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第92話【人命救助行為とふたりの反応】
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僕は気を失っているエスカに薬を飲ませるために人命救助行為として口移しを行った。
それを間近で見ていたシミリが思わず叫んだ。
「なっなっ何をしてるんですかぁ!?
気を失っている女の子になんて破廉恥なことを!
私とだって婚姻の儀くらいしかしたことないのに!!」
その時、薬の効果で幾分回復したエスカは目を覚まし、自分の状況を確認してパニックをおこしていた。
なにしろオルトに抱き抱えられて顔が目の前にあるだけでなく、なにやら口の中が薬っぽいうえに目の前のオルトからも同じ匂いがしていたので何をされたか理解したからである。
「あっあのぅ……オルトさん?」
「ああ、良かった気がついたみたいだね。
エスカは魔力不足による『魔力枯渇症候群』になっていたんだ。
やはり初めて高レベルの魔法を使うと負荷の予測がつきにくいからね。
今回は僕のミスだ本当に申し訳ない」
僕は気がついたエスカに状況説明をしてこの場を乗り切る事にした。
しかし、シミリがそれを許さなかった。
「オルト君?私という妻がいながら他の女の子に手を出すとはどういうことなのかなぁ。
しっかりとした説明と責任の所在、私に対する謝罪を要求しますわ」
シミリが口元は笑っているが目がマジな顔で僕に積めよってきた。
「えっと、もしかしてオルトさんは私が気を失っているのを良いことによりにもよってシミリさんの目の前で私の唇を奪ったと言う事で間違いないですか?」
「なっ生々しく言うんじゃない!
だいたい今回の件は魔力枯渇症候群になったエスカを助けるために行った『人命救助行為』で、けしてやましい気持ちは微塵もなかったんだ!」
僕の必死の弁解に冷ややかな目を向けるシミリと両手を頬にあてて恥ずかしそうにしているエスカは僕の慌てぶりを見てふたり同時に吹き出した。
「ぷっ、あはははは」
「くっくっくっ」
それを見て唖然《あぜん》とする僕にシミリとエスカが言った。
「まあ、これくらいで許してあげましょうか」
「そうですね。
ちょっとびっくりしたけれど私も治癒士ですからね。
これが医療行為だってことは分かってますよ。
助けてくださってありがとうございます。
でも、今度は起きている時にちゃんとしてくれてもいいんですよ」
「ちょっとエスカさん。
冗談でも私の前でそういった夫を誘惑するような発言は控えてくださいね。
目に余るようなら私にも考えがありますからね」
やはり妻という立ち位置の分だけシミリが優位に話を進めている感じだった。
「ふたりとも勘弁してくれ。
エスカさんも今日はこれまでにしてしっかりと休んで回復に努めてください。
この続きはまた明日にでもやりますので」
「はい。正直、私も疲れましたのでそうしてもらえると助かります。
また、明日よろしくお願いします」
エスカはそう言うと部屋に戻っていった。
後に残された僕は風呂に入った後で少々ヤキモチをやいたシミリの機嫌をなおす為に甘いお菓子を作らされた。
そのうえ、妻として大切にしてる証拠を態度でみせるように要求され、その夜僕は精一杯の愛をシミリに捧げた。
ーーー翌日の夜。
機嫌がすっかりなおったシミリとそれを見て何があったか悟り微妙な表情のエスカを前に僕は修練の続きを宣言した。
「エスカさんも魔力が回復したようなので次の段階に進みます。
今回は動物系の毒に有効なマナリアルの魔法を試してみましょう。
エスカさん、マナリアルの魔方陣は描くことは出来ますか?」
「いえ、キュアリーの魔法が発動しなかったのでマナリアルまではまだ勉強が至ってませんでした。すみません」
「ああ、別に責めているわけではないので大丈夫ですよ。
知らなければ覚えれば良いだけだからね」
僕は簡単に『覚えれば』と言ったが、初級魔法ならばともかく中級以上の魔法を修得するのは並大抵の努力と才能がなければ成し得る事は難しいのが普通の常識だったが何故かその点に関しては全くの不安は無かった。
「よし、じゃあ早速だけどこの魔方陣を覚えてくれるかな。
半刻したらテストをするから頑張ってね。
今のうちに僕は練習で使う魔道具を準備しておくからね」
どうもエスカはシミリの事が気になる様子なので、超鬼スパルタ詰め込み研修によりエスカには余計な事を考える暇を与えない方針に急遽切り替えた。
「はっ半刻ですか!?わかりました。やってみます!」
エスカは渡された紙を凝視しながら魔方陣の形や魔力の流れをひとつひとつ確認していった。
(ここで「出来ません」と言わないところが上に登れる者とそうじゃない者との差なんだろうな)
懸命に魔法と向き合うエスカを見て、僕はそんな事を考えながらテスト用の人形を用意した。
それを間近で見ていたシミリが思わず叫んだ。
「なっなっ何をしてるんですかぁ!?
気を失っている女の子になんて破廉恥なことを!
私とだって婚姻の儀くらいしかしたことないのに!!」
その時、薬の効果で幾分回復したエスカは目を覚まし、自分の状況を確認してパニックをおこしていた。
なにしろオルトに抱き抱えられて顔が目の前にあるだけでなく、なにやら口の中が薬っぽいうえに目の前のオルトからも同じ匂いがしていたので何をされたか理解したからである。
「あっあのぅ……オルトさん?」
「ああ、良かった気がついたみたいだね。
エスカは魔力不足による『魔力枯渇症候群』になっていたんだ。
やはり初めて高レベルの魔法を使うと負荷の予測がつきにくいからね。
今回は僕のミスだ本当に申し訳ない」
僕は気がついたエスカに状況説明をしてこの場を乗り切る事にした。
しかし、シミリがそれを許さなかった。
「オルト君?私という妻がいながら他の女の子に手を出すとはどういうことなのかなぁ。
しっかりとした説明と責任の所在、私に対する謝罪を要求しますわ」
シミリが口元は笑っているが目がマジな顔で僕に積めよってきた。
「えっと、もしかしてオルトさんは私が気を失っているのを良いことによりにもよってシミリさんの目の前で私の唇を奪ったと言う事で間違いないですか?」
「なっ生々しく言うんじゃない!
だいたい今回の件は魔力枯渇症候群になったエスカを助けるために行った『人命救助行為』で、けしてやましい気持ちは微塵もなかったんだ!」
僕の必死の弁解に冷ややかな目を向けるシミリと両手を頬にあてて恥ずかしそうにしているエスカは僕の慌てぶりを見てふたり同時に吹き出した。
「ぷっ、あはははは」
「くっくっくっ」
それを見て唖然《あぜん》とする僕にシミリとエスカが言った。
「まあ、これくらいで許してあげましょうか」
「そうですね。
ちょっとびっくりしたけれど私も治癒士ですからね。
これが医療行為だってことは分かってますよ。
助けてくださってありがとうございます。
でも、今度は起きている時にちゃんとしてくれてもいいんですよ」
「ちょっとエスカさん。
冗談でも私の前でそういった夫を誘惑するような発言は控えてくださいね。
目に余るようなら私にも考えがありますからね」
やはり妻という立ち位置の分だけシミリが優位に話を進めている感じだった。
「ふたりとも勘弁してくれ。
エスカさんも今日はこれまでにしてしっかりと休んで回復に努めてください。
この続きはまた明日にでもやりますので」
「はい。正直、私も疲れましたのでそうしてもらえると助かります。
また、明日よろしくお願いします」
エスカはそう言うと部屋に戻っていった。
後に残された僕は風呂に入った後で少々ヤキモチをやいたシミリの機嫌をなおす為に甘いお菓子を作らされた。
そのうえ、妻として大切にしてる証拠を態度でみせるように要求され、その夜僕は精一杯の愛をシミリに捧げた。
ーーー翌日の夜。
機嫌がすっかりなおったシミリとそれを見て何があったか悟り微妙な表情のエスカを前に僕は修練の続きを宣言した。
「エスカさんも魔力が回復したようなので次の段階に進みます。
今回は動物系の毒に有効なマナリアルの魔法を試してみましょう。
エスカさん、マナリアルの魔方陣は描くことは出来ますか?」
「いえ、キュアリーの魔法が発動しなかったのでマナリアルまではまだ勉強が至ってませんでした。すみません」
「ああ、別に責めているわけではないので大丈夫ですよ。
知らなければ覚えれば良いだけだからね」
僕は簡単に『覚えれば』と言ったが、初級魔法ならばともかく中級以上の魔法を修得するのは並大抵の努力と才能がなければ成し得る事は難しいのが普通の常識だったが何故かその点に関しては全くの不安は無かった。
「よし、じゃあ早速だけどこの魔方陣を覚えてくれるかな。
半刻したらテストをするから頑張ってね。
今のうちに僕は練習で使う魔道具を準備しておくからね」
どうもエスカはシミリの事が気になる様子なので、超鬼スパルタ詰め込み研修によりエスカには余計な事を考える暇を与えない方針に急遽切り替えた。
「はっ半刻ですか!?わかりました。やってみます!」
エスカは渡された紙を凝視しながら魔方陣の形や魔力の流れをひとつひとつ確認していった。
(ここで「出来ません」と言わないところが上に登れる者とそうじゃない者との差なんだろうな)
懸命に魔法と向き合うエスカを見て、僕はそんな事を考えながらテスト用の人形を用意した。
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