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第86話【エスカートの契約条件】
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「ふあぁ……疲れたぁ」
夕食時の混雑も収まり泊まり客以外を見送ったエスカはカウンターの隅でへとへとになっていた。
途中休憩があるとはいえ、オープンしたての新しい食事処であるため、お客がひっきりなしに来店して超忙しかったのである。
「エスカちゃんお疲れ様。
はい、これ食べて元気だして。
食べたら今日は仕事あがっていいからね」
ディールがエスカの夕食にとちょっと豪華な賄い食をカウンターに置き疲れを労っていた。
「ありがとうございますぅ。いただきます」
エスカはお礼を言うと食事を食べ始めた。
「!? 美味しい。凄く美味しいです!」
「ははは、そういって貰えると作ったかいがあるよ」
ディールは優しく笑いながらエスカに飲み物を出した。
「おっ!仕事は終わったのかい?」
その時、自分の準備を終えた僕はカウンターで夕食を食べるエスカを見つけて声をかけた。
「はい。ようやく終わりました。忙しくてへとへとですよ。
このあとお風呂を頂いてから休もうかと思って……」
「ああ、ならちょうど良かった。
この後話しがあるから僕達の部屋に来てくれるかな?」
「お風呂の後でも大丈夫ですか?」
「汗をかく内容ではないから後でもいいけど眠くなるなら先がいいかな」
「ーーー先にお願いします」
「じゃあすぐに用意するよ」
僕はそう言うと自分の部屋に戻った。
エスカは食事を終えると自分の部屋で服を着替えてからオルトの部屋に行った。
ーーーコンコン。
エスカがドアをノックする。
「エスカです。オルトさん」
「どうぞ、入ってもいいですよ」
エスカが部屋に入るとオルトとシミリが待っており、テーブルの上には見慣れない道具がいくつか並べられていた。
「えーと、お話ってなんでしょうか?」
「うん。とりあえず座って話をしようか」
言われるままにエスカが正面の椅子に腰を下ろした。
「えっと、何から話すかな」
「まずはエスカさんの意思の確認ですよ。
良ければ契約をする。ですよオルト君」
シミリから話の流れの指摘を受けた僕はエスカに話をきりだした。
「今からいくつか質問をしますので、出来るだけ正直に答えてください。
ですが、どうしても答えたくない質問にはそう答えてください。いいですか?」
「はい。わかりました」
エスカは緊張した面持ちで僕の質問を待った。
「今あなたは治癒魔法はヒールしか使えないのですか?」
「はい」
「その効果はどのくらいの怪我を治せるレベルですか?」
「怪我は『打撲、打ち身、擦り傷、切り傷、ねんざ、突き指』くらいで、病気は『頭痛、腹痛、筋肉痛、発熱』くらいですね」
「なるほど、基本的なものは大体治せるようですね。では、この水晶に手をかざしてくれますか?」
エスカは不思議に思いながらも言われたように水晶に手をかざした。
水晶は黄緑色に発光して定着した。
「なるほど。ありがとうございました」
「えっと、今の話で何か分かったのですか?」
エスカは当然の疑問を口にして僕に聞いた。
「ええ、あなたがなぜヒールしか使えないかも、どうすれば上のレベルに達する事ができるかも」
「本当ですか?私はまだ上のレベルに上がれるのですか?本当なら教えてください!どうすればいいのですか?」
「もちろんそのつもりですが、そのためにはひとつだけ僕と契約をしてもらわないといけません」
「契約?」
「なに、簡単なことですよ。
あなたがこれから習得するスキルについて、どのようなやり方で習得したか、さらに僕に教えてもらって習得出来たと他人に話さない事が条件になります」
「本当にそれだけ……ですか?」
「ええ、本当に」
「それは対外的に『師匠』や『先生』と呼ぶことも禁止ですか?」
「えーと、禁止と言うより控えて欲しいのです。
僕達しかいない時には良いですが他の人達がいる時は特に控えてください。
正直、目立ちたくないんで……理由は察してくれるとありがたいです」
エスカはまだ何か言いたげだったが、グッとこらえて笑顔で答えた。
「よろしくお願いします」
「うん。じゃあこの『契約の指輪』をしてくれるかな?
これは君がもしも契約に背いたならば凄く恥ずかしいことがおきるかもしれない物だ。
ちなみに一度はめたら契約に反するまではずせないからね」
「“痛い思い”とか“死ぬ思い”とかではなく“恥ずかしい思い”……ですか?」
「そうだよ、何かおかしいかい?
あれ?普通に痛い思いとか死ぬ思いとかが良かった?でもあれはかなり痛いよ?辛いよ?それでも変えるかい?」
「い、いえ。このままでいいです」
エスカは言われるままに指輪をはめると真剣な表情になりあらためて僕に向き合った。
夕食時の混雑も収まり泊まり客以外を見送ったエスカはカウンターの隅でへとへとになっていた。
途中休憩があるとはいえ、オープンしたての新しい食事処であるため、お客がひっきりなしに来店して超忙しかったのである。
「エスカちゃんお疲れ様。
はい、これ食べて元気だして。
食べたら今日は仕事あがっていいからね」
ディールがエスカの夕食にとちょっと豪華な賄い食をカウンターに置き疲れを労っていた。
「ありがとうございますぅ。いただきます」
エスカはお礼を言うと食事を食べ始めた。
「!? 美味しい。凄く美味しいです!」
「ははは、そういって貰えると作ったかいがあるよ」
ディールは優しく笑いながらエスカに飲み物を出した。
「おっ!仕事は終わったのかい?」
その時、自分の準備を終えた僕はカウンターで夕食を食べるエスカを見つけて声をかけた。
「はい。ようやく終わりました。忙しくてへとへとですよ。
このあとお風呂を頂いてから休もうかと思って……」
「ああ、ならちょうど良かった。
この後話しがあるから僕達の部屋に来てくれるかな?」
「お風呂の後でも大丈夫ですか?」
「汗をかく内容ではないから後でもいいけど眠くなるなら先がいいかな」
「ーーー先にお願いします」
「じゃあすぐに用意するよ」
僕はそう言うと自分の部屋に戻った。
エスカは食事を終えると自分の部屋で服を着替えてからオルトの部屋に行った。
ーーーコンコン。
エスカがドアをノックする。
「エスカです。オルトさん」
「どうぞ、入ってもいいですよ」
エスカが部屋に入るとオルトとシミリが待っており、テーブルの上には見慣れない道具がいくつか並べられていた。
「えーと、お話ってなんでしょうか?」
「うん。とりあえず座って話をしようか」
言われるままにエスカが正面の椅子に腰を下ろした。
「えっと、何から話すかな」
「まずはエスカさんの意思の確認ですよ。
良ければ契約をする。ですよオルト君」
シミリから話の流れの指摘を受けた僕はエスカに話をきりだした。
「今からいくつか質問をしますので、出来るだけ正直に答えてください。
ですが、どうしても答えたくない質問にはそう答えてください。いいですか?」
「はい。わかりました」
エスカは緊張した面持ちで僕の質問を待った。
「今あなたは治癒魔法はヒールしか使えないのですか?」
「はい」
「その効果はどのくらいの怪我を治せるレベルですか?」
「怪我は『打撲、打ち身、擦り傷、切り傷、ねんざ、突き指』くらいで、病気は『頭痛、腹痛、筋肉痛、発熱』くらいですね」
「なるほど、基本的なものは大体治せるようですね。では、この水晶に手をかざしてくれますか?」
エスカは不思議に思いながらも言われたように水晶に手をかざした。
水晶は黄緑色に発光して定着した。
「なるほど。ありがとうございました」
「えっと、今の話で何か分かったのですか?」
エスカは当然の疑問を口にして僕に聞いた。
「ええ、あなたがなぜヒールしか使えないかも、どうすれば上のレベルに達する事ができるかも」
「本当ですか?私はまだ上のレベルに上がれるのですか?本当なら教えてください!どうすればいいのですか?」
「もちろんそのつもりですが、そのためにはひとつだけ僕と契約をしてもらわないといけません」
「契約?」
「なに、簡単なことですよ。
あなたがこれから習得するスキルについて、どのようなやり方で習得したか、さらに僕に教えてもらって習得出来たと他人に話さない事が条件になります」
「本当にそれだけ……ですか?」
「ええ、本当に」
「それは対外的に『師匠』や『先生』と呼ぶことも禁止ですか?」
「えーと、禁止と言うより控えて欲しいのです。
僕達しかいない時には良いですが他の人達がいる時は特に控えてください。
正直、目立ちたくないんで……理由は察してくれるとありがたいです」
エスカはまだ何か言いたげだったが、グッとこらえて笑顔で答えた。
「よろしくお願いします」
「うん。じゃあこの『契約の指輪』をしてくれるかな?
これは君がもしも契約に背いたならば凄く恥ずかしいことがおきるかもしれない物だ。
ちなみに一度はめたら契約に反するまではずせないからね」
「“痛い思い”とか“死ぬ思い”とかではなく“恥ずかしい思い”……ですか?」
「そうだよ、何かおかしいかい?
あれ?普通に痛い思いとか死ぬ思いとかが良かった?でもあれはかなり痛いよ?辛いよ?それでも変えるかい?」
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エスカは言われるままに指輪をはめると真剣な表情になりあらためて僕に向き合った。
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