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第108話【交渉の決着方法はリボルテ式で】
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「ほう。薬師の方でしたか。
なかなか良い知識をお持ちとみられるが折角ですから何か料理に関してもご教授頂けたらと思いますが、さすがに無理でしょうからなくても大丈夫ですよ」
交渉の話を横やりされたフォルクは顔には出さないが不機嫌そうに返してきた。
「それで先程の件ですが、どうですか?クーレリアさん。
今回の2倍、いえ3倍の小金貨3枚で買い取りますよ」
クーレリアはちらりと僕を見てからフォルクの質問に答えた。
「私の包丁をそこまで評価してくださって本当にありがとうございます」
「おお、では?」
「ですが、やはりこちらのみにお売りするのは違う気がするのです。
確かに腕の良い料理人の方に使って頂けたら料理も美味しくなるでしょうし、私も作ったかいがあります」
「では、なぜ?」
「でも、私は包丁を含め自分の打った製品を多くの方に使って貰いたいのです。
ですのでフォルクさんにだけ優先的に売る事は出来ません。
でも、大量には無理ですけど予約してもらえれば対応できる範囲でお受けしたいと思います。
もちろん正規の値段で大丈夫ですよ」
「そうですか。
非常に残念ですが仕方ありませんね。
では、すぐにでも予約を入れに行かせてもらいますね。
ああ、そうだ。今日はクーレリアさんに会わせたい者がおりましてね。
若輩者ですがなかなか見所のあるやつでして是非会ってやってくれませんか?」
フォルクはそう言うと従業員に誰かを呼ぶように伝えていた。
「あの、どのような方なのですか?」
「まあ、自分が料理人ですからね。
知り合いも当然同業者が多くなります。
そいつも料理人なんですよ」
話している途中で部屋がノックされて一人の若者が入って来た。
「はじめまして。ホーリクと言います。
歳は16で料理人をやっています。
今回素晴らしい包丁を作る女性が来られると聞いたので是非お会いしたいと思いフォルク氏にお願いしました。
よろしくお願いします」
(なかなか礼儀正しい若者だな。
顔立ちも整っていてなかなか男前だし、結構モテるんじゃないか?)
僕がホーリクの立ち振舞いに感心しながらも余計な事を考えていると突然ホーリクがクーレリアを口説き始めた。
「フォルク氏に聞いていたとおり可愛らしい方ですね。
僕は今まであなた程、魅力的な女性には出会ったことがありません。
あなたを一目見た時から私の心は貴女しか存在出来ないでしょう。
どうか僕とお付き合いをしてもらえませんか?」
突然の告白に顔を赤くして戸惑うクーレリアの姿……は全く無く、笑顔で『何言ってるのこの人』な反応をしていた。
「すみませんが遠慮します。
初対面の方とはそういった関係になる事は無いと思いますので……」
完全に決め台詞をスルーされたホーリクは暫し固まっていたので隣で見ていたフォルクが話題を変えてきた。
「おほん。いや、失礼。
今のは忘れてもらえると助かる。
クーレリアさんが好みの女性だったようで後先考えずに告白してしまったようだ。
まだ若いからな、ははは」
「いえ、いいんですよ。
折角のお話で申し訳なかったのですが彼は好みじゃ無かっただけですから」
さらりと無慈悲な言葉を返すクーレリアを苦笑いしながら「そうですか」と返すのが精一杯のフォルクだった。
「それで、お話は終わりでしょうか?
無ければお席を埋めておくのは申し訳ないですので帰ろうと思うのですが……」
クーレリアの言葉に固まっていたホーリクが再起動して引き止めた。
「ここまでプライドを傷つけられてそのまま帰す訳にはいきません。
クーレリアさん、この街はリボルテです。
何か問題があれば決闘が認められています。酒豪決闘が」
ホーリクは『ビシッ』とクーレリアを指差し高らかに宣言した。
「僕と勝負してください!僕が勝ったら僕と付き合ってください。
万が一負けたら二度と貴女の前にはあらわれませんから」
「先程も言いましたが遠慮します。
だいたいそれ、私に全くメリットありませんよね」
『ーーー酒豪決闘』はリボルテで認められている唯一の公式喧嘩ではあるが、成立するには『双方の同意』が必須であり、一方が勝手に勝負を始めることは出来なかった。
「ではそちらにもメリットがあれば受けて頂けるのですかな?」
今度は横からフォルクが口を挟んだ。
なんとしてもクーレリアを自分達の方へ取り込みたいのが丸わかりだ。
こちらを見るクーレリアに代わり僕がふたりにひとつ提案した。
「まあまあ、お互いに思うところがあるようですので私からひとつ提案をさせてください。
まず、酒豪決闘ですがクーレリアさんはあまりお酒は嗜《たしな》まれませんので不利になるため代理を立てたいと思います。
もちろんそちらも同じ条件でどなたか他に代理を立てられても良いです」
話をしながら僕は鞄から調味料をひとつ取り出してから話を続けた。
「そちらが勝ったらホーリクさんとクーレリアさんがお付き合いをする。
こちらが勝ったら、そうですねクーレリアの包丁をお買い上げする際には一本につき小金貨5枚でお願いします。
あと、当然ですが今後彼がクーレリアさんを口説く事のないようにお願いします。
ただ、この条件を私が出すことに対してそちらに対価をお渡しします」
僕はそう言うと先程とりだしたマヨネーズをフォルク達の前に動かした。
「マヨネーズといいます。
カイザックの街で流行り始めた新しい調味料ですよ。
先日、この街の料理人にも紹介しましたので、ぼちぼちとリボルテでも情報が出回ると思います。
先程、料理関係で新しい情報をと言われていましたので用意させてもらいました」
料理人として新しい調味料と言われれば何に置いても興味を示すしかないふたりだった。
なかなか良い知識をお持ちとみられるが折角ですから何か料理に関してもご教授頂けたらと思いますが、さすがに無理でしょうからなくても大丈夫ですよ」
交渉の話を横やりされたフォルクは顔には出さないが不機嫌そうに返してきた。
「それで先程の件ですが、どうですか?クーレリアさん。
今回の2倍、いえ3倍の小金貨3枚で買い取りますよ」
クーレリアはちらりと僕を見てからフォルクの質問に答えた。
「私の包丁をそこまで評価してくださって本当にありがとうございます」
「おお、では?」
「ですが、やはりこちらのみにお売りするのは違う気がするのです。
確かに腕の良い料理人の方に使って頂けたら料理も美味しくなるでしょうし、私も作ったかいがあります」
「では、なぜ?」
「でも、私は包丁を含め自分の打った製品を多くの方に使って貰いたいのです。
ですのでフォルクさんにだけ優先的に売る事は出来ません。
でも、大量には無理ですけど予約してもらえれば対応できる範囲でお受けしたいと思います。
もちろん正規の値段で大丈夫ですよ」
「そうですか。
非常に残念ですが仕方ありませんね。
では、すぐにでも予約を入れに行かせてもらいますね。
ああ、そうだ。今日はクーレリアさんに会わせたい者がおりましてね。
若輩者ですがなかなか見所のあるやつでして是非会ってやってくれませんか?」
フォルクはそう言うと従業員に誰かを呼ぶように伝えていた。
「あの、どのような方なのですか?」
「まあ、自分が料理人ですからね。
知り合いも当然同業者が多くなります。
そいつも料理人なんですよ」
話している途中で部屋がノックされて一人の若者が入って来た。
「はじめまして。ホーリクと言います。
歳は16で料理人をやっています。
今回素晴らしい包丁を作る女性が来られると聞いたので是非お会いしたいと思いフォルク氏にお願いしました。
よろしくお願いします」
(なかなか礼儀正しい若者だな。
顔立ちも整っていてなかなか男前だし、結構モテるんじゃないか?)
僕がホーリクの立ち振舞いに感心しながらも余計な事を考えていると突然ホーリクがクーレリアを口説き始めた。
「フォルク氏に聞いていたとおり可愛らしい方ですね。
僕は今まであなた程、魅力的な女性には出会ったことがありません。
あなたを一目見た時から私の心は貴女しか存在出来ないでしょう。
どうか僕とお付き合いをしてもらえませんか?」
突然の告白に顔を赤くして戸惑うクーレリアの姿……は全く無く、笑顔で『何言ってるのこの人』な反応をしていた。
「すみませんが遠慮します。
初対面の方とはそういった関係になる事は無いと思いますので……」
完全に決め台詞をスルーされたホーリクは暫し固まっていたので隣で見ていたフォルクが話題を変えてきた。
「おほん。いや、失礼。
今のは忘れてもらえると助かる。
クーレリアさんが好みの女性だったようで後先考えずに告白してしまったようだ。
まだ若いからな、ははは」
「いえ、いいんですよ。
折角のお話で申し訳なかったのですが彼は好みじゃ無かっただけですから」
さらりと無慈悲な言葉を返すクーレリアを苦笑いしながら「そうですか」と返すのが精一杯のフォルクだった。
「それで、お話は終わりでしょうか?
無ければお席を埋めておくのは申し訳ないですので帰ろうと思うのですが……」
クーレリアの言葉に固まっていたホーリクが再起動して引き止めた。
「ここまでプライドを傷つけられてそのまま帰す訳にはいきません。
クーレリアさん、この街はリボルテです。
何か問題があれば決闘が認められています。酒豪決闘が」
ホーリクは『ビシッ』とクーレリアを指差し高らかに宣言した。
「僕と勝負してください!僕が勝ったら僕と付き合ってください。
万が一負けたら二度と貴女の前にはあらわれませんから」
「先程も言いましたが遠慮します。
だいたいそれ、私に全くメリットありませんよね」
『ーーー酒豪決闘』はリボルテで認められている唯一の公式喧嘩ではあるが、成立するには『双方の同意』が必須であり、一方が勝手に勝負を始めることは出来なかった。
「ではそちらにもメリットがあれば受けて頂けるのですかな?」
今度は横からフォルクが口を挟んだ。
なんとしてもクーレリアを自分達の方へ取り込みたいのが丸わかりだ。
こちらを見るクーレリアに代わり僕がふたりにひとつ提案した。
「まあまあ、お互いに思うところがあるようですので私からひとつ提案をさせてください。
まず、酒豪決闘ですがクーレリアさんはあまりお酒は嗜《たしな》まれませんので不利になるため代理を立てたいと思います。
もちろんそちらも同じ条件でどなたか他に代理を立てられても良いです」
話をしながら僕は鞄から調味料をひとつ取り出してから話を続けた。
「そちらが勝ったらホーリクさんとクーレリアさんがお付き合いをする。
こちらが勝ったら、そうですねクーレリアの包丁をお買い上げする際には一本につき小金貨5枚でお願いします。
あと、当然ですが今後彼がクーレリアさんを口説く事のないようにお願いします。
ただ、この条件を私が出すことに対してそちらに対価をお渡しします」
僕はそう言うと先程とりだしたマヨネーズをフォルク達の前に動かした。
「マヨネーズといいます。
カイザックの街で流行り始めた新しい調味料ですよ。
先日、この街の料理人にも紹介しましたので、ぼちぼちとリボルテでも情報が出回ると思います。
先程、料理関係で新しい情報をと言われていましたので用意させてもらいました」
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