101 / 120
第101話【国宝級の魔道具を渡す条件】
しおりを挟む
「魔道具の金額は……」
期待と不安から固唾を飲んで僕の言葉の続きを待つふたり。
「お金は……そうですね。
無料でも良いんですが、それをやると商人の妻が怒りますので銀貨を5枚ほど頂きましょうか。
但し、お渡しするのには金銭の他に幾つか条件があります」
「条件ですか。それは一体なんでしょうか?」
性能を考えると金貨でも何枚になるかわからない道具のあまりの安さと『条件』の言葉に身構えるビガントだったが、クーレリアはそんな父の心配をよそに神具を授さずかったがごとく自分の打った剣を眺めてはニヤニヤしながら惚ていた。
「いや、たいした事じゃないけれど以下の3つ程約束をして貰いたいんです」
1.道具に関することの他言無用
2.クーレリアさんに僕専用の剣を打ってもらう
3.この先で僕が鍛冶関係で困った時には協力をして欲しい
「本当にそれだけですか?」
ビガントはどんな無理難題を言われるかと思っていただけに少し疑心暗鬼になっていた。
それを見た僕は状況の確認をするために説明をしていった。
「自分でたいした事ないと言いましたが、実際は結構大変だと思いますよ?
まあ、僕の剣を打つとか何かあったら協力してとかはまだ何とかなると思いますけど、道具の他言無用はかなり気をつけておかないとバレますよ?
この店に置いてある武器防具が急に神品質になったら絶対に探りを入れてくる者が居ますよ?それに……」
「それに?」
「仮に道具の事はわからなくても、クーレリアさんが打ったとまわりに広まったらお嬢さんを取り込もうとする大手の鍛冶士が婚姻を結ぼうと何かと手をまわしてくるかもしれません」
僕はそこまで話して改めてふたりに向き直り最終確認をした。
「ここまでお見せしておきながら勝手で申し訳ないのですが、今ならば全て見なかったことにして関係した道具と今打った剣を有償で引き取ってもいいですけど、どうしますか?」
どうしますか?と言われてもこれから先、修行に打ち込んだとしても品質が劇的に向上する可能性は高いとは言えず、ましてやたった今、試し打ちで作った品のレベルも不可能に近いのだから答えは決まっていた。
「「お願いします。是非とも使わせてください」」
「わかりました。では、約束は守って頂くようにお願いしますよ。
お店にはいろいろ試してみて納得いった品のみ出した方が良いかと思いますよ。
ああ、僕の剣はお嬢さんの鍛冶レベルがもう少し上がって安定した頃に素材持ち込みでお願いすると思います。
では、明日の改修の方はお願いしますね」
僕はそう言うとエスカを連れてビガントの店を後にした。
「あれで良かったのですか?
私じゃないですけど本人の力量以上に優秀になるといろいろと大変になると思うんですけど……」
「じゃあエスカは今の力は習得しなければ良かったと思ってる?」
「そんなこと絶対にありません!
私はこの力でひとりでも多くの人を助けて皆が幸せになる道を自分で選んだのですから、後悔は微塵もありませんよ」
ちょっと意地悪な質問をする僕の横でエスカは頬を膨らませてすぐに反論した。
「まあ、そういうことなんじゃないかな?
結局それぞれ夢や目標を持って頑張っている人達は今以上の力を手にしても自分のエゴだけに使ったりしない。
君がそうだったみたいにね」
僕の言葉に顔を赤くしながらエスカは言った。
「オルトさんは考えが甘すぎます。
夢を持っている人は皆の事を考えているなんて幻想にすぎないですよ。
私だって私利私欲に走る可能性だってあるとは思わないのですか?」
「これでも一応、見る目はあるつもりなんだけどな。
誰にでもやってる訳じゃないし、約束をしてもらうことや何かあったときは責任をもって対処出来るようにしているんだよ」
「えっ?私にも実は何かやってたりするんですか?」
僕の言葉に不安そうな顔をするエスカに微笑みながら言った。
「当たり前じゃないか。って前にも言ったし、その指につけている指輪モノは何だったかな?」
「あっ!そういえばそうでしたね。
契約をしたのをすっかり忘れてました。
でも、これ本当に効果はあるんですか?」
「疑うならば試してみてもいいよ。
僕は側でゆっくりと結果を見させてもらうからね」
エスカは契約違反の代償が「恥ずかしい事がおこる」だったのを思い出して慌てて首を左右に振った。
* * *
「ただいまー。工事は明日来てくれるそうだからテーブルとかの移動は今日中にやってしまおう」
「オルト君お帰りなさい。うまく話はついたみたいね。
こっちも開業に必要な品物の準備はほとんど集まったわよ。
まあそれほど大きな物は無かったけど商人ギルドに頼んで届けて貰ったんだけどね」
シミリは今日は留守番だったので商人の伝手を使って必要な品物を発注してもらっていたが無事に済んだようだ。
さすが僕の嫁さん抜かりはなさそうだ。
「それじゃあ明日は改修工事をするから皆よろしくな。そしてディールさんもよろしくお願いしますね」
すべての前準備が終わった僕達は明日の改修工事に向けて早めに休息をとった。
期待と不安から固唾を飲んで僕の言葉の続きを待つふたり。
「お金は……そうですね。
無料でも良いんですが、それをやると商人の妻が怒りますので銀貨を5枚ほど頂きましょうか。
但し、お渡しするのには金銭の他に幾つか条件があります」
「条件ですか。それは一体なんでしょうか?」
性能を考えると金貨でも何枚になるかわからない道具のあまりの安さと『条件』の言葉に身構えるビガントだったが、クーレリアはそんな父の心配をよそに神具を授さずかったがごとく自分の打った剣を眺めてはニヤニヤしながら惚ていた。
「いや、たいした事じゃないけれど以下の3つ程約束をして貰いたいんです」
1.道具に関することの他言無用
2.クーレリアさんに僕専用の剣を打ってもらう
3.この先で僕が鍛冶関係で困った時には協力をして欲しい
「本当にそれだけですか?」
ビガントはどんな無理難題を言われるかと思っていただけに少し疑心暗鬼になっていた。
それを見た僕は状況の確認をするために説明をしていった。
「自分でたいした事ないと言いましたが、実際は結構大変だと思いますよ?
まあ、僕の剣を打つとか何かあったら協力してとかはまだ何とかなると思いますけど、道具の他言無用はかなり気をつけておかないとバレますよ?
この店に置いてある武器防具が急に神品質になったら絶対に探りを入れてくる者が居ますよ?それに……」
「それに?」
「仮に道具の事はわからなくても、クーレリアさんが打ったとまわりに広まったらお嬢さんを取り込もうとする大手の鍛冶士が婚姻を結ぼうと何かと手をまわしてくるかもしれません」
僕はそこまで話して改めてふたりに向き直り最終確認をした。
「ここまでお見せしておきながら勝手で申し訳ないのですが、今ならば全て見なかったことにして関係した道具と今打った剣を有償で引き取ってもいいですけど、どうしますか?」
どうしますか?と言われてもこれから先、修行に打ち込んだとしても品質が劇的に向上する可能性は高いとは言えず、ましてやたった今、試し打ちで作った品のレベルも不可能に近いのだから答えは決まっていた。
「「お願いします。是非とも使わせてください」」
「わかりました。では、約束は守って頂くようにお願いしますよ。
お店にはいろいろ試してみて納得いった品のみ出した方が良いかと思いますよ。
ああ、僕の剣はお嬢さんの鍛冶レベルがもう少し上がって安定した頃に素材持ち込みでお願いすると思います。
では、明日の改修の方はお願いしますね」
僕はそう言うとエスカを連れてビガントの店を後にした。
「あれで良かったのですか?
私じゃないですけど本人の力量以上に優秀になるといろいろと大変になると思うんですけど……」
「じゃあエスカは今の力は習得しなければ良かったと思ってる?」
「そんなこと絶対にありません!
私はこの力でひとりでも多くの人を助けて皆が幸せになる道を自分で選んだのですから、後悔は微塵もありませんよ」
ちょっと意地悪な質問をする僕の横でエスカは頬を膨らませてすぐに反論した。
「まあ、そういうことなんじゃないかな?
結局それぞれ夢や目標を持って頑張っている人達は今以上の力を手にしても自分のエゴだけに使ったりしない。
君がそうだったみたいにね」
僕の言葉に顔を赤くしながらエスカは言った。
「オルトさんは考えが甘すぎます。
夢を持っている人は皆の事を考えているなんて幻想にすぎないですよ。
私だって私利私欲に走る可能性だってあるとは思わないのですか?」
「これでも一応、見る目はあるつもりなんだけどな。
誰にでもやってる訳じゃないし、約束をしてもらうことや何かあったときは責任をもって対処出来るようにしているんだよ」
「えっ?私にも実は何かやってたりするんですか?」
僕の言葉に不安そうな顔をするエスカに微笑みながら言った。
「当たり前じゃないか。って前にも言ったし、その指につけている指輪モノは何だったかな?」
「あっ!そういえばそうでしたね。
契約をしたのをすっかり忘れてました。
でも、これ本当に効果はあるんですか?」
「疑うならば試してみてもいいよ。
僕は側でゆっくりと結果を見させてもらうからね」
エスカは契約違反の代償が「恥ずかしい事がおこる」だったのを思い出して慌てて首を左右に振った。
* * *
「ただいまー。工事は明日来てくれるそうだからテーブルとかの移動は今日中にやってしまおう」
「オルト君お帰りなさい。うまく話はついたみたいね。
こっちも開業に必要な品物の準備はほとんど集まったわよ。
まあそれほど大きな物は無かったけど商人ギルドに頼んで届けて貰ったんだけどね」
シミリは今日は留守番だったので商人の伝手を使って必要な品物を発注してもらっていたが無事に済んだようだ。
さすが僕の嫁さん抜かりはなさそうだ。
「それじゃあ明日は改修工事をするから皆よろしくな。そしてディールさんもよろしくお願いしますね」
すべての前準備が終わった僕達は明日の改修工事に向けて早めに休息をとった。
31
お気に入りに追加
3,231
あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

外れスキル【転送】が最強だった件
名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。
意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。
失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。
そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる
名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。
冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。
味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。
死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す
名無し
ファンタジー
アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。
だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。
それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる