このステータスプレート壊れてないですか?~壊れ数値の万能スキルで自由気ままな異世界生活~

夢幻の翼

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第97話【鍛冶士の親父は強面が基本】

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 ーーーからんからん。

 冒険者ギルドのドアのベルが部屋に響いた。

 今日はエスカの治癒士としての開業届けのためにエスカとふたりでギルドに来たが、冒険者の依頼ではないので同じギルドでも建物の反対側のいつもとは違う窓口の前で順番を待つ事になった。

 冒険者ギルドでは冒険者登録をしていない職業者でもここに登録しておくとギルドに依頼があった場合、必要に応じてギルドからの特別依頼として仕事がまわってくるので、開業したての者は大抵ここに登録する事になる。

「今日はどのようなご用件でしょうか?」

 ギルドの受付嬢は微笑みながら要件を聞いてきた。
 僕達はエスカが新規で個人診療所を開業することを伝えて書類に必要事項を記載していった。

「エスカート様が新規で診療所を開業とのことですね。
 おめでとうございます。まだお若いのに開業されるとは優秀なんですね。
 今後の依頼基準の参考に使える治療魔法を登録してください」

 受付嬢の言葉にエスカはちょっと考えて使える魔法を登録していった。

「ありがとうございます」

 記入された内容を確認していた受付嬢の顔色がだんだん変わって行き、最後まで目を通した彼女はエスカに聞いた。

「あの……。ここに書かれている内容は本当でしょうか?
 登録した後に間違いでしたでは信用が無くなりますので今一度確認させてくださいね」

 受付嬢はそう言うと登録用紙に書かれている内容をひとつずつ付き合わせていった。

「ヒール、キュアリー、マナリアル、リフレスアウト。そして今はハイヒールの特訓中……ですか」

「はい。ただ、魔力量がまだ安定しないのでヒール以外の魔法は回数に制限がありますけど……。
 あとハイヒールはまだ無理そうですけど一年以内には習得したいと思っています」

「回復に毒消しに異物除去ですか……。
 一体どんな教育を受けたら出来るようになるんですか?
 これが本当ならば確実にこの街で一番の治癒士になると思いますし、このレベルならばギルド専属の治癒士としてギルドが雇う事も出来ますよ」

「あはははは、ありがとうございます。
 でも、まだまだ修行中の身ですからまずは自分の治癒士としての勉強を続けながら人々を支えて行ければと考えています」

 エスカは少し照れながらも特訓を乗り越えた自信を持ってしっかりと受けこたえをしていた。

「わかりました。ではこれで登録させてもらいます。
 ギルドにて治癒士が必要になった際には依頼が行くかもしれませんがその時はよろしくお願いしますね」

 受付嬢は書類を受理して笑顔で見送ってくれた。

「そういえば、エスカは冒険者登録はしてないんだね。
 確かに治癒士の適正があるならわざわざ冒険者登録する必要はないから不思議ではないけど……」

「そうですね。
 私は最近まで治癒士の修行ばかりしていたので、冒険者になることは考えた事もなかったですね。
 でも、これからオルトさんと居るのに必要ならば登録しますのでいつでも言ってくださいね」

「いや、今はいいよ。
 僕達が冒険者登録してるのは他の街に行くときの身分証明みたいなものだからね。
 エスカはしばらくはこの街で診療所を頑張るだろうから今は必要ないだろう。
 この先、僕達と一緒に他の街へ行く場合は登録してもらうかもしれないけれどね」

「はい。よろしくお願いします」

 ギルドへの登録を済ませた僕達は次に宿屋の改修を頼むために鍛冶士を訪ねた。
 ディールさんから聞いてきた店でデイル亭もこの鍛冶士が建ててくれたそうだ。

「すみませーん!親方は居られますか?」

 僕が店先で呼ぶと奥から女性の声が返ってきた。

「いらっしゃいませ!今日はどんなご用件ですか?」

 奥から顔を出したのは、オルトと同じくらいの歳に見える女の子だった。
 ショートボブに腕まくりをしたシャツ、動きやすそうなパンツ姿で片手には鎚を持っていた。

「えっと、君がこの工房の店主さんなのかな?」

 ディールから店主の容姿までは聞いて無かった僕はおそらく違うだろうとは思いながらも念のために聞いてみた。

「えー。やっぱりそう見えますぅ?」

「いや、全然。どう見てもここの娘さんか修行中のお弟子さんあたりだと思うよ」

「うー。やっぱりそうかぁ。
 こんな可愛い娘が店主をやっていたらこの店ももっと繁盛してるのにねぇ。
 あんな強面こわおもての父が表に出るからお客が逃げるのよ」

 女の子はぶつぶつ言いながら奥に向かって叫んでいた。

「お父さん!お客様だよ!」

「おう!すぐに行くからちょっと待ってもらってくれ!」

 奥から低い声で少々凄みのある声が返ってきた。
 声からすると厳つい頑固親父が出て来そうなイメージだか、果たしてどんな人がでで来るかと興味深々に待っていると女の子がフォローを入れてきた。

「ああ、そんなに身構えなくても大丈夫ですよ。
 父はちょっとだけ個性的な顔をしてますが取って食べたりはしませんから安心してくださいね」

(何が安心なのかはよく分からないが、普通の鍛冶士の親父さんだから別段警戒はしなくてもいいだろう)と思っていたら奥から人の気配がした。

「ーーー待たせたな。で、要件はなんだ?つまらない用事ならば他に行ってくれよ」

 そこに現れたのは2メートル近い大柄の厳つい顔をした大男だった。
 鍛冶士特有の利き腕であろう右腕の筋肉が盛り上がり、お客への対応にも関わらず大振りの鉄製ハンマーを握りしめたまま『ぬっ』と顔を出して聞いてきた。
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