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第96話【エスカの診療所と強力なバックアップ】
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「それで、エスカさんはどうするの?
彼女はこの街を拠点に治癒士として活動することをおそらくは望むと思うわよ。
でも、私達は今のところだけどカイザックを拠点としているわ。
彼女とも婚姻を結ぶならば彼女を向こうへ連れて行くか、私達がこちらに拠点を移すかになるわよね?」
シミリはそう言いながら僕に紅茶をいれてくれた。
僕はそれを受け取り少し考えてから答えた。
「正直言って、僕は拠点について全然こだわりはないんだよ。
だから、ふたりが仕事を一番やり易い形になるならば僕はそれに合わせるだけだと思ってるよ」
「私は今は行商を経験しようと思ってたけれど、この街でお店を開けるならばそれもアリだと思います。
ただ、カイザックには知り合いも多かったですから仕入れの事や経営のアドバイスを貰いやすかったかなとは思いますけどね」
「なるほどね。
まあ、すぐにお店を建てるほどのお金は用意出来ないから、しばらくは行商やギルドの依頼でお金を貯める事になるのかな?
まだ、他の街も行ってみたいしね。
エスカさんについてはちょっと思いついた事があるから、まずはそれの確認をしてみたいと思ってるんだ」
「あ、一応考えてはいたんですね。どういった方向性なの?」
「うん。基本的にはエスカさんが安心して治癒士の仕事が出来る場所の確保と何かあった時の後ろ楯、もしくはバックアップが出来る形にするのが最優先だと思うんだ。
だから出来るだけいい話になるように根回しをしとこうと思うんだ」
「具体的には?さすがに病院を建てる資金はまだ無いですよね?」
「さすがにそれだけのお金は持ってないし、今のエスカさんにそこまでの投資をするつもりはないよ。
だからここ、デイル亭に頼もうと思ってるんだ。
ここの一部屋を借り上げてエスカさんの住むところにして診察は一階の食堂の隅にパーティションを切ってもらって、そこでやればそれだけのお金は必要ないんじゃないかと思ってね」
「なるほど。ディールさんならば信用もおけるし家賃を払うならば彼も安定した収入になるし悪い話ではないと思いますね。
ただ、新しいオープンしたばかりの宿を間借りさせてくれるかどうかですけどね」
「まあ、そこは上手く交渉してみるよ。
それに、ここをエスカさんの拠点にすると仮に僕達が行商とかに出た時も安心だからね。
もちろんその時は警備をしっかりしておくけどね」
「オルト君がそう考えてるならば私は反対しませんよ。
なんだかんだ言っても私は最後にはオルト君の判断を尊重しますので、思った事は言ってくださいね」
「ありがとう。何かあったら真っ先に相談するようにするよ」
僕はそうシミリに伝えるとディールに話す内容を紙にまとめていった。
* * *
「おはようございます、ディールさん。今日は折り入ってご相談があるのですが、今の時間は大丈夫ですか?」
「おはようございます、オルトさん。ええ、大丈夫ですけどどういったお話ですかね?」
ディールは厨房から紅茶をふたつ持ってくるとテーブルに置き、僕の話を聞いてくれた。
「実はですね。こうこうこんな感じでフロアを区切ってから……」
僕は昨日からまとめていた案をディールにプレゼンをして反応を待った。
「なるほど、悪くないお話ですね。
うまく行けば客寄せ効果になるでしょうし、加えて宿泊のお客様に急病人が出た時でもすぐに対応出来る安心感はありがたいですね」
「では、合意と言う事で良いですか?」
「よろしくお願いします。
詳しいことは彼女を交えて話した方が良いでしょうから、今日の夜営業が終わってから契約するとしましょう」
「了解です。では、僕は彼女を連れて幾つか登録をしてきます。
こちらに迷惑のかからない形にしておきますので、よろしくお願いします」
僕はディールに話が通った事に安堵あんどして微笑むと、部屋に戻りエスカが来るのを待った。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
エスカが緊張で眠れなかったか眠そうな目をしながら部屋を訪れたので、紅茶をすすめながら今日の予定を彼女に伝えた。
今日は彼女の拠点をここデイル亭にする事をギルドに登録するのとデイル亭の改修工事を頼むために鍛冶屋に行く予定だ。
この世界では『大工』の職業は『鍛冶士』の範囲らしく鍛冶なのに金属加工に加えて木工加工も仕事にしているので改修工事は鍛冶士に頼むのが普通なんだそうだ。
「えっと……。
全てにおいて初耳の事ばかりなのですけど、結局わたしはこれからどうするのですか?
オルトさんとシミリさんに付いて行くのでは無いのですか?」
エスカが当然の疑問を投げ掛けてきたので、僕はディールとの話し合いの事とこれからの事について説明をしてあげた。
「もーっ。そういう事は最初に教えてくださいよ。
昨夜は私、この街を出ないといけなくなると思って悩んで悩んでほとんど眠れなかったんですからね!」
「エスカにとってはこの街が故郷だろうし、この街の人達を助けたいから治癒士として成長したかったのだから他の街に行くのは本末転倒になるからね。
エスカはエスカらしく活躍出来るようにバックアップさせてもらうつもりだよ」
「本当にありがとうございます!」
エスカはそう言うと僕に抱きついた。
彼女はこの街を拠点に治癒士として活動することをおそらくは望むと思うわよ。
でも、私達は今のところだけどカイザックを拠点としているわ。
彼女とも婚姻を結ぶならば彼女を向こうへ連れて行くか、私達がこちらに拠点を移すかになるわよね?」
シミリはそう言いながら僕に紅茶をいれてくれた。
僕はそれを受け取り少し考えてから答えた。
「正直言って、僕は拠点について全然こだわりはないんだよ。
だから、ふたりが仕事を一番やり易い形になるならば僕はそれに合わせるだけだと思ってるよ」
「私は今は行商を経験しようと思ってたけれど、この街でお店を開けるならばそれもアリだと思います。
ただ、カイザックには知り合いも多かったですから仕入れの事や経営のアドバイスを貰いやすかったかなとは思いますけどね」
「なるほどね。
まあ、すぐにお店を建てるほどのお金は用意出来ないから、しばらくは行商やギルドの依頼でお金を貯める事になるのかな?
まだ、他の街も行ってみたいしね。
エスカさんについてはちょっと思いついた事があるから、まずはそれの確認をしてみたいと思ってるんだ」
「あ、一応考えてはいたんですね。どういった方向性なの?」
「うん。基本的にはエスカさんが安心して治癒士の仕事が出来る場所の確保と何かあった時の後ろ楯、もしくはバックアップが出来る形にするのが最優先だと思うんだ。
だから出来るだけいい話になるように根回しをしとこうと思うんだ」
「具体的には?さすがに病院を建てる資金はまだ無いですよね?」
「さすがにそれだけのお金は持ってないし、今のエスカさんにそこまでの投資をするつもりはないよ。
だからここ、デイル亭に頼もうと思ってるんだ。
ここの一部屋を借り上げてエスカさんの住むところにして診察は一階の食堂の隅にパーティションを切ってもらって、そこでやればそれだけのお金は必要ないんじゃないかと思ってね」
「なるほど。ディールさんならば信用もおけるし家賃を払うならば彼も安定した収入になるし悪い話ではないと思いますね。
ただ、新しいオープンしたばかりの宿を間借りさせてくれるかどうかですけどね」
「まあ、そこは上手く交渉してみるよ。
それに、ここをエスカさんの拠点にすると仮に僕達が行商とかに出た時も安心だからね。
もちろんその時は警備をしっかりしておくけどね」
「オルト君がそう考えてるならば私は反対しませんよ。
なんだかんだ言っても私は最後にはオルト君の判断を尊重しますので、思った事は言ってくださいね」
「ありがとう。何かあったら真っ先に相談するようにするよ」
僕はそうシミリに伝えるとディールに話す内容を紙にまとめていった。
* * *
「おはようございます、ディールさん。今日は折り入ってご相談があるのですが、今の時間は大丈夫ですか?」
「おはようございます、オルトさん。ええ、大丈夫ですけどどういったお話ですかね?」
ディールは厨房から紅茶をふたつ持ってくるとテーブルに置き、僕の話を聞いてくれた。
「実はですね。こうこうこんな感じでフロアを区切ってから……」
僕は昨日からまとめていた案をディールにプレゼンをして反応を待った。
「なるほど、悪くないお話ですね。
うまく行けば客寄せ効果になるでしょうし、加えて宿泊のお客様に急病人が出た時でもすぐに対応出来る安心感はありがたいですね」
「では、合意と言う事で良いですか?」
「よろしくお願いします。
詳しいことは彼女を交えて話した方が良いでしょうから、今日の夜営業が終わってから契約するとしましょう」
「了解です。では、僕は彼女を連れて幾つか登録をしてきます。
こちらに迷惑のかからない形にしておきますので、よろしくお願いします」
僕はディールに話が通った事に安堵あんどして微笑むと、部屋に戻りエスカが来るのを待った。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
エスカが緊張で眠れなかったか眠そうな目をしながら部屋を訪れたので、紅茶をすすめながら今日の予定を彼女に伝えた。
今日は彼女の拠点をここデイル亭にする事をギルドに登録するのとデイル亭の改修工事を頼むために鍛冶屋に行く予定だ。
この世界では『大工』の職業は『鍛冶士』の範囲らしく鍛冶なのに金属加工に加えて木工加工も仕事にしているので改修工事は鍛冶士に頼むのが普通なんだそうだ。
「えっと……。
全てにおいて初耳の事ばかりなのですけど、結局わたしはこれからどうするのですか?
オルトさんとシミリさんに付いて行くのでは無いのですか?」
エスカが当然の疑問を投げ掛けてきたので、僕はディールとの話し合いの事とこれからの事について説明をしてあげた。
「もーっ。そういう事は最初に教えてくださいよ。
昨夜は私、この街を出ないといけなくなると思って悩んで悩んでほとんど眠れなかったんですからね!」
「エスカにとってはこの街が故郷だろうし、この街の人達を助けたいから治癒士として成長したかったのだから他の街に行くのは本末転倒になるからね。
エスカはエスカらしく活躍出来るようにバックアップさせてもらうつもりだよ」
「本当にありがとうございます!」
エスカはそう言うと僕に抱きついた。
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