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第84話【長い愚痴と大量に消費された酒】
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「おい。エスカちゃんの悪い癖が顔を見せ始めたぞ。
不味いんじゃないか?このままだと決闘相手の財布が空になるまで飲まれるぞ」
なんだか周りの野次馬達がこそこそと話し始めていた。
「なんだって?相手の財布が空になるまで飲む?どういう意味だ?」
「ねぇオルト君。
私ちょっと気になったのですけど彼女あれだけ飲んでいて全く酔っている感じがないですよね?オルト君もだけど……」
「うん、そのようだね。
僕はどうやら薬師の特殊スキルで状態異常無効が自動的に発動しているみたいで酩酊の異常にはならないみたいなんだ。
だから多分だけど僕が負ける事はないと思うよ」
僕は自分のスキルと身体的な状態を鑑定で確認していたので安心してメニューの上から注文していた。
「私、もっと高みに登りたいんです。
ヒールだけじゃなくて、その上の治癒魔法や毒や麻痺を治療する魔法もあると聞いています。
ヒールだけじゃあ助けられない人が多くて辛いんです!」
「いやいや、エスカちゃんは十分みんなの力になってるよ。
鉱山での怪我は重傷になる場合は稀だから!ヒールで十分対応出来ているよ」
「そうそう。
エスカちゃんはまだ若いから経験を積んでいけばそのうち覚醒するさ」
周りにいる冒険者達が口々にエスカートを持ち上げて落ち着かせようとしていた。
なんだかんだ言っても皆から可愛がられているようだった。
だがやはり少し気になったので周りの冒険者にこっそりと聞いてみた。
「皆さん、ちょっと彼女に甘くないですか?
もう少し『現実はそんなに甘くないんだ』とか言い出す人が居そうな気がするんだけどさっきから見てると誰も苦言は言わないですよね」
「あー。やっぱりそう見えるかい?
まあ、自分らもそんな気がしていたんだが、彼女はとにかく一途で一生懸命なんだよ。
歳も俺らの娘くらいだし、時々感情的になって暴走気味になることもあるけど基本的には人の為に頑張りたい気持ちが先走っているのが分かるからここにいる連中は応援をかねて見守ってるんだ」
「そうなんですね。ちょっと発言に問題があっても見守っているのは、そういう事だったんですね」
僕が勝手に納得していると、厨房から半泣きの声がかかった。
「あのー、すみませんがお酒の在庫が無くなったので今日はもう提供出来なくなってしまったのですが……」
確かにあれから追加でそれなりの品数を注文をしたが、僕達だけで在庫が無くなる訳ないと思ったら決闘時間のあまりの長さに周りの野次馬達も酒盛りをしていた。
(なるほど、これじゃあ在庫がなくなってもおかしくないか……)
「これは引き分けですかね?
お互い酔い潰れていませんし、勝負するお酒が無くなってしまったのですから」
僕の意見にエスカートが答えた。
「仕方ないです。
勝てなかったのは残念ですけど、あなたならば納得がいきそうです」
エスカートの答えに満足した僕だったが、ふとあることを思い出して聞いた。
「そう言えば引き分けの時の条件を決めてなかったな。
こんな時はどうすればいいんだ?条件の事もあるし、ここの支払いだってあるだろうし?
負けた方が払うんなら引き分けは「折半」か?もしくは周りの野次馬の皆さんが払ってくれるとか?」
そう言ってまわりを見たが、みんな顔を背けるばかりで目を会わせようとしなかった。
「仕方ないから折半だな。
マスター会計を出して貰えるかな?
あっ僕達が飲んだ分だけだよ。周りの野次馬達のは別で頼むよ」
「「「「「えー!」」」」」
「当たり前だろ!なんで周りの人の酒代まで僕達が払わないといけないんだよ!」
「じょっ冗談だよ。ノリだよノリ」
「全くノリで払わせれたらシミリに怒られるだろうが、まったく。
で、総額いくらだい?マスター」
「お二人分で『金貨一枚』です。
本当は少し越えてるのですけどサービスしておきます」
「ん?金貨一枚?本当に二人でそんなに飲んだのか?」
「はい。間違いなく注文を受けて出させて頂きました」
僕は暫く考えていたが『まあ、高い酒が混じっていたんだろう、仕方ないか』と小金貨5枚をテーブルに置き、エスカートに言った。
「それじゃあこれが僕の分ね。残りの半分は君が払ってね」
僕がそう言って席を立とうとした時、エスカートが涙目で僕の腕を掴んだ。
プルプルと震える手で僕の手を握りしめたままエスカートが言った言葉は……。
「ごめんなさい、お金が足りません。
下働きでも何でもしますので、お金……貸して下さい!」
「なんだって?」
ーーーあの後、半泣きで頼み込まれた僕は周りの目もあって断ることも出来ず、仕方なしに彼女の頼みを了承した。
まあ、普通に考えれば当然だが店の在庫酒の大部分を注文すればそうなるだろうし、駆け出しの治癒士である彼女が大金をポンと払える訳もない。
いつもは10杯も飲めば相手が潰れていたため、多額の支払いがくることがなかったエスカートは懐事情を考えずに決闘を申し込んでいたらしかった。
(まあ、成り行きでなってしまったからには仕方ないからディールさんの店でも手伝って貰うか……)
「じゃあとりあえず明日から暫くは僕達がお世話になっているディールさんの店を手伝って貰うから朝の鐘がなったら来てくれるかな?」
「はい。よろしくお願いします」
こうしてグダグダに酒豪決闘は幕を下ろす事になった。
不味いんじゃないか?このままだと決闘相手の財布が空になるまで飲まれるぞ」
なんだか周りの野次馬達がこそこそと話し始めていた。
「なんだって?相手の財布が空になるまで飲む?どういう意味だ?」
「ねぇオルト君。
私ちょっと気になったのですけど彼女あれだけ飲んでいて全く酔っている感じがないですよね?オルト君もだけど……」
「うん、そのようだね。
僕はどうやら薬師の特殊スキルで状態異常無効が自動的に発動しているみたいで酩酊の異常にはならないみたいなんだ。
だから多分だけど僕が負ける事はないと思うよ」
僕は自分のスキルと身体的な状態を鑑定で確認していたので安心してメニューの上から注文していた。
「私、もっと高みに登りたいんです。
ヒールだけじゃなくて、その上の治癒魔法や毒や麻痺を治療する魔法もあると聞いています。
ヒールだけじゃあ助けられない人が多くて辛いんです!」
「いやいや、エスカちゃんは十分みんなの力になってるよ。
鉱山での怪我は重傷になる場合は稀だから!ヒールで十分対応出来ているよ」
「そうそう。
エスカちゃんはまだ若いから経験を積んでいけばそのうち覚醒するさ」
周りにいる冒険者達が口々にエスカートを持ち上げて落ち着かせようとしていた。
なんだかんだ言っても皆から可愛がられているようだった。
だがやはり少し気になったので周りの冒険者にこっそりと聞いてみた。
「皆さん、ちょっと彼女に甘くないですか?
もう少し『現実はそんなに甘くないんだ』とか言い出す人が居そうな気がするんだけどさっきから見てると誰も苦言は言わないですよね」
「あー。やっぱりそう見えるかい?
まあ、自分らもそんな気がしていたんだが、彼女はとにかく一途で一生懸命なんだよ。
歳も俺らの娘くらいだし、時々感情的になって暴走気味になることもあるけど基本的には人の為に頑張りたい気持ちが先走っているのが分かるからここにいる連中は応援をかねて見守ってるんだ」
「そうなんですね。ちょっと発言に問題があっても見守っているのは、そういう事だったんですね」
僕が勝手に納得していると、厨房から半泣きの声がかかった。
「あのー、すみませんがお酒の在庫が無くなったので今日はもう提供出来なくなってしまったのですが……」
確かにあれから追加でそれなりの品数を注文をしたが、僕達だけで在庫が無くなる訳ないと思ったら決闘時間のあまりの長さに周りの野次馬達も酒盛りをしていた。
(なるほど、これじゃあ在庫がなくなってもおかしくないか……)
「これは引き分けですかね?
お互い酔い潰れていませんし、勝負するお酒が無くなってしまったのですから」
僕の意見にエスカートが答えた。
「仕方ないです。
勝てなかったのは残念ですけど、あなたならば納得がいきそうです」
エスカートの答えに満足した僕だったが、ふとあることを思い出して聞いた。
「そう言えば引き分けの時の条件を決めてなかったな。
こんな時はどうすればいいんだ?条件の事もあるし、ここの支払いだってあるだろうし?
負けた方が払うんなら引き分けは「折半」か?もしくは周りの野次馬の皆さんが払ってくれるとか?」
そう言ってまわりを見たが、みんな顔を背けるばかりで目を会わせようとしなかった。
「仕方ないから折半だな。
マスター会計を出して貰えるかな?
あっ僕達が飲んだ分だけだよ。周りの野次馬達のは別で頼むよ」
「「「「「えー!」」」」」
「当たり前だろ!なんで周りの人の酒代まで僕達が払わないといけないんだよ!」
「じょっ冗談だよ。ノリだよノリ」
「全くノリで払わせれたらシミリに怒られるだろうが、まったく。
で、総額いくらだい?マスター」
「お二人分で『金貨一枚』です。
本当は少し越えてるのですけどサービスしておきます」
「ん?金貨一枚?本当に二人でそんなに飲んだのか?」
「はい。間違いなく注文を受けて出させて頂きました」
僕は暫く考えていたが『まあ、高い酒が混じっていたんだろう、仕方ないか』と小金貨5枚をテーブルに置き、エスカートに言った。
「それじゃあこれが僕の分ね。残りの半分は君が払ってね」
僕がそう言って席を立とうとした時、エスカートが涙目で僕の腕を掴んだ。
プルプルと震える手で僕の手を握りしめたままエスカートが言った言葉は……。
「ごめんなさい、お金が足りません。
下働きでも何でもしますので、お金……貸して下さい!」
「なんだって?」
ーーーあの後、半泣きで頼み込まれた僕は周りの目もあって断ることも出来ず、仕方なしに彼女の頼みを了承した。
まあ、普通に考えれば当然だが店の在庫酒の大部分を注文すればそうなるだろうし、駆け出しの治癒士である彼女が大金をポンと払える訳もない。
いつもは10杯も飲めば相手が潰れていたため、多額の支払いがくることがなかったエスカートは懐事情を考えずに決闘を申し込んでいたらしかった。
(まあ、成り行きでなってしまったからには仕方ないからディールさんの店でも手伝って貰うか……)
「じゃあとりあえず明日から暫くは僕達がお世話になっているディールさんの店を手伝って貰うから朝の鐘がなったら来てくれるかな?」
「はい。よろしくお願いします」
こうしてグダグダに酒豪決闘は幕を下ろす事になった。
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