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第103話【改修工事の後の相談事】
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ビガントの鍛冶屋で改修工事の予約をした翌日、早速ビガントと娘のクーレリアが揃ってデイル亭を訪れた。
「お待ちしておりました。早速ですがこれが希望の間取り図になります。
必要な材料はこちらで準備させて貰いましたので出来るだけ早めに完成させて貰えると助かります」
ビガント達が案内された一階の食堂兼多目的スペースにはシミリが手配しておいた間仕切りに必要な材料が積み上げられていた。
「ほう、これは斬新な使い方ですな。
なるほど、こうすれば必要経費を抑えることができるのか。いや勉強になるな」
ビガントは間取り図と材料をと空間を見比べながらひとりで納得していた。
「わかりました。すぐに取りかかりましょう。
このくらいならば今日中には完成すると思いますよ」
ビガントはなんでもないかのように答えるとクーレリアにも幾つか指示を出して工事に取りかかった。
「凄いですね。あの間取り図と材料を見ただけでこの改修工事が今日中に出来ると言える人はなかなか居ないと思いますよ」
僕の横でビガントの手際に感心したシミリは素直に称賛した。
「ついに私の拠点が出来るのですね。
私みたいな新人が拠点を持つなんて、普通に考えれば相当に裕福な家庭の子供とかでなければあり得ない話ですもんね。
それにしたって実力が無ければ患者は来てくれないですからね」
エスカートはまだ出来てもいない診療室を前にいつもの妄想モードに浸っていた。
僕は工事の邪魔にならないようにカウンターの椅子に座ってふたりの仕事ぶりを観察していた。
「凄いペースだね。まあ、一軒家を建てる訳じゃないから根本的には過剰な強度もいらないし、天井も新たに付ける必要も無いからみるみるうちに形になっているな」
僕が感心しているとディールが紅茶を入れてくれたので皆で飲みながら工事を見守った。
ーーー完成しました。こんな感じてどうですかな?
夕の鐘が鳴る頃にはすっかり診療室は出来上がっていた。
デイル亭の食堂で使っているのと同じ木材を使い、食堂の雰囲気を壊さないように考えられている。
もちろん僕達がそうなるように話し合って材料も揃えたのだから当然でもあるが……。
「見ても良いですか?」
やはりエスカが真っ先に反応してビガントの返事を待ちきれずに部屋のドアを開けた。
中はシンプルな作りでテーブルに椅子とベッドが置いてあり、壁側には書類を置ける本棚と引き出し付きの棚が備え付けてあった。
「素敵!この部屋が私の世界になるのね」
エスカが感激して椅子に座って使い勝手を確かめているのを見てビガントは満足そうにしていた。
「これが依頼料です。良いものをありがとうございました」
僕はビガントにお礼を言って依頼料を手渡した。それを受け取ったビガントは少し考えてから僕に言った。
「すまないが、少し相談があるんだがふたりで話せるだろうか?」
僕は相談の内容は恐らく昨日のハンマーの件だろうなと考えて相談に乗ることにした。
「良いですよ。せっかくなんでこの部屋を使いましょうか。
エスカ悪いけどちょっと部屋を借りるよ」
「はい、わかりました。じゃあ私達はまたカウンターでお話をしてますね」
エスカはシミリとクーレリアを連れてカウンターの方へ移動した。
「それで、相談とはなんでしょうか?」
ビガントは僕とふたりになるとたどたどしく話し始めた。
「昨日のハンマーと指輪の件ですけど、あの後でクレリに指輪を借りて試してみたが、何も変わらずにハンマーは重たいままでした。
私に使えない理由はなんでしょうか?あと、やはりあのハンマーを使ったクレリの剣は出来が良すぎてあなたの心配されるように秘密を探る者が出るでしょうから何か良い知恵があれば教えて貰えると助かります」
「わかりました。では質問にお答えしますね。
まず指輪の件ですが、あの指輪は持ち主を選びます。
それは魔力の質と量によって発揮出来る力が変わるのです。
さらに、一度持ち主が決まると他の人に付け替えても反応しなくなります。今回のようにね。
まあ、魔道具の特性とでも思ってください」
「それではあの指輪はクレリを持ち主と記憶したんですか?」
「ええ、そうなりますね。
次にクーレリアさんの剣についてですが、質の良いものを作れるのにわざわざ粗悪品を作るのは心情的に苦しいでしょうからひとつ提案をしましょう。
まずは“料理包丁”と“農具”を作る事をすすめます」
「料理包丁と農具ですか?」
「ええ、包丁はどの家庭にもあるから需要が見込めますし、よく切れる包丁はありがたがられると思いますよ。
特に料理人には重宝されると思います。
まずは料理人向けに作ってみてはどうですか?
あとは農具ですね。鉈や鎌や鍬など鉄製品は多岐に渡るし、これもよく切れるものは売れると思いますよ。
これらは剣と違って命を預けるものじゃないから比較的受け入れやすいんじゃないかと思いますよ」
「なるほど!わかりました。
まずはその方向でクレリと相談してやってみます。ありがとうございました」
ビガントは喜んでクーレリアと一緒に工房へ帰って行った。
「お待ちしておりました。早速ですがこれが希望の間取り図になります。
必要な材料はこちらで準備させて貰いましたので出来るだけ早めに完成させて貰えると助かります」
ビガント達が案内された一階の食堂兼多目的スペースにはシミリが手配しておいた間仕切りに必要な材料が積み上げられていた。
「ほう、これは斬新な使い方ですな。
なるほど、こうすれば必要経費を抑えることができるのか。いや勉強になるな」
ビガントは間取り図と材料をと空間を見比べながらひとりで納得していた。
「わかりました。すぐに取りかかりましょう。
このくらいならば今日中には完成すると思いますよ」
ビガントはなんでもないかのように答えるとクーレリアにも幾つか指示を出して工事に取りかかった。
「凄いですね。あの間取り図と材料を見ただけでこの改修工事が今日中に出来ると言える人はなかなか居ないと思いますよ」
僕の横でビガントの手際に感心したシミリは素直に称賛した。
「ついに私の拠点が出来るのですね。
私みたいな新人が拠点を持つなんて、普通に考えれば相当に裕福な家庭の子供とかでなければあり得ない話ですもんね。
それにしたって実力が無ければ患者は来てくれないですからね」
エスカートはまだ出来てもいない診療室を前にいつもの妄想モードに浸っていた。
僕は工事の邪魔にならないようにカウンターの椅子に座ってふたりの仕事ぶりを観察していた。
「凄いペースだね。まあ、一軒家を建てる訳じゃないから根本的には過剰な強度もいらないし、天井も新たに付ける必要も無いからみるみるうちに形になっているな」
僕が感心しているとディールが紅茶を入れてくれたので皆で飲みながら工事を見守った。
ーーー完成しました。こんな感じてどうですかな?
夕の鐘が鳴る頃にはすっかり診療室は出来上がっていた。
デイル亭の食堂で使っているのと同じ木材を使い、食堂の雰囲気を壊さないように考えられている。
もちろん僕達がそうなるように話し合って材料も揃えたのだから当然でもあるが……。
「見ても良いですか?」
やはりエスカが真っ先に反応してビガントの返事を待ちきれずに部屋のドアを開けた。
中はシンプルな作りでテーブルに椅子とベッドが置いてあり、壁側には書類を置ける本棚と引き出し付きの棚が備え付けてあった。
「素敵!この部屋が私の世界になるのね」
エスカが感激して椅子に座って使い勝手を確かめているのを見てビガントは満足そうにしていた。
「これが依頼料です。良いものをありがとうございました」
僕はビガントにお礼を言って依頼料を手渡した。それを受け取ったビガントは少し考えてから僕に言った。
「すまないが、少し相談があるんだがふたりで話せるだろうか?」
僕は相談の内容は恐らく昨日のハンマーの件だろうなと考えて相談に乗ることにした。
「良いですよ。せっかくなんでこの部屋を使いましょうか。
エスカ悪いけどちょっと部屋を借りるよ」
「はい、わかりました。じゃあ私達はまたカウンターでお話をしてますね」
エスカはシミリとクーレリアを連れてカウンターの方へ移動した。
「それで、相談とはなんでしょうか?」
ビガントは僕とふたりになるとたどたどしく話し始めた。
「昨日のハンマーと指輪の件ですけど、あの後でクレリに指輪を借りて試してみたが、何も変わらずにハンマーは重たいままでした。
私に使えない理由はなんでしょうか?あと、やはりあのハンマーを使ったクレリの剣は出来が良すぎてあなたの心配されるように秘密を探る者が出るでしょうから何か良い知恵があれば教えて貰えると助かります」
「わかりました。では質問にお答えしますね。
まず指輪の件ですが、あの指輪は持ち主を選びます。
それは魔力の質と量によって発揮出来る力が変わるのです。
さらに、一度持ち主が決まると他の人に付け替えても反応しなくなります。今回のようにね。
まあ、魔道具の特性とでも思ってください」
「それではあの指輪はクレリを持ち主と記憶したんですか?」
「ええ、そうなりますね。
次にクーレリアさんの剣についてですが、質の良いものを作れるのにわざわざ粗悪品を作るのは心情的に苦しいでしょうからひとつ提案をしましょう。
まずは“料理包丁”と“農具”を作る事をすすめます」
「料理包丁と農具ですか?」
「ええ、包丁はどの家庭にもあるから需要が見込めますし、よく切れる包丁はありがたがられると思いますよ。
特に料理人には重宝されると思います。
まずは料理人向けに作ってみてはどうですか?
あとは農具ですね。鉈や鎌や鍬など鉄製品は多岐に渡るし、これもよく切れるものは売れると思いますよ。
これらは剣と違って命を預けるものじゃないから比較的受け入れやすいんじゃないかと思いますよ」
「なるほど!わかりました。
まずはその方向でクレリと相談してやってみます。ありがとうございました」
ビガントは喜んでクーレリアと一緒に工房へ帰って行った。
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