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第88話【エスカのレベル上げと特別扱い】
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「うん。その調子でゆっくりと魔力の放出する量を増やしていこう。
意識を魔力に集中すると全身にまとっている魔力膜が手に集中しているのを感じる事が出来るはずだよ。
この方法で理論上はヒールの回復量がアップするはずだ」
「えっ?本当ですか?
それって上級魔法のハイヒールが使えるようになるって事ですか?」
エスカが目を輝かせて聞いてきた。
「ほら、集中が乱れてるよ。
それじゃあまだまだ実践では使えないよ。
それとこれは魔力を増やして効果を安定的に向上させる訓練だから魔法のランクが上がるわけじゃあない。
それに高ランクの魔法は魔力制御が難しいから安易に使わない方がいいよ」
僕はエスカの手に自分の手を重ねて魔力を供給しながら指輪の機能をこっそり起動した。
「!?」
エスカが頬を赤らめてトリップしている時、水晶球の色が濃い緑色に変わっていた。
「ほら、魔力が蓄積されて水晶球の色が深く安定してきただろう?
この状態で回復魔法を発動するといつもの数倍の効果を得ることが出来るんだ。
それじゃあ、その状態でさっきの人形に回復魔法をかけてみようか」
「はい」
エスカは短く返事をすると先ほどと同じ切り刻まれ人形にヒールをかけた。
「聖なるマナよ。癒しの光となりてこの者の傷を癒したまえ。ヒール!」
唱える文言も同じだったが患者人形を包み込む光の深みがあきらかに違うのがはた目にも分かった。
「こっこれは!?いつもより魔力の粘度が違います!」
「へぇ。魔力の『濃度が違うと』言うかと思ったけど『粘度が違う』と表現したんだね。
さすがエスカさんだ。それが分かるならば次の段階に行っても問題ないだろうね」
エスカが魔法をかけた人形は傷痕こそ残っていたが完全に治癒しており通常ならば十分『完治』と言われても良い状態だった。
「うん、合格だ。
まさか初日でここまで出来るとは思わなかったよ。
とりあえず切り傷に関しては今の感覚をいつでも発揮できるように毎日練習していこう」
「はい。まだ信じられないけど何かが変わった気がします」
「よし、じゃあ今日はここまでにしようか。
エスカさんは明日も通常の仕事があるし、魔力の回復にはしっかり休養をとる事も大切だからね」
「えっ?そんな!私まだやれますわ。
せっかく何かを掴みかけてるのですからもう少し教えてください!」
エスカがやる気をみせて講習の続きを懇願してきた。
だが僕はエスカの前に手を出してそれをピシャリと止めた。
「言ったはずだよね?休むのも訓練だよ。
今の君は今までにない成功体験で気持ちが高揚しているだけで実際はかなり消耗している。
それが自分でわからないならば証明してあげよう」
僕はそう言うとタクトのような棒をエスカに差し出した。
「これは何ですか?」
「魔力の簡易測定器だよ。
持ち手から色が変わっていき、先まで変われば魔力満タン。
手元に近いほど魔力枯渇も近いことなる。使い方は簡単だよ、持って魔力を注ぎ込めばいいんだ」
エスカは言われるままに僕から測定器を受け取り、魔力を注ぎ込んでみた。
測定器は手元から僅かのところで色の変化が止まった。
「ほらね。やっぱり今日はこれまでにしよう。
ここで倒れられても困るし、明日からの仕事に支障がでたらディールさんにも迷惑がかかるからね」
エスカは一瞬だけ残念そうな顔をしたが、すぐに笑って「はい、わかりました」と素直にしたがった。
「そうそう。念のために言っておくけど、この後でこっそり特訓とかしてるのが分かったら暫く講習は中止にするからね。
心配しなくても、ここでの仕事が終わる1ヶ月間で君が納得出来るレベルまで引き上げてあげるからさ」
僕はニッコリと笑うと飴玉をエスカに握らせて言った。
「疲労回復の薬飴だよ。立ち仕事は大変だからね。
お風呂にでも入って早めに休むといいよ」
エスカは少し驚いた表情を見せたが「ありがとうございます。よろしくお願いします」と言い残して部屋を後にした。
「ちょっとサービスが良すぎませんか?
私も見たことのないものばかりですけど普通じゃない事だけはハッキリしてますよね。
契約したとはいえ、バレたら結構大事になりそうな案件ですが良かったのですか?」
「まあ、確かにそうだね。
目立ちたくはないんだけどあんなふうに頑張っている人がいたら応援したくなる性分なんだな、きっと」
「そういうところがオルト君らしいですけどね。ところでコレはこのままここに置いておくのですか?
さすがにちょっと不気味なのと万が一他の人に見られたら大騒ぎになると思うわよ?」
シミリは部屋に並べられた死にかけ人形「おっ三途《さんず》」を半分視界からはずしながら何とかするように求めてきた。
「ちょっと気分を変えるためにもお風呂に入ってくるわね」
「うん。片付けたら僕も風呂に入って休む事にするよ」
僕は患者人形と共に講習用のアイテムを収納鞄に入れると共用の風呂に向かった。
意識を魔力に集中すると全身にまとっている魔力膜が手に集中しているのを感じる事が出来るはずだよ。
この方法で理論上はヒールの回復量がアップするはずだ」
「えっ?本当ですか?
それって上級魔法のハイヒールが使えるようになるって事ですか?」
エスカが目を輝かせて聞いてきた。
「ほら、集中が乱れてるよ。
それじゃあまだまだ実践では使えないよ。
それとこれは魔力を増やして効果を安定的に向上させる訓練だから魔法のランクが上がるわけじゃあない。
それに高ランクの魔法は魔力制御が難しいから安易に使わない方がいいよ」
僕はエスカの手に自分の手を重ねて魔力を供給しながら指輪の機能をこっそり起動した。
「!?」
エスカが頬を赤らめてトリップしている時、水晶球の色が濃い緑色に変わっていた。
「ほら、魔力が蓄積されて水晶球の色が深く安定してきただろう?
この状態で回復魔法を発動するといつもの数倍の効果を得ることが出来るんだ。
それじゃあ、その状態でさっきの人形に回復魔法をかけてみようか」
「はい」
エスカは短く返事をすると先ほどと同じ切り刻まれ人形にヒールをかけた。
「聖なるマナよ。癒しの光となりてこの者の傷を癒したまえ。ヒール!」
唱える文言も同じだったが患者人形を包み込む光の深みがあきらかに違うのがはた目にも分かった。
「こっこれは!?いつもより魔力の粘度が違います!」
「へぇ。魔力の『濃度が違うと』言うかと思ったけど『粘度が違う』と表現したんだね。
さすがエスカさんだ。それが分かるならば次の段階に行っても問題ないだろうね」
エスカが魔法をかけた人形は傷痕こそ残っていたが完全に治癒しており通常ならば十分『完治』と言われても良い状態だった。
「うん、合格だ。
まさか初日でここまで出来るとは思わなかったよ。
とりあえず切り傷に関しては今の感覚をいつでも発揮できるように毎日練習していこう」
「はい。まだ信じられないけど何かが変わった気がします」
「よし、じゃあ今日はここまでにしようか。
エスカさんは明日も通常の仕事があるし、魔力の回復にはしっかり休養をとる事も大切だからね」
「えっ?そんな!私まだやれますわ。
せっかく何かを掴みかけてるのですからもう少し教えてください!」
エスカがやる気をみせて講習の続きを懇願してきた。
だが僕はエスカの前に手を出してそれをピシャリと止めた。
「言ったはずだよね?休むのも訓練だよ。
今の君は今までにない成功体験で気持ちが高揚しているだけで実際はかなり消耗している。
それが自分でわからないならば証明してあげよう」
僕はそう言うとタクトのような棒をエスカに差し出した。
「これは何ですか?」
「魔力の簡易測定器だよ。
持ち手から色が変わっていき、先まで変われば魔力満タン。
手元に近いほど魔力枯渇も近いことなる。使い方は簡単だよ、持って魔力を注ぎ込めばいいんだ」
エスカは言われるままに僕から測定器を受け取り、魔力を注ぎ込んでみた。
測定器は手元から僅かのところで色の変化が止まった。
「ほらね。やっぱり今日はこれまでにしよう。
ここで倒れられても困るし、明日からの仕事に支障がでたらディールさんにも迷惑がかかるからね」
エスカは一瞬だけ残念そうな顔をしたが、すぐに笑って「はい、わかりました」と素直にしたがった。
「そうそう。念のために言っておくけど、この後でこっそり特訓とかしてるのが分かったら暫く講習は中止にするからね。
心配しなくても、ここでの仕事が終わる1ヶ月間で君が納得出来るレベルまで引き上げてあげるからさ」
僕はニッコリと笑うと飴玉をエスカに握らせて言った。
「疲労回復の薬飴だよ。立ち仕事は大変だからね。
お風呂にでも入って早めに休むといいよ」
エスカは少し驚いた表情を見せたが「ありがとうございます。よろしくお願いします」と言い残して部屋を後にした。
「ちょっとサービスが良すぎませんか?
私も見たことのないものばかりですけど普通じゃない事だけはハッキリしてますよね。
契約したとはいえ、バレたら結構大事になりそうな案件ですが良かったのですか?」
「まあ、確かにそうだね。
目立ちたくはないんだけどあんなふうに頑張っている人がいたら応援したくなる性分なんだな、きっと」
「そういうところがオルト君らしいですけどね。ところでコレはこのままここに置いておくのですか?
さすがにちょっと不気味なのと万が一他の人に見られたら大騒ぎになると思うわよ?」
シミリは部屋に並べられた死にかけ人形「おっ三途《さんず》」を半分視界からはずしながら何とかするように求めてきた。
「ちょっと気分を変えるためにもお風呂に入ってくるわね」
「うん。片付けたら僕も風呂に入って休む事にするよ」
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