが、強引に飲めば倒れるだろう)

「じゃあ先に僕が飲みますね」

 僕はそう言うと酒を一気にあおった。

「この酒を飲んで何ともないとは化け物か?
 いいぞ、勝負してくれよう。
 コイツを飲んでワシが倒れたらお前の勝ちを認めてやろう」

 ドラブは覚悟を決めて酒を一気にあおった。

「ぐっ!?ぐわっ!のどが焼ける!?胃が叫ぶ!?体が燃える!?」

 ドラブは初めての感覚に苦しんだと思うと気を失った。

「あ、やっぱり普通の人がこの量飲むとこうなるのか……」

 僕はそう呟くとポケットから小瓶を取り出してドラブの口に中身を含ませてから気付けの魔道具を使った。

「うっ!?」

 すぐにドラブは気がつき自分の体に異常がないことを確認した。

「仕方ないがワシの負けじゃな」

 状況を把したドラブは素直に敗けを認め、握手を求めてきた。

「決定的なのはその酒じゃったが、どのみちワシも限界じゃったからな。
 卑怯だとかの恨みを言うつもりはないぞ。
 むしろ、いい経験と仲間内に語れる勝負になったと思う」

 ドラブの潔さに感心していると横からホーリクの非難の声があがった。

「負けるなんて聞いてないぞ!一体どうしてくれるんだ!
 鍛冶士の女は手に入らないし買うのも割高になる。
 当然ここの払いはあんたが出すんだぞ!」

 ホーリクの言葉にドラブは冷めた様子で告げた。

「ああ、構わんよ。ただし、今後ワシやワシの仲間内からの包丁の購入は出来ないものと覚えておくがいい。
 もちろん今のセリフを聞いたそこのお嬢ちゃんもおそらくあんたには売ってくれないだろうよ。
 たとえ倍の値段を出してもな」

 それを聞いたホーリクは自分の失言を後悔したが全ては後のまつりだった。

「ーーーありがとうございました」

 僕はドラブと再度握手をしてそっと今回の酒代の半分を手渡した。

「兄ちゃん。いいのかよ?」

「あなたの心意気に感服しました。

 これはほんのお礼ですよ。ああ、妻の事は大丈夫ですよ自分の小遣いで出してますからね」

 ドラブはニヤリと笑うとクーレリアに向かって「良かったらワシの仲間を紹介したい」と告げて後日工房を訪ねると言って別れた。

「よし、僕達も帰るよ。親父さんが心配してるだろうから工房まで送って行くよ」

 僕達は今日の事を話ながら工房へ向かって歩いて行った。
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